バックアップソフト「NetVault」やシステム管理ツールの開発元としてその名を馳せ、2012年からはデル傘下にあった米Quest Software(以下、米クエスト)が2016年、再び独立したソフトウェア企業としての道を歩みはじめた。その米クエスト本社より、2017年10月、 President & General Manager Data Protection & Endpoint Management ロニー・ウィルソン氏、 Vice President & General Manager APJ ボリス・イヴァンシック氏が、日本のパートナー企業との連携を深めることを目的として来日した。マイナビニュースでは両氏と、同社の日本法人であるクエスト・ソフトウェア(Quest Software Japan Ltd 以下、クエスト)の代表取締役社長である瀧口 昭彦氏、同じくソリューションセールスマネージャーを務めるMichael Gogos氏の4名に、新生クエストの展望について聞いた。
独立によりスピーディなビジネスが可能に
President & General Manager Data Protection & Endpoint Management |
―― ハードウェア・ベンダーのデルから分離し、ソフトウェア・ベンダーとしてのクエストに戻られたわけですが。新生クエストのビジョンや戦略について教えてください。
Wilson氏 我々のビジョンは3つの基本理念のうえに成り立っています。まず素晴らしいプロダクトをつくること、次に素晴らしいサービスを提供すること、そしてビジネスをより円滑にすること。戦略もこれらに基づいて展開していきます。デルから独立したことで、当社はよりスピード感のあるビジネスを行えるようになりました。現在は5つのビジネスユニット(データベース管理、データ保護、エンドポイントシステム管理、Microsoftプラットフォーム管理、パフォーマンス監視)を抱えています。それぞれにリーダーがいて、エンジニアリングからプロダクトマネジメント、マーケティング、サポートまでEnd to Endで監督できる体制を採ることで、何か問題があれば、すぐに対応を取れるようになっています。
基盤に依存しないシームレスなソリューションを
―― システムやアプリケーションはオンプレミスからクラウドへの移行が進んでいますが、こうした中でクエストソフトウェアではどんなビジネス展開を考えていますか?
Vice President & General Manager APJ |
Wilson氏 企業がクラウドアプリを利用する理由はコントロールのしやすさやコストなど様々です。この点に関して弊社としてはデータ保護という観点から考える必要があると思っています。クラウド利用が進んでも、どうしてもオンプレミスに置いておく必要のあるデータや、クラウドにデータを置くこと自体に懸念を持たれていたりする企業もあります。こうした状況を踏まえ、ここ数年にわたってはオンプレミス、クラウド、あるいはそのハイブリッドなど、どんな環境でもシームレスに管理できるソリューションを提供することを戦略としています。
Ivancic氏 中小規模から大規模のビジネスに至るまで、企業や組織によってデータの持ち方は様々でしょう。弊社はそのすべてにクラウド化によるメリットを提供していきたいと考えていますし、それができると自負しています。
数多くの知的財産を活かし、新製品も
―― Wilson氏から「データ保護」というキーワードが出ましたが、その分野におけるクエストの強みとは何でしょうか?
Wilson氏 ひとつは弊社が多くの知的財産を持っているということでしょう。たとえばバーチャル環境におけるバックアップを実現する「vRanger」、中小規模ビジネスでのバックアップ&リカバリには「Rapid Recovery」、さらにエンタープライズレベルのバックアップを行う「NetVault」などのプロダクトがあります。予測やモニタリングなどの技術についてもポートフォリオに入っているので、これらを使ってリッチで質の高いプロダクトを開発していくことができます。
もうひとつの強みは、弊社の製品のアーキテクチャーにあります。他社で提供しているプロダクトにも適応できますし、オンプレミス、クラウド、ハイブリッドなどの環境や規模を問わず、様々なサービスを提供できます。こうした強みを"非常に強力な技術的メッセージ"に込めて、6~9ヶ月以内には日本市場に発信したいと考えています。これによって日本のデータ保護市場は拡大することになると思います。
―― 「強力な技術的メッセージ」というのは、つまり新製品を発表されるという意味ですか?
Wilson氏 そうです。当社では何年もかけて強力な重複除外エンジン「Ocarina」を開発してきました。これをクラウドベースのサービスとしてデータ保護市場に投入していく予定です。まずは「Rapid Recovery」を管理するSaaSポータルを2017年10月3日に市場投入しました(現在は米国市場のみ)。今後は「Ocarina」や「NetVault」などもクラウド環境で管理できるようになる予定です。こうした展開で様々なニーズを拾い上げ、今後も継続的に革新を起こしていきたいと考えています。
日本人スタッフと国内パートナーの存在が強み
―― 日本市場でのビジネス展開で、特に留意している点はありますか?
クエスト・ソフトウェア |
クエスト・ソフトウェア |
瀧口氏 営業、サポートともに、日本にチームを置いて、日本人が行っている点です。外資系企業だとサポートが国外にある場合も多いようですが、クエストは電話・メール・対面のサポートすべてを日本人が行っています。
Gogos氏 100%国内のパートナー企業を通じて販売を行っているというのもひとつの特徴です。テクノロジー(製品)を売って使ってもらうだけ……という海外の市場もありますが、日本ではまず時間をかけて関係性をつくらなければなりません。ただ一旦その関係性ができれば、ビジネスを継続していけます。その点、日本国内に長くお付き合いさせていただいているパートナーがいるというのは当社の強みです。
Ivancic氏 日本市場では特にレベルの高いサポートが求められます。当社としては日本のパートナーとつくりあげた高水準なサポートを、他国で展開できるというメリットもありますね。
IoT市場も見据えるクリエイティビティ
―― 「データ保護」同様、クエストのビジネスユニットのひとつとなっている「エンドポイント管理」について聞かせてください。資産管理ソリューションとして「KACE」をグローバル展開されていますが、今後の展望などをお伺いできればと思います。
Wilson氏 日本ではまだ 導入実績はありませんが、新た にモバイルデバイスのマネジメントモジュールをポートフォリオに加えたことで、「KACE」は競合とも戦えるソリューションになっていると思います。個人的にはPCやiPhoneといったデバイスのマネジメントだけでなく、IoTの分野へも、当社のエンドポイント管理を拡張させていきたいと考えています。たとえばヘルスケアや日常生活などでも利用できるように、と構成しています。特に日本では、弊社とパートナー企業が持つテクノロジーを組み合わせることで、その可能性を探っています。また電子機器コンポーネントのサプライヤーやメーカーとOEMで協業することについても、いま検討しているところです。
―― そうした多面的で、小回りの効いた動きができるのも、独立したソフトウェア企業に戻ったメリットですね。
Wilson氏 ええ。独立して迅速な取り組みができようになっただけでなく、起業家精神に立ち戻り、いっそうクリエイティビティを発揮できるようになっていると思います。企業の成否を決めるのは「いかにクリエイティブか」ということです。クリエイティビティの増した当社なら、今後かつてないイノベーションを起こすことができるだろうと考えています。
1987年の創業から30年。大企業傘下を経験して、再び独自の路線を進みはじめた新生クエストが見せる意欲的な姿勢と、市場ニーズへの敏感で迅速な対応力に期待が集まる。「強力な技術的メッセージ」の内容については、近々日本市場に届けられるということなので、今後の同社の動向にもご注目いただきたい。
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