メンター・グラフィックス・ジャパン(以下メンター)は、1月16日~18日の3日間、東京ビッグサイトで開催された「第11回 オートモーティブ ワールド」に出展。電装システム設計や熱対策から車載ソフトウェア統合まで、進化を続けるクルマづくりをサポートする自動車開発向けソリューション「Mentor Automotive」の先進性を来場者に強くアピールした。

Mentor Automotiveは、メンターがEDA(Electronic Design Automation)業界で培った経験や実績を生かし、設計自動化技術、組み込みシステム、ワイヤハーネス/電装システム設計、プリント基板設計フロー、仮想化技術、システムモデリングといった開発支援技術を集約し、次世代の自動車開発をサポートする全方位型ソリューションである。

Mentor Automotiveを活用することで、高性能な電子機器を短期間かつ高コスト効率で開発することが可能になる。オートモーティブ ワールドのブースでは、車載システム設計の現状から2020年に向けた取り組み、電装システム&ワイヤハーネス統合設計/製造支援ソリューションなどが紹介された。

  • メンター・グラフィックス・ジャパンの展示ブースの様子

    メンターの展示ブースの様子

EVやAVの台頭でHMIやクラスタ、IVIが大きく変化

自動車業界を取り巻く環境は大きな転換点を迎えている。安全、安心、省エネはもちろん、電気自動車(EV)や自動運転車(AV)などの本格化により、まったく新しいユーザーエクスペリエンスが求められるようになっている。メンターで車載組み込みソフトウェア営業部 アカウントマネージャーを務める小島央氏はこうした状況について次のように語る。

メンター・グラフィックス・ジャパン 車載組み込みソフトウェア営業部 シニアアプリケーションエンジニア 小島央氏

メンター・グラフィックス・ジャパン 車載組み込みソフトウェア営業部 アカウントマネージャー小島央氏

「EVやAVが今後主流になってくると、自動車に求められるヒューマンマシンインタフェース(HMI)やクラスタ、車載インフォテイメント(IVI)が大きく変化してきます。最大の理由は情報量が大幅に増大することで、これまでのアナログメーターでは情報を表示し切れなくなるためです。そこでフル液晶のクラスタが求められます」

IVIに関しても、現在は7インチ程度の小さなモニターが搭載されているが、表示する情報量が増えてくると、情報量をより多く表示できる大型のモニターが求められるようになる。小島氏はクラスタとIVIをいかに連携するかも、今後ますます重要な取り組みの1つと話す。

「一般的にはクラスタとIVIを有線でつなぐことを考えますが、有線でつなぐと帯域幅がボトルネックになり、通信の遅延と同期の取り方が課題になります。また、たとえ通信のデータを暗号化しても、悪意があればデータを盗み取ることができ、解析されてしまうというセキュリティ上の課題もあります」(小島氏)

そこでメンターでは、クラスタとIVIの連携を1つのシステム上で実現することで、複数のデバイス間でデータを共有することを考えている。小島氏は「1つのシステム上で連携することで、複数のシステムのデータをメモリ上で共有できるため、これまでとは比較にならないほど高速な通信が可能になります」という。

  • 車載インフォテイメント(IVI)のデモ展示1
  • 車載インフォテイメント(IVI)のデモ展示2
  • 車載インフォテイメント(IVI)のデモ展示

有線であれば、ギガビットイーサネットでつないでも通信速度は1Gbpsに過ぎないが、メモリ上でデータを共有すれば1秒あたり約20GB以上の通信が可能になる。大容量のデータを高速にやり取りすることができ、しかもデータがメモリ上にあるため、物理的なアプローチではデータを盗み出すことが難しく、暗号化も不要になるというセキュリティ上のメリットもある。

さらに現在、情報は自動車の内部で完結しているが、今後は自動車内部の情報と外部の情報をつなぐ仕組みも必要になる。自動車内部のアーキテクチャはAUTOSAR(AUTomotive Open System ARchitecture)でほぼ統一されているが、外の世界とつながるアーキテクチャとしては、プロトコルやセキュリティの強みからLinuxが有効になるという。

そこで、AUTOSARとLinuxを連携させるソリューションが必要であり、Linux上でAUTOSARのアプリケーションの動作を実現する「AUTOSAR on Linux」が提供されている。小島氏はこうした次世代のソリューションが2020年~21年に向けて主流になると指摘する。

さらに小島氏はメンターの強みとして「特定のSoCベンダーや自動車関連メーカーに依存することなく、どのメーカーに対してもニュートラルな立場でソリューションを提供できることです。多くのベンダーと協力関係を築いており、発表前の製品を使った検証もいち早く行えるなど、製品の迅速な市場投入も可能です」と話す。

Capitalで電装設計の効率化とコスト削減

車両開発の要となる電気電子(EE)アーキテクチャを支える電装システムやワイヤハーネスの設計に向けては、メンターでは自動車の電装設計を「定義(Define)」「設計(Design)」「製造(Produce)」「保守整備(Maintain)」の4つの工程で考え、電装設計データを効率的に作成し、活用するための電装設計ソフトウェアである「Capitalツールスイート」を提供している。

  • Capital – 電装エンジニアリングの統合環境

定義(Define)は自動車の機能設計やEEアーキテクチャ設計など、それぞれの機能をどのECUやセンサに実装するかを定義する工程。システムごとの回路がアウトプットされ、回路図はたとえばブレーキや灯火類などのシステム回路図であり、デバイスとデバイスをつなぐ結線情報である。

設計(Design)はシステム回路から車両1台分のハーネスレイアウトのトポロジーを、1つひとつのハーネスに分割してワイヤを配線する工程である。自動車メーカーで作成されたハーネスの設計データは、サプライヤーのハーネス製造工程に引き継がれる。

製造(Produce)はワイヤをカットし、端子を取り付け、コネクターに接続するハーネスを製造する工程。

保守整備(Maintain)はディーラーの整備士が故障した自動車を修理するために参照するサービスドキュメントを作成する工程である。

Capitalツールスイートについて、同社 ストラテジックプロダクツ営業部 Capitalソリューション アプリケーションエンジニアコンサルタントの柴田大介氏は次のように話す。

メンター・グラフィックス・ジャパン ストラテジックプロダクツ営業部 Capitalソリューション アプリケーションエンジニアコンサルタント 柴田大介氏

メンター・グラフィックス・ジャパン ストラテジックプロダクツ営業部 Capitalソリューション アプリケーションエンジニアコンサルタント 柴田大介氏

「Capitalツールスイートを活用することで、EEアーキテクチャ設計におけるECUの機能実装の統廃合の検討や、ハーネスの製造において、工程ごとにどれくらいの人件費がかかるのか、どれくらいの時間がかかるのかを容易に算出することができます。これにより、電装設計における設計、検証、製造、保守のための生産性が向上し、コストを削減することができます」

また自動車メーカーが作成したシステム回路図を再利用することで、各種ドキュメントを迅速に作成することができ、正確に更新することも可能となる。設計の上流から設計データを一貫して再利用できるなど、「業界全体において大きな価値創造を支援するのが、Capitalツールスイートのコンセプトです」と柴田氏は語る。

さらに今回のオートモーティブ ワールド来場者の評価について、柴田氏は「自動車メーカーからハーネスサプライヤーまでのドキュメントを一気通貫できるツールはほかにはなく、生産性や信頼性の向上とコスト削減などが期待できる点に興味を持ってもらえました。とくにサプライチェーンの構築を見据えたCapitalのコンセプトは高く評価されました」と話している。

なおメンターは、今年5月に開催される「人とくるまのテクノロジー展2018 横浜」にも出展し、Mentor Automotiveソリューションを展示する予定だという。

メンター・グラフィックス・ジャパンのHPはこちら
http://www.mentorg.co.jp/index.html

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