2017年10月27日よりスタートした一連のセミナー・イベント「AWS Partner Network、マイナビ セミナーシリーズ AWSの進化がもたらす新たな可能性~クラウドがビジネスの未来にあたえる4つのメリットとは~」。初日の第1回:製造業向けIoT編では「IoTで変貌したモノづくりの現状と課題」というテーマのもと、アマゾン ウェブ サービス(AWS)でIoTに関わる分野の識者を招き、実践事例やソリューション活用法などに関して講演が繰り広げられた。

本記事では、当日の全5講演について、それぞれのポイントを紹介する。

シャープが取り組む“人に寄り添うIoT”ビジネス

シャープ IoT通信事業本部 IoTクラウド事業部 事業部長 白石 奈緒樹氏

基調講演に登壇したのは、シャープIoT通信事業本部 IoTクラウド事業部 事業部長の白石奈緒樹氏だ。同氏はシャープが取り組むIoT対応家電、IoTクラウドサービスとIoTプラットフォームについて紹介した。

シャープは「AI(人工知能)」と「IoT(もののインターネット)」を掛け合わせた造語「AIoT(ものの人工知能化=人に寄り添うIoT)」を提唱している。その目指すビジョンは「IoT機器を通じて人を知り、AIが最適な提案をする人が主役となるスマートライフを実現する」というもの。現在このビジョンのもと、家電機器のAIoT化・AIoTサービスの拡充・AIoTプラットフォームの提供により顧客価値を高め、スマートホーム事業を拡大する取り組みを進めている。

こうした取り組みの一環として同社は今年10月、顧客との接点となる現行のインターネット上のサービスを「COCORO+(ココロプラス)」ブランドの下に統合し新サービスを開始することを発表。AIoTクラウド関連サービスの再編と強化を図っていくとした。「COCORO+」は、家電やIT機器に「ココロ」をプラスし、単なる「道具」から「パートナー」に変えていく"人に寄り添う"サービスブランドの総称となる。

白石氏によるとその代表的なものが、世界初の“モバイル型ロボット電話”「RoBoHoN(ロボホン)」であり、AIを活用したスマートフォン向けの音声UI「emopa(エモパー)」だ。他にもシャープでは、AIoTを具現化する調理家電やテレビ、ウェアラブルデバイスなどと、それらを対話しながら活用できるクラウドサービスの組み合わせを続々と打ち出している。

「シャープの製品はIoTを駆使してさまざまなことができるようにしようと取り組んでいます。おかげさまで商品の価値を上げてお客さまに使っていただけるようになりました」(白石氏)

IoT×クラウド活用でAWSが目指す世界

アマゾン ウェブ サービス ジャパン IoT ソリューションデザインチーム パートナーソリューションアーキテクト 小梁川 貴史氏

2番目のセッションに登壇したのは、アマゾン ウェブ サービス ジャパン IoT ソリューションデザインチーム パートナーソリューションアーキテクトの小梁川貴史氏。同氏はAWSクラウドでIoTを取り組む価値とその効果について、事例を交えて紹介した。

小梁川氏によるとクラウドはIoTと非常に相性が良く、その理由の1つが従量課金にあるという。サーバーを購入すると減価償却期間は使い続けることが求められるが、クラウドであれば取り組み状況に応じてコンピューターリソースを柔軟に取捨選択できるからだ。そしてさまざまな業界における数多くのIoTユースケースを見てきた経験から、IoTに共通して求められる要件として、「モニタリング」、「モバイル」、「遠隔制御」、「予測・分析」の4つを挙げた。

こうした背景を踏まえて「AWS IoTプラットフォーム」では、さまざまなデバイスをAWSの各種サービスや他のデバイスに接続し、データと通信を保護しつつ、デバイスデータに対する処理やアクションを実行することを可能とする数々のサービスを提供している。そしてイノベーションにフォーカスしたインフラとサービスの展開により、各企業のIT人材リソースを、インフラの管理からよりイノベーティブな仕事へとシフトできるよう支援をしていくという。

「コストではなく価値を生みだすのがIoTの本質であると考えます。データを集めて価値化するというIoTの本質に向き合いながら、これからも皆さんと取り組み続けていきます」(小梁川氏)

IoTにおける、機械学習を活用した異常検知がもたらす価値

ブレインズテクノロジー 取締役 CTO 中澤 宣貴氏

3番目のセッションでは、ブレインズテクノロジー 取締役 CTOの中澤宣貴氏が、機械学習を活用した異常検知の適用シーンについて紹介した。

同社では、機械学習を活用した異常検知にフォーカスしたリアルタイム予測分析プラットフォーム「Impulse」を提供している。中澤氏によると、「Impulse」を活用することで、大量なセンサーデータに対するプラント設備の故障予兆検知や、製品完了検査における不良品検出などが可能となるという。中澤氏は、「Impulse」の導入事例を交えながら、IoT分野で異常検知が価値を提供するシーンや、機械学習活用のポイント・ノウハウについて紹介した。

データの収集・蓄積から可視化・分析、予測・異常検知までを担う「Impulse」は、新たに先端クラウド技術によりエッジでの異常検知処理や、ビジネスパートナーとの連携で200種類以上のPLCとのシームレスな接続も実現している。そしてエッジでの異常検知に用いられているのが、AWS Greengrassを含めた「AWS IoTプラットフォーム」である。

セッション後半には、予知保全、異常検知、予兆検知、不良品検出、製造条件分析それぞれについての「Impulse」の導入事例が紹介された。

「まずは、今あるデータと仮説でPoCすることから始めて見てはいかがでしょうか。もし、仮説をどうやって実践するか悩まれているようでしたら、ぜひ一度お声がけください」(中澤氏)

活況を見せる「工場のIoT化」-どのような成果が期待できるのか

日本ラッド IoTソリューション事業部 執行役員 平井 強氏

4番目のセッションに登壇したのは、日本ラッド IoTソリューション事業部 執行役員の平井強氏だ。同氏は、間違いのないIoTシステム導入やデータ活用による、設備の稼働率の改善や品質向上のための実践的な情報を事例と合わせて紹介した。

同社では、2年前にIoTソリューション事業部を発足し、AWS上で稼働するクラウドIoTプラットフォーム「Konekti Cloud」などを活用したソリューションをさまざまな領域で展開している。平井氏によると、なかでも製造現場において現在IoTがブームとなっているという。製造業におけるIoTのアプローチでは、「今まで知りえなかった情報を知る」、「情報を繋いで新たな情報を知る」、「業務改善に生かす」ことを考えなければならないが、その結果として「生産性の向上」、「品質の向上」、「コストダウン」が実現できなければ、IoTに取り組む意味がなくなってしまう。

平井氏は、3つの成果を達成するためのアプローチを示すべく、成功した複数の「工場IoT化事例」を紹介。その中では、クラウドプラットフォーム活用のポイントにも言及していった。

「当社はあらゆるニーズに対応するクラウドIoTプラットフォームを提供していきます。お客さまの目的に対し、コンセプトの提示から、何が必用で、どのようなデータを取得すべきかまで一貫してアドバイスが可能で、専門チームを配置したIoT化相談窓口も用意していますので、興味がありましたらお問い合わせください」(平井氏)

ものづくりの競争力を維持するには、現場の良さを生かすIoTの構築が不可欠

日刊工業新聞社 デジタル編集部 部長 藤元 正氏

最後の特別講演には、日刊工業新聞社 デジタル編集部 部長の藤元正氏が登壇。同氏は、「IoTで変わるものづくり・サービス・社会~「つながる工場」を超えて~」というテーマのもと、講演を行った。

「AIやロボット、ICTの進化により、今後10年で産業や社会が劇的に変化すると言われるなか、もはやIoTなしに産業の未来は語れない」と藤元氏は言う。

そうしたなか、既に国内ではIoTの取り組みが大企業はもちろんのこと、中小企業においても進んでおり、藤元氏によると低価格ツールの登場が中小企業のIoTを後押ししているという。そしてものづくり+αで付加価値をつけることで、中小企業にもチャンスが生まれることとなり、政府もまたそれを後押しする政策を進めている。

「日本のものづくりの強みは現場にあるので、競争力を維持するには、現場の良さを生かすIoTの構築が不可欠になる」(藤元氏)

ものづくりのIoT化は世界的なトレンドであり、なかでもドイツでは国を挙げて「インダストリー4.0」を推進し、IoTを基盤とする新しい産業革命を主導しようとしている。そうしたなか藤元氏は、スマートモノづくりの代表例として、国際的競争力を有する国内企業であるファナック、オムロン2社による取り組みを紹介した。

また、IoTで忘れてはならないのがサイバーセキュリティ対策である。2016年秋には、ボットネット「Mirai」による当時史上最大のDDoS攻撃が発生し、Webカメラなどセキュリティレベルの低いIoT機器が次々と攻撃を受けた。これにより米国ではインターネットがダウンするまでの事態となっている。こうした背景から、今IoTセキュリティに関するビジネスモデルも続々と生まれてきているという。

続いてGEやシーメンスなど、世界の主要な製造業のIoTプラットフォームをめぐる動向を紹介した後に藤元氏は、「ソフトウェア、AIの重要性に加え、日本が得意とするハードウェアの領域がこれからより重要になっていく」と強調。今後は、従来の産業の枠は意味をなさなくなり、製造業にもサービス業寄りのシフトが求められるとともに、中小企業であっても大きなビジネスチャンスが期待できるようになっていくとした。

そして講演の最後に藤元氏は、「待ちの姿勢ではなく、社会変革をリードする気概を持ってビジネスを進めていく姿勢が問われるだろう。そしてオープンIoTによる変革を進めるには、クラウドサービスの活用がカギとなる」と力説した。

[PR]提供:ブレインズテクノロジー、日本ラッド、アマゾン ウェブ サービス ジャパン