2017年10月19日、名古屋において製造業向けのセミナー「次世代3Dテクノロジーで変える未来のものづくり~世界で勝てる製造業への道しるべ~」が開催された。ITをはじめとしたテクノロジーの進化によって、製造業におけるビジネスプロセスは大きく変化している。急速に進むグローバル化に合わせ、これからの時代の“ものづくり”において重要となる3D製造技術について、5人の登壇者が語ってくれた。後編では、スリーディー・システムズ・ジャパン 並木隆生氏、アイコク アルファ 鈴木功一氏、プリズマット・ジャパン 小栗有志氏による講演の内容をレポートする。
最新の3Dテクノロジーから製造業の未来が見えてくる
続いての講演では、スリーディー・システムズ・ジャパンの並木隆生氏が登壇。「Making 3D Production Real」と題し、これからの時代の“ものづくり”に求められているものと、それを実現する3Dプリンティング技術の活用方法について解説した。
世界で初めて3Dプリンターの商用化に成功し、3Dプリンター用ファイルフォーマット「STL」を開発したスリーディー・システムズ・ジャパンは、1,800件以上の特許を取得しているアディティブマニュファクチャリング(積層造形)のパイオニア企業だ。同社では、3Dプリンターのサイクルが、ガードナー社が提唱する「ハイプ・サイクル」における啓蒙活動期に入り始めていると認識しているという。
“ものづくり”のニーズが「機能/価格」「大量生産」「効率化」から「機能性+デザイン」「カスタムメイド」「短いサイクルタイム」へと移り変わりつつある現在、3Dプリンティング技術の活用方法も、これらのニーズに対応するように進んでいくと並木氏。現在主流の活用方法である「試作用途(プロトタイピング)」から、射出成型や鋳造用の金型の作成に3Dプリンティングを活用して納期の短縮やコストの削減を実現したり、石膏による鋳造における中子(砂型)を3Dプリンティングで作成することで、少ないパーツで複雑な形状を構成したりできるようにする「インダイレクトマニュファクチャリング」や、顧客の要望に合わせたカスタムメイドパーツや保守パーツを必要に応じて製造できるようにする「オンデマンドマニュファクチャリング」で3Dプリンターが活用される時代になってきたという。
講演では、コンピューターが理想的なデザインを作成(ジェネレーティブデザイン)し、それを3Dプリンターで生成することで軽量化や製作工数の大幅な削減を実現するなど、最先端の3Dプリンター活用を数々の事例をもとに解説。さらに、大量の異なる製品を短期間で製造することを可能にする次世代の量産型スケーラブル3Dプリンター「Figure 4」を紹介し、これからの3Dプリンティング技術によって実現する“ものづくり”の未来の姿を見せてくれた。 「Figure 4」は、6ユニットの光造形装置を省スペース内に配置し、洗浄、乾燥、リンス(表面処理)、再硬化(紫外線照射)を行うユニットと組み合わせて構成される。このため、省スペースで高い生産性を実現し、造形装置を追加することでキャパシティを増やすことも容易だという。
「同じものを大量に作るのならば従来の射出成型で問題ありませんが、大量の異なるものをスピーディに作成したいといったこれからのニーズに対応するには、アディティブマニュファクチャリング(積層造形)の活用が効果的です」(並木氏)
このように、現代の製造業へのニーズに応えるためにはアディティブマニュファクチャリングの導入が必要となってくるが、これまでのデータの作り方はそのままに、工法だけを置き換えるのではアディティブマニュファクチャリングのメリットを十分に活用しているとはいえない。パーツ数を減らして単純化したり、設計を見直すことで軽量化を実現したりといった、表現の自由度を活かした"設計力"こそが重要となってくると並木氏は語った。
また、3Dスキャナーを活用することにより、デザイン・設計→3Dプリント→フィジカル(手作業)で修正→3Dスキャン→デザイン・設計の修正といったハイブリッドプロセスも実現。デジタルとフィジカルという相反するものを融合することで、より完成度の高い製品を効率的に作れるようになると並木氏は話す。さらに、3Dスキャナーとリバースモデリングツール「Geomagic Design X」を組み合わせることで、図面が紛失している古いパーツを復元する実用的な活用例も紹介してくれた。このほかにも、豊富なマテリアルラインナップで幅広い造形を実現する3Dプリンター「ProJet MJP 2500」や、プラスチック3Dプリンター用の積層造形工程管理ソフトウェア「3D Sprint」が紹介されるなど、アディティブマニュファクチャリングを活用したいと考えている来場者の注目を集めるセッションとなっていた。
3Dテクノロジー導入の流れを解説した2つのセッション
さらに4番目のセッションでは、アイコク アルファ株式会社の鈴木功一氏が、クラウド環境で「3DEXPERIENCEプラットフォーム」を導入する流れと、企業間のコミュニケーションをスムーズにし、開発・検討のサイクルスピードの向上や異業種連携を実現するといったメリットを解説した。
また鈴木氏は、「3DEXPERIENCEプラットフォーム」のキープロダクトといえる「CATIA Functional Generative Designer(GDE)」を使った製品形状の最適化についても紹介。従来は、最適化の実行→3Dモデリング→解析の実行をそれぞれ別のソフトで行っていた試作形状検討の流れが、GDEによって1つのメニューから実行可能となり、クラウド版「3DEXPERIENCEプラットフォーム」を通じてシームレスな製品化検討環境を実現できるという。講演では、試作製品化までの流れを「3DEXPERIENCEプラットフォーム」のダッシュボード画面やGDEのアプリケーション画面を使ってわかりやすく解説してくれた。
クラウド環境で「3DEXPERIENCEプラットフォーム」を使うことによるメリットや、GDEによるトポロジー最適化解析の活用に関しては、最後のセッションで登壇したプリズマット・ジャパン株式会社の小栗有志氏からも詳細な解説を聞くことができた。
高級特殊鋼素材の熱処理、機械加工、測定で大きな実績を誇る山一ハガネと高度なアディティブマニュファクチャリング技術を持つフランス プリズマット社の共同出資により設立されたプリズマット・ジャパンは、アディティブマニュファクチャリングの設計・製造会社。「3DEXPERIENCEプラットフォーム」やGDE、さらにスリーディー・システムズ製のメタル3Dプリンターを導入・活用することで高精度なパーツの造形、開発を実現し、航空宇宙、防衛、エネルギー、自動車、医療など、多様な分野で活躍を続けている。
講演では、同社が得意とする高級特殊鋼素材を使ったパーツ造形の流れを、参考価格も含めた実用的なデータを提示しながら詳細に解説。GDEによる形状最適化がどのように活用されているかを、豊富な事例を使って紹介してくれた。
今回のセミナーでは、IoTや3Dといったテクノロジーをどのように活用すればよいのかを、製造の現場からの目線で紹介していた。新たなエクスペリエンスを顧客にもたらす“ものづくり”を実現するための3Dテクノロジーと、製品開発情報を総合的に管理・活用できるプラットフォームの重要性を理解しておけば、グローバル化を続ける製造業界を勝ち抜くことができるだろう。
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