クラウドサービス「ニフクラ」を運営する富士通クラウドテクノロジーズ(以下、FJCT)は、2018年7月に本社を中央区銀座へ移転した。また、この本社移転のタイミングに合わせて、クラウドエンジニア向けの施策である「ニフクラウンジ」および、ニフクラの品質とスピード向上を目的とした「ニフクラボ」を展開していくことを発表した。これらの具体的な内容や施策の狙いについて、FJCTデータ・IoTデザイン部の織田晃弘氏とインフラデザイン部の田上亮氏に話を聞いた。

エンジニアの情報共有や議論の場となる「ニフクラウンジ」

-FJCTでスタートした「ニフクラウンジ」「ニフクラボ」という2つの取り組みについて、具体的な内容を教えてください。

織田氏: まずは「ニフクラウンジ」についてお話ししたいと思います。

FJCTでは、2018年7月25日にプレスリリースを出し「ITエンジニアやクリエイターによる勉強会の会場として、FJCTのセミナールームを無償提供する取り組み」として「ニフクラウンジ」を発表しました。

-発表時には、ネットでも話題になりましたね。ただ、FJCTでは以前よりこうした取り組みをされていたと思います。以前から、何か変わった部分があるのでしょうか。

富士通クラウドテクノロジーズ
データ・IoTデザイン部
エンジニアタスクフォース委員長
織田 晃弘 氏

織田氏: おっしゃる通り、旧ニフティ時代から、エンジニア向けの勉強会に無料で会場提供を行う社としての制度は存在しました。しかし、社内の有志のエンジニアによる自発的な活動になってしまっていたため、新社屋への引っ越しをきっかけに改めて制度を見直してエンジニアタスクフォースという組織が主体となって運用されるようになったということです。社員の自発的な取り組みとして、そうしたことが行われてきたというのは素晴らしいことである一方、どうしてもその個人の仕事の忙しさなどに活動が影響を受けてしまうという問題もありました。今回「ニフクラウンジ」が運用も含めて制度の一部になったことで、セミナールームの貸出プロセスなども半自動化され、以前より安定して取り組みを回していける体制を作っています。FJCTが今後、企業としてエンジニアのコミュニティに貢献できるような活動をしていくという意思の表れと感じていただければと思います。

-そうしたことに企業として取り組んでいくことで、FJCTとしてはエンジニアにどのようなメッセージを伝えたいのでしょう。

織田氏: われわれとしては、社名が変わり、ブランド名も変わったことで、「ニフクラ」はほぼゼロからの再スタートだと考えています。そうした中で、できるだけ多くの方に「ニフクラウンジ」を活用していただき、FJCTがどういった技術を持っている会社なのか、どのくらいの人数で、どんなエンジニアリングによってクラウドサービスを運用しているのかということにも、同時に関心を持っていただきたいと考えています。

また、FJCTとしては、世の中でクラウドを活用してサービスを提供することに携わっているエンジニアの方々が、インフラにどのようなことを求めているのか、解決したいと感じている課題は何か、何ができるとうれしいのかといったことを、肌で感じてサービス運営に生かしていきたいと思っています。

ぜひ、エンジニア同士の情報共有や議論に使える「物理的な場」として、「ニフクラウンジ」を活用してほしいです。

「ニフクラボ」の本格稼働で目指す「品質」と「スピード」の向上

-では次に「ニフクラボ」について教えてください。「ラボ」とありますが、何らかの研究を行う施設なのでしょうか。

織田氏: 「ニフクラボ」は、主にFJCTの社員が利用することを前提に整備を進めている、施設や制度の総合ブランドです。施設には、ニフクラの本番環境と同じ構成を持つ実機が用意されていて、これを使ってさまざまな検証を行うことができます。

田上氏: われわれは「ニフクラ」というインフラを世のなかに提供している企業です。インフラの提供事業者として、可用性やセキュリティなど、さまざまな観点での使命があります。よりクオリティの高いサービスを、早いサイクルでリリースしていくにあたって「ニフクラボ」が重要な役割を果たしていくことになります。

-そうした「技術検証」は、これまでどのような形で行われていたのでしょう。

富士通クラウドテクノロジーズ
インフラデザイン部 田上 亮 氏

田上氏: 「検証」のための環境は以前からあったのですが、さまざまな場所で分散して運用されていました。なので、まずはそれらを集約するべきだと考えました。

さらに、それらの検証環境が本番環境に影響を及ぼすことは絶対に避けなければならないので、検証を行う際は細心の注意を払う必要がありました。そうした「不自由さ」を解消するために「ニフクラボ」では本番環境から完全に切り離された形で、検証環境を構築しています。それによって、全体への影響が大きい新たな機器を導入する際のテストや、あるいは物理的に電源を落として発生した障害をどのように復旧できるかといったシミュレーションを行うようなことが以前よりやりやすくなります。

ニフクラは、VMwareの技術をベースにしたクラウドですが、たとえば、VMwareには「vSAN」と呼ばれるSDS(Software Defined Storage)を実現するための機能があります。ただ、このvSANはかなりデリケートな仕組みであり、これまで細心の注意を持って時間をかけて構築と検証を行ってきました。ニフクラボでは、障害発生時の復旧性も含めて従来とくらべ、はるかに効率的に検証が可能になったことで、より堅牢で可用性の高いシステムの構築を行えるようになると考えています。

-ユーザーの立場では、「ニフクラボ」によって、ニフクラのサービスがより使いやすく、安心なものになっていくサイクルが早まると考えればいいのでしょうか。

田上氏: そうなるようにしたいと思っています。FJCT内には、インフラの運用のためのツールを作っているエンジニアもいれば、ニフクラをより使いやすくするためのアプリケーションを作っているエンジニアもいます。そうした人たちが、より早く手を動かせる環境を作り、スピード感を持ってサービスをリリースできるようにしたいですね。

これまで、部分最適が進んでいた環境を全体最適にすることで、「スピード」と「クオリティ」の両面で価値が出せるようになれば、それはサービスとしてニフクラを使うユーザーにとっても、メリットになっていくと思います。

クラウドの社会インフラ化で高まる「インフラエンジニア」の価値

-「ニフクラウンジ」「ニフクラボ」というエンジニア向けの取り組み全体を通じて、今後、クラウドエンジニアのコミュニティやFJCT自身にどういった変化が起こることを期待していますか。

織田氏: まずは最初にお話ししたとおり、多くの方に「ニフクラ」を知っていただき、それが自分たちのビジネスに役立つものか、選択肢のひとつになり得るものかというのを検討していただける機会が増えてほしいと願っています。

もうひとつは、個人的な希望でもあるのですが、ニフクラについて知っていただくことで、「クラウドインフラ」そのものの構築や運用に関心を持ち、取り組んでくれるエンジニアを増やしたいという思いもあります。

田上氏: 「クラウド」は、社会の情報インフラの一部として「あって当たり前」のものになりつつあると思います。しかし、そうなったことで「クラウドを使ってどんなサービスを作るか」に関心を持つエンジニアが増えている一方で、クラウドそのものをどのように構築し、運用していくかという部分に興味を持つ人は少なくなっています。そこに関心を持って、取り組んでくれるエンジニアを増やしたいですね。

-社会的なインフラである「クラウド」そのものの運用に、やりがいを持って取り組めるエンジニアが求められているということですね。

田上氏: ええ。サービスももちろん重要ですが、もし、クラウドが止まってしまえば、そのうえに載って動いているすべてのサービスも止まってしまいます。クラウド基盤の運用エンジニアは、その意味で責任が重く、プレッシャーの大きな仕事ではありますが、それに意義を感じられる人にとっては、やりがいも大きいのではないでしょうか。

織田氏: FJCTは、「ニフクラ」という国内トップクラスのクラウドサービスを提供しているという自負があります。ただ、それに携わる社員とエンジニアの人数は、他のメガクラウドベンダーと比較しても圧倒的に少ないです。それでも長年培ってきた運用の自動化の技術を駆使して、メガベンダーと変わらない安定性したサービス提供ができるように努力しています。そうした状況のなかで、どうサービスを運営していくのかについては、これからも、知恵を絞り、手を動かしながら、さまざまなチャレンジが続けられていきます。

田上氏: 多くのメガクラウドベンダーでは、開発や運用に関わるエンジニアの人数も多く、拠点も世界中に分散しているため、担当範囲の細分化が進んでいます。その点、「ニフクラ」の開発はひとつの拠点で行っており、エンジニアは、サービス全体を見ながら、自分でコードを書き、クラウドの運用を支え、育てていけるという意味でユニークな環境だと思います。そうした環境に興味を持ってくれるインフラエンジニアが増えてくれるとうれしいですね。

-ありがとうございました。

[PR]提供:富士通クラウドテクノロジーズ