スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスを業務で利用する際に欠かせない「MDM(Mobile Device Management)」。さまざまなMDMが存在するなかで、7年連続で市場シェアNo.1を達成しているのが、アイキューブドシステムズの「CLOMO MDM」だ。
今回、実際にCLOMO MDMを導入した、九州中央リハビリテーション学院を訪ね、導入経緯や使い勝手、導入効果などを聞いた。
一度目の失敗を踏まえiPadとともにMDM導入を検討
九州中央リハビリテーション学院は、平成18年4月に設立された、まだ比較的新しい専門学校だ。開校当時は作業療法学科と理学療法学科昼間部、理学療法学科夜間部の3科のみだったが、平成21年度には看護学科、平成23年度には介護福祉学科、さらに平成29年度からは国際介護学科も設置されている。リハビリテーション・看護・介護の専門知識を備えた多くの医療人を輩出しており、その卒業生は1,250名を越えたという。現在は741名の学生に対して『知育・体育・徳育』という基本理念のもとに教育を行っている。
九州中央リハビリテーション学院では以前からPCを必携としており、全学生がPCを所持している状態にあった。しかし、PC環境は学生ごとに異なり、OSもMicrosoft Officeアプリもバラバラで、管理やサポートが困難な状況にあったという。さらに、実際に活用される場もレポート作成が主で、インタラクティブ性を持った使い方ができていなかった。そこで検討されたのがiPadの導入だ。
同学院は、2011年という非常に早いタイミングで一度iPadの導入を試したことがあった。しかし、結果として1年で試験導入を終えた。その理由は、学生の自主性に任せて自由にデバイスを使用させたことにあったという。動画の撮影や資料の閲覧に活用されるという良い面もあったが、授業中にも関わらずゲームを遊ばれてしまったり、紛失や盗難にあった学生が現れたりするなど、学習への効果をうまく生み出すことができなかったのだ。
「感覚的に学習でき、学生の興味を喚起できるという点において、iPadは非常に優れたデバイスです。ですが過去の試験導入では、管理体制を構築しなかったことでうまく運用できませんでした。そこで今回は2011年の失敗を振り返り『Apple School Manager(以下ASM)』とともに、MDMの導入を検討したのです」と専任教員の米ヶ田宜久氏は言う。
同学院が求めた最大の要件は4つ。1つ目は授業に必要なアプリケーションの管理や配布ができること。2つ目はゲームをはじめとした授業に関わりのないアプリのインストールや使用を防ぐこと。3つ目はインターネットの閲覧ができつつもフィルターをかけられること。そして4つ目は生徒の作業状況を確認できることだ。そんなとき、元々付き合いがあったNTTドコモから提案を受け、検討されたのが、アイキューブドシステムズのCLOMO MDMだった。
先行事例のないiPad導入で目指したものとは
九州中央リハビリテーション学院がiPadとASM、そしてMDMの導入を検討したのは2016年6月のこと。その後、他のデバイスやOS、サービスとの比較、実機やASMの検証、MDMの検討を経て、11月には仕様を確定。2017年1月に教員への先行導入を行い、4月には実際に学生の元へ展開している。
先行事例がまったくない状態だったことから、導入には苦労したという。学生の正確な人数は4月に入らないと決定しないため、そこから入学までの1週間ほどで設定を行った。実際にASMをインストールし、動作するところを見るまでは安心できなかったが、事前にしっかりセキュリティーポリシーなどを設定する構成プロファイルを構成していたため、学生自身によるSIMの開通を見届けたあとはスムーズに進んだ。
さらに、MDMにCLOMO MDMを導入した理由について米ヶ田氏は次のように説明する。
「CLOMO MDMを導入した理由は、利用状況の確認や機能の設定・制限、紛失・盗難時の対応など、ひとえにASMをフル活用するために有効な機能を備えていたからと言っていいでしょう。加えて本社が福岡県にあり、同じ九州ということで迅速なサポートが期待できる点も大きかったと思います」
最終的に導入したデバイスはiPad セルラーモデル、しかもキーボードやMicrosoft Officeアプリもセットだ。こういった仕様にした狙いは「自宅学習」「キーボード操作の習熟」「Microsoft Officeアプリの習得」の3つを実現することにあった。自宅での学習やレポート作成に必要な環境を整えつつ、同時に社会人に必要とされるスキルを学んでほしいと考えたからだ。
だが、このような最新デバイスやサービスを導入する際には、必ずコストがハードルの1つとなる。専務理事の志垣氏は、この点について次のように語る。
「コストについても当然検討しましたが、重視したのは学院側ではなく、学生側のコストです。教科書などの教材ですでに多くの出費がかさみますので、iPad必携化による負担感が大きくならないよう気を配りました。最終的に、入学時に必要な学生側の費用は導入以前よりも減るように設定しています」
意識されていないことこそMDM導入の成功
こうして九州中央リハビリテーション学院は、2017年度からiPadの必携化を開始。2018年度はさらに授業におけるiPad利用の幅を広げた。例えば、筋肉の重なりをアプリで観察したり、実習の様子を動画で撮影したり、グループ学習にクラウドを利用したりといった活用が行われている。授業の双方向性がより向上し、学生の取り組みも積極性を増しているという。
また教員側からも、授業中に指導しやすくなるなどのメリットがあったそうだ。学生の持つiPadのアプリの立ち上げ状況やバッテリー不足を一覧でチェック可能なため、授業をスムーズに進行できるという。また授業の進行に追いつけていない学生は自分から言い出しにくいものだが、学生の表示画面をモニタリングする機能を使用し、そういった学生を教員の方からフォローすることができるようになったそうだ。
「ASMとCLOMO MDMによって、アプリを活用した授業を安心して展開できるようになりました。しかし教員と学生のほとんどは、MDMをあまり意識していないでしょう。MDM自体は空気のような存在であり、意識されてしまうのはあまり良い導入とは言えません。教員や学生がその存在を意識していないということは、上手に導入できているということだと思います」(米ヶ田氏)
副次的な効果として、ペーパーレス化も進んでいるという。授業中に配布したい資料をすぐに一斉配信できたり、学生が資料を忘れた場合にも対応できるなど、その使い勝手に対する評価は上々だ。
「もちろん電子化に不向きな紙資料も残っているためケースバイケースではありますが、適したものを適した状況で利用できるため、その選択肢が1つ増えたということは、ペーパーレス化に貢献できていると思います」(米ヶ田氏)
医療人の育成を支えるCLOMO MDM
2016年度よりiPadおよびASM、CLOMO MDMを採用し、全学生の必携デバイスとした九州中央リハビリテーション学院。最後に、同学院のタブレット活用方法についての展望を聞いた。
「現状、iPadのようなデバイスは必ずしも教育に必要なものではありません。また客観的な教育効果も未知数です。ですから、いまはまだ期待の方が大きいと思います。このような状況の中にあって、デバイスを意図した形で利用できるようにするCLOMO MDMの存在は重要なものと言えるでしょう。本学院の基本理念である『知育・体育・徳育』のもと、専門的な知識と技能、心豊かな人格を備えた医療人を社会に送り出すべく、今後もさまざまな方法を模索していきたいと思います」(志垣氏)
Apple School Manager 活用事例:九州中央リハビリテーション学院
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