あなたが個人事業主、もしくは中堅中小企業に所属しているとして、あなたの会社がファイルサーバーとして利用するNASは、いったいいつごろに導入した製品だろうか? NASのリプレースというのは案外後回しにされがちだ。ファイル転送速度はイーサネットや無線LANの規格も大きいが、ファイルサーバー自身の能力も大きく左右する。今回は「Windows Server 2016 Essentials」を搭載したマウスコンピューターの「MousePro-SV230ESB」を試す。
古いファイルサーバーはパフォーマンス&セキュリティの不安アリ
多くの企業は業務を円滑に遂行するため、古いPCやNASを用いたファイルサーバーを社内に設置しているだろう。SMB(中堅中小企業)やSOHO(個人事業主)であれば、業務に関するファイルをすべてファイルサーバーに保存するケースも珍しくはない。
だが、ファイルサーバーの能力は有限だ。利用者が増えれば増えるほど、ファイル転送速度をはじめとするパフォーマンスは著しく落ちてしまう。業務用ファイルサーバーと異なり、PCやNASで構成したファイルサーバーはスケーラビリティ(拡張性)に難があるため、業務内容や利用者数に合わせたスケールアウトはむずかしい。また、経年劣化するHDDを使い続けることもリスクを抱えることとなる。
他方で一般的なファイルサーバーでは、セキュリティ面の不安が残る。たとえばWindows OSを用いたファイルサーバーの場合、SMB(Server Message Block)プロトコルでファイル転送を行うものの、2017年5月にはSMB v1の脆弱性を狙ったランサムウェア「WannaCry(ワナクライ)」が世界中を震撼させたのは記憶に新しい。他方でLinuxベースのNASはSMBプロトコルを用いるOSS(オープンソースソフトウェア)のSambaを実装するが、メンテナンスパッチの提供を終了したNASの場合、SMB v1が有効のままではランサムウェアの踏み台になりかねないのである。
このように古いPCやNASは、パフォーマンス面とセキュリティ面の両方から長く使い続けるメリットは(コスト面に目をつぶれば)皆無といえるだろう。セキュリティインシデントは企業の信用性を著しく低下させ、パフォーマンスダウンは従業員のモチベーションダウンにつながる。だからこそ予算権限を持つシステム管理者や企業の意思決定者には、ファイルサーバーのリプレースを強く推奨したい。
「MousePro-SV230ES」の性能を測定してみた
「MousePro-SV230ES」は2017年10月31日にリリースしたばかりの小型ビジネスサーバーだ。SOHO/SMB環境でも安価に利用できるWindows Server 2016 EssentialsをOSとしてプリインストールし、ファイルサーバーはもちろんリモートアクセスや業務アプリケーションの集約など、業務改善を実現する。搭載プロセッサーやメモリ容量によって価格は異なるが、エントリーモデルは12万4,800円(税別)から導入できるため、予算が厳しい企業でも容易に手が届くだろう。
詳しい製品仕様や特徴は[公式サイト]をご覧いただくとして、まずはWindows Server 2016 Essentialsの概要を簡単に紹介したい。Windows Server 2016というOSは利用者数/利用デバイス数や機能に応じたStandardおよびDatacenterエディションを用意しているが、Essentialsエディションは25ユーザー/50デバイス以下のSMB向け環境に最適化したエディションだ。
さらにEssentialsはStandardおよびDatacenterエディションと異なり、CAL(クライアントアクセスライセンス)を必要としないため、追加予算やシステム管理負担も少ない。サーバー管理を担うIT専任者を用意できないSOHO/SMBは本来の業務に注力できるはずだ。
「MousePro-SV230ES」 |
さて、Windows Server 2016 Essentials搭載モデルは4種類を用意しているが、今回はスタンダードモデルとなる「MousePro-SV230ESB」を使用したベンチマークを実施しよう。比較対象となるのは、2008年に発売したLinux搭載の某社製NAS。こちらにWestern Digital Red×2(6TB/SATA 6Gb/5400RPM)を搭載し、RAID 1で運用している。ちなみにCPUはMarvell製1.2GHz、メモリは512MB。かろうじてギガビットイーサネットに対応する。
まずはWindows 10をインストールしたクライアントPC(Intel Core i7-6700 3.4GHz)からギガビットハブ経由でイーサネット接続したMousePro-SV230ESBに対して、MB/秒でストレージパフォーマンスを評価するベンチマーク「NAS performance tester(http://www.808.dk/?code-csharp-nas-performance)」を用いる。100MB~8GBまで8段階の異なるファイルをローカル側で生成し、サーバーに1~40回の転送速度を測定するツールだ。今回のベンチマークを実施する前に調査した結果、既定値の5回で十分な結果を得られることを確認したため、ファイルサイズは100MBと8GB、転送回数は5回で測定している。
ベンチマーク結果はご覧のとおり大きな差が生じている。同じネットワーク環境ながらも、実装するCPUやメモリといったハードウェアスペックが差として現れているのだろう。さて、ファイルサーバーの利用シーンとしては複数のユーザーが同時アクセスするシナリオを想定しなければならない。そこで今回は独自のバッチファイルを各仮想マシン(n)上でほぼ同時に実行し、クライアントとサーバー間のコピー速度を実行台数ごとにまとめて見た。具体的には約600MBのファイルをクライアントからサーバーへコピーするための所要時間をWindows PowerShellコマンドレットで5回計測し、その平均値を数値として用いている。
ご覧のとおり同時実行台数が増えるほど、所要時間が増加することはMousePro-SV230ESBも同じだが、その上昇率は緩やかだ。特に顕著なのはLinux製NASへ8台のクライアントでファイルを書き込んだ結果だ。数値的にはMousePro-SV230ESBが43.87秒に対して、Linux製NASは122.60秒。約2.8倍の開きが生じた。CPUやI/Oがボトルネックになっているのだろう。バッチファイル実行時のリソース状況を確認したのだが、Linux製NASはCPU使用率が100%に張り付くことが頻繁に合ったが、MousePro-SV230ESBは10%程度にとどまった。これはMousePro-SV230ESBがIntel XeonプロセッサーE3-1220v6を搭載し、多数の同時にアクセスにも十分対応できることを示した結果である。
重要ファイルの管理はAzure Backupの連携も推奨
MousePro-SV230ES上で動作するWindows Server 2016 Essentialsは、中堅中小企業やSOHOユーザーの課題を解決するOSである。VPN接続をサポートするリモートWebアクセスや業務アプリケーションサーバーの構築が可能だが、ビジネス案件に関わる重要なファイルを扱う場合は、社内データを一元管理するファイルサーバーや、クライアントPCのバックアップ先としてWindows Server 2016 Essentialsを活用できる。
さらに推奨したいのがクラウド連携だ。Azure Backupを使えばクラウド上にWindows Server 2016 Essentials上のファイルバックアップを簡単に作成できる。あらかじめ内蔵した統合モジュールを含んでいるため、保護対象となるファイルの取捨選択やバックアップタイミングを容易に管理できるメリットは大きい。
もちろんパブリッククラウドに対する不信感を持つ方も少なくない。だが、データは暗号化した状態で保存され、復号時に用いるパスフレーズはWindows Server 2016 Essentials側に保存されるため、情報漏えいの心配は不要だ。クラウドを避けて通るよりもデータの冗長化を優先したほうが、トラブル発生時のディザスタリカバリ(災害対策)も容易になる。最終的にはサーバー管理に割く時間を軽減し、ビジネスに集中できるだろう。
MousePro-SV230ESBを俯瞰(ふかん)してみると、ストレージ回りは標準的だが、Intel XeonによるCPU性能は十分な威力を発揮する。もっとも筐体(きょうたい)の3.5インチベイは4スロットあるため、本モデルの場合は2スロットが空いた状態になる。購入時は別途HDDを増設して、ローカルバックアップ用もしくはファイルサーバーの拡張用に用いれば、より快適なファイルサーバー環境を用意できるだろう。今あるファイルサーバーに不満をお持ちのシステム管理者や意思決定者は、MousePro-SV230ESBを選択肢のひとつに加えてほしい。
■検証製品の詳細情報
MousePro-SV230ESB
スペック
[PR]提供:マウスコンピューター