毎月定額で、安全運転をすればポイントが還元されるコネクテッドカーサービス『SmartDrive Cars』の申し込み受付を4月から開始するスマートドライブ。創業からわずか5年の同社はどのようにクルマ社会を変革しつつあるのか、新サービスの開発経緯を聞いた。
スマホのように、利用方法によって料金が変わる自動車を
新生活が始まる4月は「移動のあり方」が変化する月でもある。子どもたちは未知の通学路を歩きだし、新社会人はつり革やハンドルを握って通勤を始める。毎年、春になると全国で交通安全運動がおこなわれるのは、こうした不慣れな通学・通勤者を守るためだ。そして今年の春からは、まったく新しい自動車サービス『SmartDrive Cars』が始まる。毎月定額で車を利用でき、安全運転するとポイントが貯まるという、人と自動車の関係を変える試みだ。このサービスは、IoT自動車ビジネスを展開するスマートドライブによって提供される。同社はアクサ損害保険と共同で、安全運転の度合いによって保険料を割引くテレマティクス保険の取り組みを進めるなど、自動車のビッグデータを活用した独自のサービスを展開してきた。
車種と期間を選んで『SmartDrive Cars』に申し込めば、新車と車内のシガーソケット搭載用の専用デバイスが手に入る。このデバイスによって走行がデータ化され、安全で環境負荷が小さく、同乗者に快適な運転をすればするほどポイントが得られる仕組みだ。貯まったポイントは、Amazonギフト券やWAONポイントなどに交換することができる。自動車税や自賠責保険、車検やメンテナンスなどの費用はすべて込みで、1〜5年の契約期間から選ぶ。料金はホンダの軽自動車N-BOX の5年契約で、月額3万円台だ。
『SmartDrive Cars』は、スマートドライブが提供していた法人向けのリスク分析や車両管理、残価予測などの研究開発から生まれた。膨大な走行データを紐解いていくうちに、運転の特性が将来のクルマにどんな影響を与えるのか、見通せるようになったのだ。つまり、今日これだけの運転をしたこの車は、どれくらい事故リスクがあるのか、3年後、いくらで売れるのか、残価の予測を立てられるようになったのである。
スマートフォンが通話やデータ通信の利用方法によって料金が変わるように、自動車も運転方法や移動距離に応じた料金体系で利用できないか、そんな思いが新サービスの出発点となったと、スマートドライブ代表取締役 北川烈氏は言う。
「私たちの事業コンセプトは『移動を進化させること』です。従来は法人中心だったサービスをより社会的に広く届けるために、コンシューマ向けの『SmartDrive Cars』を開発しました。将来は、安全運転して買い物に行くと、ガソリンが割引になったり、コーヒーが一杯無料だったりと、『SmartDrive Cars』に入れば安全でお得な移動ができる、そんな世界を実現させていきたいと思っています」(北川氏)
ビッグデータ解析で見えてきた安全運転と危険運転の差
スマートドライブの創業は2013年。当時、北川氏は東大大学院に在籍中だった。防犯カメラの映像から人の流れを可視化するなど、自動車に限らず「移動体」のデータ分析を専門としていたが、研究だけでなく、社会実装していきたいという意気込みから会社を立ち上げた。
「アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)に留学したときの友人たちはGoogleやテスラに就職していき、彼らが開発に関わっている公道を走る自動運転車に乗る機会がありました。これは想像よりずっと早くモビリティの進化が来ると感じました。ただ、未来の車を創るのも良いけれど、自分の専門領域を活かして、今の車からデータを取得できたらもっと面白いことができると思ったんです。車の買い換えは日本の場合で平均7年もかかりますから、いま既に走っている自動車を未来化していくほうが、ずっと社会へのインパクトが大きいでしょう」(北川氏)
スマートドライブは、収集したビッグデータの解析による提案を、BtoBだけでなく行政向けにもおこなっている。例えば、朝7時から9時までに、地方の小学校周辺で危険運転の多いエリアを抽出した。この結果に基づいて、児童の通学をより安全なルートにすることができる。
興味深いのは、必ずしも急ブレーキをする人の事故リスクが高くない点だ。ブレーキを強く踏めるということは、それだけ危険察知能力が高いというわけである。逆に、ゆっくり走っていても減速をあまりしなかったり、大きめの交差点で左ハンドルを急に回したりする運転は事故リスクが高いという。
社会実装に向け、圧倒的な短期間で新デバイスを開発
クルマ社会に変革をもたらすスマートドライブは、どのようにして走行データを取得しているのだろうか。
運転席の足下には、車検時に異常を診断するためのOBD-IIというポートがある。ワイパーの動きやエンジンの燃焼など、約50種類のデータをここから取得する事が可能だ。スマートドライブは当初ここにデバイスを取り付け、スマホ経由でデータを集めていた。
しかし、今春リリースされる『SmartDrive Cars』では、シガーソケットに取り付けるだけですべて完結する新たなデバイスが用いられる。OBD-IIは車種依存が大きく、外車では取れないデータがあった。そこで、ほぼすべての車種についているシガーソケットに6軸の重力センサーを装着し、どのような加速をしているのか、道の隆起はどれくらいか、燃費はどの程度か、OBD-IIと比較しても遜色なく運転挙動を推測するアルゴリズムを構築した。
驚くべき事に、この新デバイスは、わずか4ヶ月で企画から実装にまで至ったという。
「旧デバイスは、スマホと連携することが前提でした。しかし、従業員のスマホを使わせられない、もしくは物流会社などの年齢層の高い従業員の方はスマホを持っていないという課題ニーズがあり、単体で完結するデバイスを作ることにしたのです」(北川氏)
センシングだけでなく、データ処理からクラウドへの通信機能までを備えたデバイスの開発は、その大きさが課題となった。試作品は男性の握りこぶしよりも大きく、シガーソケットの形状によっては挿すことができなかった。
もっとサイズを小さくしたいが、高度な処理もしたい。矛盾する悩みを抱えていたところ、技術商社のアヴネットから、一つの提案を受けた。それは、ネットワークテクノロジーの専門企業であるディジ インターナショナルが提供する切手サイズのシステムオンモジュール(SoM)、『ConnectCore® 6UL』だった。
『ConnectCore® 6UL』は、単にプロセッサや通信機能を備えた超小型のSoMというだけではない。このハードウェアのためのドライバ・OS・ファームウェア・通信プロトコルなど、開発環境がすべて用意されていたのだ。マーケットにいち早くアプリケーションを提供するIoT分野のニーズに応えた製品だと、ディジ インターナショナルのリージョナルダイレクタ 江川将峰氏は説明する。
「一般的に電子機器の製品開発には、1年から1年半という期間がかかります。しかし、近年はモノだけではなくコト、製品だけではなくサービスがフォーカスされるようになってきました。マーケットのニーズに合わせて速やかにサービスを提供して頂くために、アプリケーション開発やサービス、ビジネスモデルの検討に集中し、数カ月でサービス開始できる環境を用意しています」(江川氏)
『ConnectCore® 6UL』の提案によって、自社でICを揃えるよりもずっと開発負荷を削減できたと、北川氏は続ける。
「私たちの事業は、ハードウェアではなく、あくまでもアプリケーションが差別化要因です。実はアヴネットにはもともと半導体チップ単体の相談をしていたのですが、性能はもとより開発環境が充実しているモジュールであることが大いに魅力で、採用。その後も、頻繁に来社しサポートをして頂けたおかげで、短期間でデバイスを仕上げることができました」(北川氏)
膨大なデータをベースにさらなる移動の進化へ
車両の状態や周囲の道路状況などさまざまなデータを取得し、収集・分析することで人々の生活をより豊かにする車を「コネクテッドカー」と呼ぶ。スマートドライブはアヴネットやディジ インターナショナルと連携し、小さなデバイスをシガーソケットに装着するだけで、すべての車をコネクテッドカーにすることを可能にした。
北川氏は、より多くのデータを集めることで、さらなる新サービスを社会に提供していくことを構想している。
「いま研究開発を進めているのは、人々がどのようにして買物に行くのかといった、移動にまつわる生活のあり方です。高度な処理を可能としたデバイスを搭載できたことで、ドライブレコーダーの画像解析などから分かることも増えてくるでしょう。さらに、メーカー横断的に数十万台のデータを収集しているところは、まだ、どこにもありません。まずはその規模を目指し、その上で私たちにしかできない方法で『移動の進化』を後押ししていきます」(北川氏)
株式会社スマートドライブ
SmartDrive Cars
【リリース】SmartDrive Cars 正式に申し込み受付開始
ディジインターナショナル株式会社
ConnectCore® 6UL
[PR]提供:アヴネット