6月5日、マイナビニュースセミナー「HCIでシステムを超高速に? サーバー本来の性能を超えたパフォーマンスをソフトウェアで実現したHCIの最終形とは」が都内で開催された。このセミナーでは、既存のHCI製品が持つ課題を解消した「Datrium DVX」が紹介され、米国本社より来日したふたりのVP(ヴァイスプレジデント)に加え、エンジニア、導入検討ユーザー、それぞれの立場からDatrium DVXの魅力が語られた。
根っからの3Tierユーザーも納得する次世代HCI
シンプルな管理と操作性の高さで急速に普及しはじめたハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)。数多くのHCI製品が市場に存在するが、いまだTier1のプライマリーストレージを置き換えるまでには至っていない。その背景の1つにあるのがパフォーマンスや機能の不足だ。こうした課題をアーキテクチャーレベルで解決した製品として注目を集めているのが「Datrium DVX」だ。
セミナーではまず、VMware User Group - Japan(VMUG)で活動する富士電機ITセンター株式会社 生産システム部三重システム課の山口裕司氏が「根っからの3TierユーザーがここでHCIを検討する理由」と題して、HCIの課題とDatrium DVXへの期待をエンジニア目線で解説した。
「HCIはスケールアウトなどの魅力は多いのですが、注意点も多いという印象です。オーバーヘッドと障害縮退時を考慮したサイジングが必要であったり、また、ホスト障害時の縮退運転には“リソースすべて”が減少したりといった課題もあります。ノード数によってはデータロストの可能性があり、ビジーホストの影響も受けやすい。これに対し、Datriumはこれらの課題をうまく消化しています。製品コンセプトが非常に興味深い」(山口氏)
"ハイパースケーラー"がストレージの進化を加速
Datriumはどのように構想され、開発されたのか。続いて登壇した米Datriumの共同創業者でチーフサイエンティストのヒューゴ・パターソン氏は、製品開発の舞台裏を惜しみなく披露した。
パターソン氏はDatrium設立以前、米EMCのバックアップ・リカバリ・システム部門でCTOとFellowを務めていた。そもそも同氏はEMCに買収された米Data Domainのチーフアーキテクト兼CTOであり、業界で初めて重複排除ストレージシステムを開発した人物だ。Data Domain以前は、米NetAppのエンジニアリングリーダーとして業界初のディスクベースバックアップ製品SnapVaultを開発したことでも知られている。
「HCIは従来型の3Tierストレージの課題を解消すべく生まれました。GoogleやAmazonのように大規模なクラウド環境を提供するプレイヤーをハイパースケーラーと呼びますが、彼らがサービスを提供するうえでは従来型ストレージでは限界があった。そこでアレイコントローラを排除し、ソフトウェアでサーバーとストレージを統合しました。HCIはこの技術を応用したものといえます」(パターソン氏)
統合によって管理性は高まったが、新たな課題が生まれた。1つは、サーバーとストレージが切り離せなくなり、性能と容量を個別にスケールできなくなったこと。もう1つは、バックアップの仕組みが従来のまま取り残され、システム全体としては、データの信頼性を確保する仕組みが別に必要になったことである。この結果として、構築・運用コストは大きく下がらないものになってしまった。
「ハイパースケーラーのシステムは今日、さらに進化しています。Amazon S3のようなオブジェクトストレージが生まれ、バックアップやDRに活用されるようになりました。これと同じように、HCIを進化させたものがDatrium DVXなのです」(パターソン氏)
Datrium DVXが備えるユニークなアーキテクチャー
パターソン氏は、Datrium DVXの最大の特徴は「3つのブレイクスルーが1つのシステムに統合されたことにある」と強調した。3つのブレイクスルーとは、Tier1ストレージとしての低レイテンシーと高パフォーマンスを実現したこと、データの完全性とセキュリティを確保したバックアップの仕組みを内蔵すること、クラウドとオンプレミスで同じ環境のシステムが動作することだ。
この「パフォーマンス」「バックアップ」「クラウド対応」という3つの統合を実現するために、Datrium DVXでは、コンピュートノードとデータノードを分離し、それぞれが独自の役割を果たすというユニークなアーキテクチャーを採用している。
コンピュートノードに内蔵されるフラッシュは、データのキャッシュとしてのみ動作する。キャッシュ機能に特化しており、1ノードでも高いパフォーマンスを発揮することが可能だ。コンピュートノード側には、クラスタを構成してデータを保護するという役割すらない。
一方、データの永続化や信頼性の確保はすべてデータノードの役割となる。データは非同期でデータノードのストレージに分散保存され、コンピュートノードでキャッシュにヒットしない場合のみ読み出される。またデータを保存する場合は、重複排除、圧縮、イレージャーコーディング、暗号化といった技術が活用される。
「コンピュートノードとデータノードは、それぞれを個別に拡張することができます。サーバーやストレージを追加すれば、性能、容量がそれぞれリニアに向上します。また、拡張する場合は、コモディティサーバーや汎用的なSSDを追加していけばよいため、ベンダーやコンフィグにロックインされることもありません。従来型HCIのようにデータを保護するためにノード間のネットワークを介さないので、ボトルネックが排除されること、データノードにバックアップの仕組みが備わり、クラウドへのDRも容易であることも特徴です」(パターソン氏)
パフォーマンス、バックアップ、クラウドを1つに統合
Datrium DVXは、パフォーマンス、バックアップ、クラウド対応という、ストレージ本来の役割をどう実現するかという根源的なところから開発がスタートしたという。アーキテクチャーだけでなく、さまざまな技術を巧みに組み合わせて、他社にない独自性を生み出している。
具体的には、大きく4つのコア技術がある。1つめは「ログ構造ファイルシステム(LFS)」だ。ランダム書き込みを8MBにまとめてシーケンシャルに分散書き込みすることで、これまでにない高いパフォーマンスを実現する。2つめは、「グローパル重複排除」。これは、重複排除を筐体内だけで行うのではなく、クラスター内の各ノードを始め、遠隔地にあるシステムやパブリッククラウド上の仮想システムでも共通して行い、グローバルでデータ削減をする機能だ。3つめは「バックアップカタログ」。常時のイレージャーコーディングとグローバル重複排除、圧縮を管理することで、HCI内にバックアップ機能をビルトインして、効率的に管理する。そして最後は、「キーバリューによるデータ保存」だ。これは、クラウドネイティブなKey-Valueインタフェースを備えたオブジェクトストレージの仕組みを持つことで、オンプレとクラウドで同じデータ保存の仕組みを可能にするものだ。
パターソン氏は「パフォーマンス、バックアップ、クラウドを最初から1つに統合することを考慮して設計しました。ユーザーは、パフォーマンス、信頼性、コストなどの二者択一をする必要はありません。選択のためにムダな時間を費やさず、すべてを利用することができるのです」と、Datrium DVXがもたらす革新性を重ねて訴えた。
障害時の性能劣化がなくコストメリットが大きいことが魅力
続いて登壇したNTT アドバンステクノロジ株式会社(NTT-AT) セキュリティ事業本部IPプロダクツビジネスユニットの遠藤章浩氏は、自社運用するHCIのDatriumへの置き換えを検討している立場から、Datriumへの期待を述べた。NTT-ATでは、社内シンクライアントとファイルサーバーをVDIサービスとして提供してきた。基盤には、3Tierアーキテクチャーと従来型HCIを採用してきたが、HCIには、パフォーマンスやROIで課題があり、リソースのオーバースペックやシステム障害時の原因特定の難しさも痛感していたという。
遠藤氏は「Datriumは、コンピュートノードがそれぞれ独立して動作するため、障害時に性能劣化がないことが魅力です。また、スペックが違う機器同士でも構成できるので、コストメリットも大きい。トラブル時の対応も含めて、これまでにないHCIとして大きな期待を持っています」とコメントした。
Oracle RAC対応とクラウドバックアップに関心集まる
Datriumは、パターソン氏をはじめEMCのData Domainのコアメンバーと、VMwareでESXハイパーバイザーの設計に携わった初期のプリンシパルエンジニアらが中心になって2012年に設立されたベンチャー企業だ。製品展開から数年だが、製品コンセプトやユニークなアーキテクチャーと技術が評価され、瞬く間にシェアを拡大させた。米Datriumでプロダクトマネジメント統括担当を務めるレックス・ウォルターズ氏は、市場で受け入れられる理由についてこう説明する。
「ユーザーがHCI製品を選択する際、さまざまな製品を比較検討しますが、3社のうち2社は最終的にDatrium DVXを選んでいただいています。評価いただくポイントは、従来のHCIに比べて10倍高速であること、初期費用・追加費用ともに低コストであること、管理が簡単で運用効率に優れること、バックアップとクラウドDRをビルトインしていることなどです」(ウォルターズ氏)
実際、2016年以降、ストレージやネットワーク、クラウドなどを専門とするメディアから数々のアワードを受賞。ガートナーからも「Cool Vendor」などとして高く評価されてきた。国内展開についてはこれまでノックスが先行して手がけてきたが、2018年2月には日本法人としてデイトリウムジャパンが設立された。国内ユーザーに向けて、製品情報の提供や販売体制の整備などを強化したことで、新しいコンセプトを持ったITインフラ製品として、HCIに懸念を抱いてきた企業を中心に採用が広がり始めている状況だ。「2018年4月にOracle RACへの対応やメガクラウドへのバックアップを発表したことで、日本国内のお客様からも大きな関心が寄せられました」とウォルターズ氏は話す。
ベアメタルサーバーで稼働するPostgreSQLのI/Oを高速化
ウォルターズ氏のセッションでは、具体的なコストメリットや今後の製品アップデート情報などが語られた。パターソン氏が説明したように、DVXは、クラウド互換のオブジェクトストレージと同様の構造を持つ。クラウド上でDVXソフトウェアを稼働させることで、重複排除と圧縮を効かせながら、オンプレミス環境とクラウド環境がシームレスにつなげることが可能だ。これにより、従来型ストレージやHCIと比較してクラウドへのDRコストを大幅に削減することが可能になる。
ウォルターズ氏は実際の環境で比較検証したグラフを示しながら「グローバル重複排除と圧縮、暗号化の効果によって、EC2インスタンス、S3ストレージの削減、転送量の削減など69%のコスト削減効果があります。また、永久増分バックアップの仕組みによってS3ストレージと通信量を約91%削減する効果があります」と説明した。
また、今後のアップデートについては、Tier1ストレージ領域としては「ベアメタルでサポートされるアプリの拡充」がある。なお、ベアメタルアプリへの対応としては、セミナー開催日に、ベアメタルサーバーで稼働するPostgreSQLのサポートが発表された。
製品リリースから一気に市場の主役に躍り出た感のあるDatrium DVX。独自のアーキテクチャーや日々進化する機能に対するユーザーからの高い期待がひしひしと感じられるイベントになった。
[PR]提供:デイトリウムジャパン