株式会社りそな銀行で法人営業を手がけるコーポレートビジネス部では、2018年5月に「Salesforce」と「mitoco(ミトコ)」を中心としたIT基盤の運用を開始した。社内業務の無駄を削減して時間を効率的に使えるようにすることで、渉外担当者が顧客とのコミュニケーションを深める機会を増やし、営業力強化につなげるのが目的だ。こうした時間の有効活用が進めば、働き方改革にも好影響が期待できる。
今回は、このIT基盤導入の中心的役割を務めた同部 営業力強化グループのグループリーダー 鶴見 亮祐氏と、担当マネージャー 大滝 貴光氏に、具体的な活用法や効果について話を聞いた。
営業時間確保のために、無駄な時間の削減を目指す
同社 コーポレートビジネス部は、法人顧客向けの資金調達支援(私募債やコミットメントライン)や金融派生商品(デリバティブ)の販売、ビジネスマッチング・サービスなどを手がける組織だ。鶴見・大滝両氏が在籍する営業力強化グループは、渉外担当者約1,000名の営業スキル向上支援をミッションとし、社員向けのセミナーや研修の開催などを受け持っていた。しかし、その役割が2年程前から変化してきたと鶴見氏は言う。
「りそなグループ内でも働き方改革が進められ、勤務時間の短縮が図られました。その結果、渉外担当者がお客さまを訪問する時間が少なくなり、コミュニケーション不足によりお客さまを失いかねないケースも出てきました。こうした事態を改善して対面営業の機会を増やしていくために、勤務時間内に存在する“無駄な時間”を削減することが、我々の役割のひとつになったのです」
そのため営業力強化グループでは、訪問時間を確保すべく、どのような業務に時間が費やされているのかを分析することで、「すぐに止める」「止められないならワークフローを見直す」「それも難しいならシステム化する」という順番で業務の効率化を進めてきた。今回のSalesforceをはじめとしたツールの導入は、この3つ目の手段にあたる。
「毎月、売上の状況や営業の進捗について話し合う業務推進会議を実施しているのですが、以前はその準備のために相当な時間をかけていました。各支店の渉外担当者が自分で作った資料を持ち寄り、それを集計して、出席者の数だけプリントして配る。さらに、本部から報告を求められ、専用の書式に転記して提出する、といった具合です。Salesforce導入後は案件管理機能を使って会議資料を自動で作れるようになりましたし、本部もオンラインで情報を得られるようになりました。導入が進めば、無駄な時間が削減できると期待しています」(鶴見氏)
外出中の空き時間を「mitoco(ミトコ)」で有効活用
営業力強化グループではSalesforceを他の社内システムや帳票アプリ、名刺管理アプリなどと連携させ、さらなる効率化に取り組んでいる。スケジューラーについてはSalesforce標準のものよりも機能性・操作性・拡張性に優れたクラウド型のコミュニケーション・プラットフォーム「mitoco」を採用した。テラスカイが開発したmitocoには、カレンダー、ワークフロー、トーク、掲示板など、すぐに利用できる多彩なアプリケーションが用意されている。また、SalesforceをプラットフォームにしているためCRMデータとの連携も容易に行える。
mitoco導入によって同グループが目指しているのは、渉外担当者が外出先でも時間を有効利用できるようにすることだ。
例えば、営業先に支店長と同行したい場合、帰店後に支店長席にあるスケジュール表に予定を書き込む必要があった。しかし、mitocoのカレンダーアプリを使えばこれを外出先で行えるようになる。タブレットやスマートフォンからSalesforceに登録された支店長のスケジュールを呼び出し、空いている日程に予定を登録すればいい。また、トークアプリは不在中の電話メモとして利用していくことも可能だ。
「不在中に掛かってきた電話の情報をトークアプリに投稿してもらえば、外出中の空き時間にそれをチェックして、すぐに折り返しの電話が入れられるようになりますし、SalesforceのCRMデータと連携させることで、これから電話をする相手の情報を確認することもできます」(鶴見氏)
通常、外出していた渉外担当者が、帰店後にまず行わなくてはならないのがこの折り返し電話で、何本も溜まってしまうと相応の時間を費やすことになってしまう。それを空き時間に処理できるようになれば、帰店後の業務を減らすことができる。
mitocoのワークフローアプリで、顧客ニーズに迅速に応える
ワークフローアプリはスピーディな申請・承認に貢献している。その一例として大滝氏は、顧客企業からビジネスパートナーの紹介依頼を受けた時の社内承認フローを挙げた。
「従来の方法はほとんどが紙ベースでした。まず渉外担当者が、お客さまから受けた依頼を書類にまとめて上席の承認を取り、本社のビジネスマッチング担当部署に社内便で送ります。本部では受付処理完了後、書類の内容をマッチング用のシステムに入力し直して検索をかけるという手順で、すべてのフローが完了するまで2日はかかっていました」
そこで、mitocoのワークフローアプリを利用して業務のスピードアップに成功している。担当者がmitocoでマッチング依頼のエントリーを作って申請ボタンを押すと、上席のmitoco画面に承認依頼の通知が表示される。上席が内容を確認して承認ボタンを押せば、本部の担当部署へ依頼が届くという流れだ。本部側でもこれまでのように紙で送られてきた依頼内容を入力し直す手間がなくなり、マッチング結果を得るまでの時間は大幅に短縮されるとして、取り組みを進めている。
書類を作って回覧するという手間や時間が削減できたのに加え、顧客から寄せられるニーズへの対応スピードが上がったことは、「他行との競争においてもひとつの武器になるでしょう」と大滝氏は言う。
mitocoの導入時について鶴見氏は「導入・運用にあたってはテラスカイさんの支援を受けていますが、対応がはやくて助かっています。画面サイズやUIの表示項目など、mitocoの仕様に関わるところで当社が求める機能とのギャップが出てくることもあるのですが、クラウドサービスならではのこまめなバージョンアップでスピーディに解決してくれるため、非常に満足しています」と話す。
さらなる効率化に向け「SuPICE(スパイス)」の活用を検討
営業力強化グループでは現在、テラスカイと共に「SuPICE」の導入にも取り組んでいる。SuPICEは、Lightning Components (※)をノンコーディングで簡単に作成できるアプリだ。
「お客さまと契約を交わすためには、説明義務のある項目が数多くあります。現在、渉外担当者が帰店後、その日に説明した内容を平均約30分かけてCRMに入力し、きちんと説明できたかどうかの確認をしていますが、この作業の時間を短縮する方法としてSuPICEの利用を検討しています」(鶴見氏)
例えば、金融商品それぞれの説明事項をタブレットにチェックリストとして表示できるUIの作成だ。このリストに沿って渉外担当者は説明を行い、顧客自身にチェックを入れてもらう。それがCRMデータにも即座に反映されるという仕組みを考えているという。これが完成すれば、帰社後に改めてCRMに入力する手間が省け、大幅な業務効率改善につながるというわけだ。
※Lightning Componentsは、コンポーネントとして作成されたSalesforceのUI。Lightning App Builderを使って複数のコンポーネントを組み合わせれば、アプリケーションとして利用できる。
IT活用による人材の育成効果にも期待
時間の有効活用をテーマに様々な展開を企画している営業力強化グループだが、現在はコーポレートビジネス部の全員が5月に導入した新システムを使いこなせるよう、定着化活動に注力している。テラスカイの協力も受けながら、全国で開催した利用方法説明会は、約2ヶ月で30回にも及んでいる。その積極的な取り組みの背景にあるのは、今後への期待だと大滝氏は語る。
「IT活用が浸透して時間の浪費が少なくなれば、当初の計画通り、渉外担当者がお客さまを訪問できる件数は増え、営業力の強化が実現できるでしょう。それだけではなくITによる人材の育成効果にも期待しています。最近は20代の若い人材が営業の中心となっており、その一人ひとりに手取り足取りノウハウを教えていくことは、労働時間・人的リソースの面からも難しくなっています。その代わりに我々がSalesforceやmitocoを通して必要な情報を提供することで、若手に営業活動の“気付き”を与えていけると考えています。そうした“気付き”からひとつでも成功を生み出せれば、担当者それぞれの自信となり、ひいては組織全体の営業力強化にもつながっていくでしょう」
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