MathWorks主催の「MATLAB」「Simulink」のユーザーカンファレンス「MATLAB EXPO 2018 JAPAN」が10月30日にいよいよ開催される。MathWorks Japanとして10回目の開催となる今回は、ユーザー事例講演が計18講演と昨年からさらにパワーアップ。基調講演はもとより、A〜Gトラックに分かれた専門セッション、展示会、ライトニングトーク、Woman in Techなどの目玉企画が目白押しだ。その注目ポイントを聞いたので紹介しよう。

テーマは「Are You Ready for AI, Is AI Ready for You?」

生産現場や研究開発分野の数値演算、分析/解析業務で幅広く利用されている「MATLAB」。最近は、AI(人工知能)への関心がかつてないほど高まっていることを受け、MATLAB/Simulinkが提供する機械学習、ディープラーニングの機能を業務に活用する動きが活発化している。

MATLAB/SimulinkはToolboxやBlocksetというオプションツールで必要な機能を拡張していくことができる。機械学習、ディープラーニング(深層学習)向けにもCNN(Convolutional Neural Network)やRNN(Recurrent Neural Network)を使うためのToolboxを提供し、アプリケーションへの展開が可能だ。また、画像処理や映像処理、それらを使うためのカメラ向けドライバーやライブラリも豊富に提供されている。

AIへの期待の高まりと、それを業務に組み込んでいく技術が整ってきたことを受け、取り組みに弾みがついている状況だ。そのような中、今年のカンファレンスのテーマとして掲げられたのは「Are You Ready for AI, Is AI Ready for You?」だ。MathWorks Japan インダストリーマーケティング部 部長 阿部悟氏は、その狙いを次のように語る。

MathWorks Japan インダストリーマーケティング部 部長 阿部悟氏

MathWorks Japan インダストリーマーケティング部 部長 阿部悟氏

「ここ1〜2年で機械学習やディープラーニングなどを使ったデータ解析が地に足のついた状態になってきました。ただ、いざ企業としてAIに取り組むという話になったとき、機械学習やディープラーニングの技術を現場に適用していくためには、まだまだチャレンジすべきことが多いのも事実です。AIという言葉が先行するあまり、目の前の技術をどう適用するか腐心されているという声もあります。その枠のなかで何をすべきか、実践例を交えてあらためてご紹介するイベントにしたいと考えています」(阿部氏)

そこで、AIという技術側、AIを使う利用者側の双方から「準備はできているか」を確認していこうというわけだ。本稿から2度にわたって「MATLAB EXPO 2018」の見どころを紹介していく。今回は、午前中に行われる基調講演と、休憩時間中に開催されるミニセッションの内容をお届けする。

基調講演は「ファナックが考えるIoT時代のものづくり」

開幕の基調講演には、産業ロボットで世界をリードし、日本を代表するものづくり企業のファナックから、ロボット事業を統括する専務・ロボット事業本部長の稲葉清典氏が登壇。「ファナックが考えるIoT時代に対応したこれからのものづくり」と題して、すべてのものがインターネットにつながるIoT時代に入るなかで、AIやデータ解析技術をどのように現場で活用していくかについて最新の取り組みが披露される。

ファナック専務・ロボット事業本部長 稲葉清典氏

ファナック専務・ロボット事業本部長 稲葉清典氏

ファナックのロボット開発におけるAI技術活用というと、ベンチャー企業とタッグを組み、機械学習やディープラーニングを使った外観検査や機器の故障予知、バラ積み作業などを行ってきたことがよく知られている。

今回の講演では、クラウドからより現場側のエッジに近い「フォグ」という階層で、AIをどう活用していくかを紹介するものとなる。ファナックにおけるこれまでのAI活用について実績を踏まえ、さらにIoT時代にあわせてAIがどういう姿に進化していくのか、日本のものづくりの今後を考えるうえで大いに参考になる内容だ。

ファナックの稲葉氏に続いて登壇するのは、米MathWorksでSimulinkのプロダクトマーケティングを統括しているJason Ghidella氏だ。今年のメインテーマである「Are You Ready for AI, Is AI Ready for You?」を演題に掲げ、実際のAIの適用事例を豊富に紹介していく内容となる。

「昨年の基調講演でも、メインテーマのAutonomous Anythingに沿って、コアとなる技術とグローバルでの導入事例をご覧いただきました。今回も、AI技術が世界中の産業で実際にどう使われているのかを豊富にご紹介します。実際の活用例を見ることで、自社のAIの取り組みに適用するヒントをつかんでいただきたいと思います」(阿部氏)

プロフェッショナルが明かす「MATLAB and Simulink最新情報」

Ghidella氏の講演に続き、R2018a、R2018bの機能を具体的に紹介するセッションが開催される。今年は、時間も昨年よりもやや長くとり50分間で、機能ごとに3人のエンジニアが登壇する予定だ。

昨年同様、製品デモや事例を交えながら、現場の開発者や担当者がどのように機能を実装していくかをテクノロジー視点から詳しく紹介していく。特にR2018aで追加された、車両運動を仮想3次元環境でモデル化およびシミュレーションするための新製品「Vehicle Dynamics Blockset」は要注目だ。

  • 車両運動を仮想3次元環境でモデル化

    車両運動を仮想3次元環境でモデル化

デジタル信号処理や通信関連については松本充史氏、データアナリティクスについては吉田剛士氏、モデルベースデザインや制御については山本順久氏が担当。技術的な課題やユーザーがぶつかりやすい悩みなど、現場の課題に即した解決策を提案していく。

「特に、ディープラーニング関連の機能改善はめざましいものがあります。直近の数リリースをさかのぼりながら、実装の手順だけでなく、現場にどのような成果をもたらすのかまでを整理できればと思います。また、専門知識を持つ3人が壇上でどんなかけあいをするかも、ご期待ください」(阿部氏)

休憩時間にはライトニングトークや女性向けイベントも

昼の休憩時間は、展示会場内でのオープンプレゼンテーション「MALABライトニングトーク」と、ポスター発表「Call for Posters」が予定されている。また、同フロアのカンファレンスルームでは、女性エンジニアを中心にしたミーティング「Woman in Tech」が開催される。

ライトニングトークは昨年から実施された企画で、希望者が誰でもオープンに参加できる発表会だ。内容も多彩で、昨年は、MATLABを使ってゲームプログラミングを行うといったものもあった。同製品の持つさまざまな可能性がテンポよく紹介される予定だ。

ポスター発表の内容は、いわゆるアカデミックな観点からのポスター発表だけでなく、ビジネス観点や、ユーモアに富んだ内容の発表も募集している。展示ブースをめぐるなかで、パネルなどにコンパクトにまとめられた発表内容もぜひ注目していただきたい。

また、今回が初の試みとなるWoman in Techも興味深い取り組みだ。米国を中心にエンジニアとして活躍する女性は増えている。日本でも働き方改革などの取り組みもあり、現場で活躍する女性への期待は高まっている。Woman in Techは、そうした活動を支援するための第一歩に位置づけられているという。

「今年のEXPOは、AIをメインテーマに据えながら、基調講演からA〜Gトラックにわかれた専門セッションのなかで、幅広いAI活用の姿を探っていきます。AIのカバー範囲はとても広く、それぞれに必要な技術は変わってきます。AI技術がどう使われているかをできるだけ現場に即した適用事例というかたちで紹介することで、AI活用のヒントや、これからAI活用のガイドにしてほしいと思っています」(阿部氏)

MATLAB EXPO 2018の開幕は10月30日、開催場所はグランドニッコー東京 台場。登録は、下記からも可能だ。次回は、A〜Gトラックで行われる注目セッションを詳しく見ていく。

  • MATLAB EXPO 2018 Japanタイムテーブル

    MATLAB EXPO 2018 Japanタイムテーブル

MATLAB EXPO 2018 Japan
グランドニッコー東京 台場 | 10月30日
MATLAB/Simulinkユーザー様による事例紹介やMathWorks社員による技術講演を通して革新的な最新技術をご紹介いたします。
http://www.matlabexpo.com/jp/

[PR]提供:MathWorks Japan