2017年4月、ニフティが分社化し、それまで展開していたエンタープライズ向け事業を富士通グループの富士通クラウドテクノロジーズ(以下、FJCT)が担うこととなった。同社は長年培ってきたコンシューマー向けのノウハウを活かしながら、富士通グループが得意とするシステムインテグレーション分野の強化に力を注いでいくという。その大きな柱のひとつとなるのが「ニフクラ mobile backend(※)」だ。FJCTはこのサービスを通じて今後、どのような展開を考えているのだろうか。FJCTで「ニフクラ mobile backend」のプロジェクトマネージャーを務める三嶋 英城 氏に、その詳細や展望を聞いた。

(※)11月1日に『ニフティクラウド mobile backend』から名称を変更

利用実績は50,000アプリ、25,000アカウントを突破

富士通クラウドテクノロジーズ デジタルIoTソリューション部 ニフクラ mobile backend プロジェクトマネージャー 三嶋 英城氏

「ニフクラ mobile backend」は、スマートフォンアプリ(以降、アプリ)開発者向けのmBaaS(mobile Backend as a service)として、2013年から提供されている。プッシュ通知や会員管理、データベース機能、SNS連携にO2O機能など、アプリで多用されるバックエンド機能がクラウドサービスとしてまとめて提供されるため、ユーザーは専用のサーバーを用意したり、それぞれの機能を開発したりすることなく、短期間・低コストで高品質なアプリをリリースできる。

例えば鉄道事業を中心に小売や不動産までを幅広く手がけるある企業グループでは、会員に対する情報やクーポンの配信を行うアプリのバックエンドに「ニフクラ mobile backend」を採用している。同社では、本来であればサーバー側の機能開発にかかるはずの5~6人月が不要になったという。また海外企業が提供する高額なmBaaSから「ニフクラ mobile backend」に乗り換えたある企業では、サービスの利用コストの90%削減に成功。日本語での手厚いサポートも高く評価しているという。

こうしたメリットが受け入れられ、大ヒットしたゲームのポータルアプリや、企業が提供するサービスアプリ、ニュースアプリなど「ニフクラ mobile backend」を利用して開発された国内アプリは50,000以上を数え、ユーザーアカウントは個人・法人合わせて25,000を超えた。さらに「ニフクラ mobile backend」とオムロン製のセンサーを組み合わせた「IoTトライアルキット」のような新商品も誕生するなど、活用の幅は広がっている。

システムインテグレーションでの活用強化

今後は富士通グループが得意としているシステムインテグレーションでも、「ニフクラ mobile backend」の活用を強化していきたいと、三嶋氏はいう。

「たとえば行政や自治体など、予算の制約が厳しい中でのシステム開発にはmBaaSが適していると思います。実はいま、スマートフォンを介して住民との接点を持ちたいと考えている行政機関や自治体が急増しています。その用途のひとつが予防接種の案内告知です。これまでは新聞に折り込まれる広報誌などで行われていましたが、社会のデジタル化によって、紙では案内が届かなくなりつつあり、私たちのもとにアプリ開発の相談が来ているのです。またLINEを連絡網として利用している学校からは、もう少しセキュリティの高いアプリをつくりたいという要望も寄せられています。当社の本業はクラウドサービスの提供ですが、旧ニフティとして培ってきたコンシューマーサービスや、UI、UXの設計ノウハウを活かし、富士通グループ各社と協力して、こうした領域の仕事に積極的に取り組んでいきたいと考えています」

なお「ニフクラ mobile backend」を利用したアプリ開発のパッケージ商品として、FJCTの開発パートナーであるベトナムのバイタリフィ社と共同で「アプリ開発パック」というものを提供している。バイタリフィ社が得意とするオフショア開発との組み合わせで、より安価にスピーディーな開発を実現できる。

ソーシャルログイン対応で海外進出にも意欲

「ニフクラ mobile backend」の利用にあたっては従来、@nifty IDの取得が必須だったが、分社化に伴い、TwitterやFacebook、Google+などのアカウントを利用したソーシャルログインに対応させることで、@nifty IDからの脱却が進められている。三嶋氏は「これによって国内のユーザー数が爆発的に伸びることはないかもしれませんが、他社のmBaaSからの乗り換えや、リピート利用を検討していただきやすくなったのではないでしょうか」と国内市場への期待感を示しながら、ソーシャルログインへの対応はむしろ「ニフクラ mobile backend」の海外展開を意識したものだと、同社の狙いを説明。@niftyの規約では、海外住所でIDを取得することができなかったが、ソーシャルログイン対応によってその制約が無くなったため、同サービスの市場を世界規模に広げられることになった。

「海外でmBaaSを展開する際に競合となるのはAWSやGoogle Cloud Platform(GCP)でしょう。どちらのサービスもmBaaSとしての機能はパーツとして揃っていて、ユーザーが自由に使えるようになっています。ひとつひとつのパーツが疎結合なので、柔軟性に富んだ使い方ができるのですが、相応のノウハウがなければ使いこなせないでしょう。その点『ニフクラ mobile backend』は、利用頻度の高い機能がパッケージとしてまとまっており、使い方を示したドキュメントやサンプルアプリなども充実しているので、リテラシーがそれほど高くない方にも使いやすくできています。もちろん国産クラウドとしてのサポート体制も安心できるものになっていますので、品質を含めた『使いやすさ』全般を強みとして打ち出していきたいと考えています」

まずはアジア、北米リージョンを手はじめとしたグローバル進出を検討していると、三嶋氏はいう。これが実現すれば海外展開を考えている国内企業も、現地に適したサービスやアプリの開発・運用を、地元のエンジニアに委託できるというメリットも生まれるだろう。

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蓄積したデータの有効活用も視野に

サービス開始から4年強。FJCTでは「ニフクラ mobile backend」を利用している50,000ものアプリを通じて蓄積された膨大なデータを、有効活用する方法についても検討しているという。

「これだけ多くのデータが蓄積されているプラットフォームというのは、稀有でしょう。これらのデータを上手く活用して、アプリベンダーやエンドユーザーの方々に何か還元できることがあるのではないか……と考えています。たとえばアプリのエンドユーザーを分析して、相互送客が可能であれば、それぞれのデータをベンダー間で共有したり、Cookieなしでも適切なターゲティング広告を行えるような仕組みをつくったりするといったことが考えられます。もちろんアプリ内データを無条件に利用できるものではなく、慎重な検討が必要ではありますが、こうしたアイデアを基に、モバイルアプリに関わるステークホルダー全体にメリットのある『データ流通プラットフォーム』としての展望も積極的に推進していきたいと考えています」

アプリが生活の利便性を向上させ、企業にとってはヒットアプリ、ヒットサービスを生むチャンスが豊富にある――IT社会の移ろいがいかに速くとも、この状況はしばらく続くだろう。「ニフクラ mobile backend」が、モバイル×クラウド活用の幅をさらにひろげ、より快適な社会、より大きなビジネスを生み出す原動力のひとつとなることに期待したい。

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