2020年に向けて、映像データを活用する映像IoTの市場は拡大していくことが予想される。ただ、映像データは容量が大きいため、ネットワークやサーバーストレージの整備・運用にかかるコストはばかにならない。映像を有用なビッグデータとして活用するためにも、参考にしたいソリューションを紹介しよう。
高い映像品質とデータ容量削減の両立が映像IoTの推進を加速
金融機関や小売店舗、工場、建設、インフラなど様々な現場で、カメラで撮影した映像を監視し、さらには映像データを分析することでマーケティングや安全性向上に役立てたいというニーズは大きい。カメラの性能が上がり、4Kも一般的になって、いまや映像はどんどんと高画質化・高精細化している。ネットワークの速度も格段に高速化。現在の4G(LTE回線)でも高速だが、今後は5Gの実用化も視野に入っている。一方、撮影した映像データを保存するためのサーバーストレージもかつてと比べれば安価になったため、環境面だけを見れば、こうしたニーズの実現は容易になっていると考えられる。
とはいえ、映像はやはりデータ容量が大きい。リアルタイムの監視カメラ動画となればなおさらだ。分析や蓄積のためサーバーに保存しようとすると膨大なストレージ領域が必要になるし、大容量ストレージの購入や更新には当然コストもかかる。加えて、大きなデータの送信はネットワークにかける負荷も相当なものになるだろう。ニーズ自体は高いにもかかわらず、まだまだ二の足を踏む企業や組織が多い背景には、こうした事情があると考えられる。
ネットワークやストレージの問題を解決し、映像IoTを推し進めるには、ネックとなる映像のデータ容量を削減するのが最も効果的だ。とはいえ単純に映像の圧縮度を高めるだけでは、画質が劣化し、分析などに有効に役立てることは難しくなってしまう。
つまり、映像IoT市場のユーザーニーズを満たすための映像データの条件は、次の2つに集約される。ひとつが、分析に活用可能な高い品質を保っていること。もうひとつは、可能な限りデータ容量を抑えられることだ。この相反したニーズを満たすデータ活用が実現できれば、映像IoTの浸透もますます進むに違いない。
ここに付け加える形でさらに注目したいポイントが、ネットワークエッジでの映像処理という考え方だ。現状、カメラが撮影した映像データは、ネットワークを通じてサーバーに送信してから画像認識処理を行うのが一般的だ。それゆえに重い映像データはハンドリングが難しく、ネットワークにも大幅な負荷がかかってしまうわけだ。
しかしながら、映像データをサーバーに送信する以前の段階、すなわちネットワークエッジにおいて目的とする画像センシング処理を行えるならば、ネットワークの負担を減らし、送信や保存のための容量やコストもさほど気にする必要がなくなってくる。そこで注目したいのが、沖電気工業がリリースする映像IoTシステム「AISION」(アイシオン)だ。
独自の映像圧縮技術とセンシング技術によりネットワークエッジでの処理を実現
AISIONは小型のゲートウェイ装置を中核に、カメラやネットワーク、サーバーなどによって構成する映像IoTシステムである。ゲートウェイ装置には映像圧縮モジュールと画像センシングモジュールを搭載。カメラで撮影した映像データを大幅に圧縮でき、かつセンシングモジュールも備えているため、ネットワークエッジにおいてAI技術を活かした分析を行うことが可能となっている。
映像モジュールは、圧縮動画の標準形式として幅広く利用されている「H.264」の映像データを、独自技術により最大約10分の1にまで圧縮。映像品質を最大限保ったまま、データ容量の大幅な縮小を可能としている。フォーマットとしてはH.264であるため、通常使われる様々なデバイスで再生できるのもメリットだ。サーバーに送信する映像データ自体をコンパクトにできることから、ネットワークにかかる負担を減らして効率化することが可能となり、同時にサーバーに保存する際のストレージ容量とランニングコストも大幅に節約できる。
同製品が実際に導入された事例として、ワイヤレスネットワークを介した遠隔施設監視がある。沖電気工業 情報通信事業本部 ネットワークシステム事業部の宮雅彦氏は、次のように語る。
沖電気工業 情報通信事業本部 ネットワークシステム事業部 宮雅彦氏 |
「今後拡大していくモバイル回線を利用した映像監視システムでは、遠隔へ映像データを送信するネットワークコスト(帯域制限)が大きな問題になります。この遠隔施設監視では従来、モバイル回線の帯域が限られているため、静止画像を一定間隔で送信し監視している状況だったそうですが、AISIONのゲートウェイ装置を既設の設備に設置した後は、既存のネットワーク帯域のままでも高精細でスムーズな遠隔映像監視が可能となり、効果を上げているようです」
一方、画像センシングモジュールは、店舗の入退場者数や行列をつくっている人数などをカウントできる人物検出(通行者認識)モジュールを初期状態で搭載。来店客の映像データを混雑予測や客層分析、防犯などに役立て、経営やマーケティングにも活かす”店舗IoT”で力を発揮してくれる。建設現場、工場、発電所やダムといった現場では、作業エリアへの侵入を検知したら警報を通知するなど、セキュアな作業環境の構築をサポートする。
画像センシングモジュールは現時点でこのほかにも顔認識、車両認識、動体認識が順次提供される予定。モジュールを追加していくことで、様々なシーンに対応できるようになる。
たとえば車両認識モジュールでは、道路の交通量を把握できるほか、逆走などもいち早く検知でき、事故防止につなげられる。顔認識モジュールは、たとえば優良顧客の顔を登録しておき、来店した際に自動通知することで、顧客対応サービスの向上に活かせるだろう。動体認識は航空機など動くものを自動検知するためのものだ。
2018年2月に先行して出荷開始されたのが、有線ネットワーク(FTTH)接続モデル。続いて今年度中には、ゲートウェイ装置自体にSIMカードを挿入可能なモバイル対応版もリリース予定だという。宮氏は、最後にこう語った。
「当社独自の映像圧縮技術とセンシング技術によりネットワークエッジ処理を実現したAISIONは、まだ世界に類を見ない製品ですので、お客様のニーズを伺いつつ、様々なシーンでの活用を提案していきたいと考えています」
AISIONの登場が、映像IoTの可能性をさらに広げていくだろう。
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