2017年10月18日、ソフトウェア定義型ストレージ(SDS)であるScality RINGの開発元であるスキャリティ・ジャパン(以下、スキャリティ)が、ユーザーや企業の情シス、経営企画担当者に向けたイベント「Scality SDS Day 2017 TOKYO」を開催した。当日は米本社の最高執行責任者Erwan Menard氏、CMOのPaul Turner氏ほか、国内外のユーザー企業、パートナー企業の担当者が講演や関連製品の紹介を行った。会場ロビーに設けられたパートナー企業の製品展示スペースでは、女性アテンダントがスキャリティの新製品Scality Zenko(ゼンコ;善狐、以下、Zenko)をイメージしたメイクとコスプレで来場者を出迎え、イベントを盛り上げていた。

午前中は、スキャリティのZenko(ゼンコ:善狐)Tシャツを着たアテンダントが来場者を迎えた。 ※クリックで拡大

午後になると、Zenko(ゼンコ:善狐)のキャラクターに変身し、Zenkoガールとして展示アテンドなど参加者と交流した。 ※クリックで拡大

パートナー各社が構える展示ブースエリアでは多くの参加者が情報収集を行った ※クリックで拡大

国内市場の調査会社、テクノ・システム・リサーチのシニアアナリスト 幕田 範之氏が行ったセッション「2017ストレージ戦略 国内オブジェクト・ストレージ市場調査結果」では、スキャリティがオブジェクト・ストレージの国内シェアで45%を占め、No.1の地位にあることが発表されたが、本稿ではその高い人気を裏付けるスキャリティ製品の導入メリットや、今後の方向性などが示されたセッションを中心に紹介する。

スキャリティがオブジェクト・ストレージの国内シェアで45%を占め、No.1の地位にあることが発表された(テクノ・システム・リサーチ調べ) ※クリックで拡大

講演資料の提供

「Scality SDS Day 2017 TOKYO」で行われた各講演の資料は、以下のリンクからダウンロードいただけます。

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マルチクラウドを実現するZenko

イベントは、スキャリティの代表取締役、江尾 浩昌氏の挨拶からスタートし、開催概要とアジェンダの紹介が行われた。続いて登壇した、米スキャリティ本社の最高執行責任者Erwan Menard氏は、同社の世界的な売上の15%を占める日本市場に感謝の意を示し、ステージ上で”はっぴ”を着るというパフォーマンスを見せながら、「数分前に、ガートナーが2017 Magic Quadrantを発表しました。その中の分散型ファイル&オブジェクト・ストレージ分野で、スキャリティはIBMやDell EMCといった巨人とともに、また、"リーダー"として認められました」と最新ニュースを報告。場内からは拍手がわき起こった。

スキャリティ代表取締役 江尾 浩昌氏

米スキャリティ 最高執行責任者Erwan Menard氏

Menard氏は、企業が扱うデータがPB(ペタバイト)級に膨らんでいる昨今、「好む、好まないに関わらず、実際にクラウドへの移行は進んでいます。もはや『もし(クラウドを採用したら)』ではなく、『どうやって(クラウドを採用・移行するか)』が問題になっているのです」と、クラウド社会が間近に迫っていることを念押しした。またクラウド、特にパブリッククラウドが持つ柔軟性や拡張性について説く一方で、今年発生したAWS S3のダウンのような広範に及ぶ障害への懸念についても言及した。

「ひとつのクラウドサービスで、問題がすべて解決するわけではありません。これからはデータセンターもマルチクラウドに対応するようになっていくでしょう」

複数のパブリッククラウドサービスを切り替えて利用することを実現するのが、スキャリティのマルチクラウド データコントローラー、Zenkoだ。Zenkoを利用すれば、Amazon S3 APIで様々なクラウドのオブジェクトストレージサービスに自由にアクセスできる。

「弊社がもつ、ストレージや分散システムの知識を活かして開発しました。現在はオープンソースドメインでも提供しており、既に100万ダウンロードを超えています。とはいえまだ新しい製品なので、ぜひ皆様にもご利用いただき、フィードバックをお願いしたいと思っています。スキャリティの新しい『章』を飾るZenkoにぜひご期待ください」

マルチクラウド データコントローラーであるZenkoには、オープンソース版とエンタープライズ版がある ※クリックで拡大

コスト削減に貢献するScality RING 7

米Scality CMO Paul Turner氏

つづいて米スキャリティCMO、Paul Turner氏が、7月に国内でリリースされたばかりのScality RING 7の導入効果を中心とした講演を行った。

「Scality RING7を利用すれば、ダウンタイムなくスケールの拡大、縮小を行うことが可能です。またハードを入れ替える際の移行作業時間や、そこで起こりうるエラーなどについても考えなくていい点、さらに性能や価格など、自社の都合にあわせたハードウェアを選択できることもメリットです。リバランスやアップグレード、分散、I/Oなどをすべてシステムが管理してくれるようになるため、運用も容易になります」

その証として、講演では自動車会社・ルノーの事例が紹介された。同社ではインテリジェントカープロジェクトの一環として、映像データ、センサーデータなど10PBにものぼるデータをScality RING7で扱っているが、その管理にかかる人員は1名足らず(less than one FTE)ですんでいるという。

「ガートナーのある調査では、ひとりで管理できるストレージは400TB以下とされていますが、Scality RING7ならその25倍ものストレージを管理できることになります」

さらに同氏はScality RING 7に施された、ランサムウェアや災害などに対するセキュリティ機能についても紹介し、その有用性をアピールした。

海外ユーザー企業による事例紹介では、データセンターおよびクラウドサービス事業を手がける米Rackspace社のテクニカルディレクター Dan Shain 氏が登壇した。同社では扱うデータ量の増加やコスト削減の課題を解決するために、性能・運用性・冗長性の3点で5つのSDS製品の比較テストを行い、最終的にScality RINGを採用したという。導入によって全体予算の26%を占めていた設備費は9%にまで抑えることができたという。

国内ユーザーとしては、DMM.comラボ インフラ部 配信基盤グループ チーフ 佐藤 雄一郎氏が、Scality RINGの導入事例を語った。2013年から分散ファイルシステムGlusterFSを使用していたが、構築数の増加に伴って管理工数も増えてきたことが課題となっており、その解決策として2016年にScality RINGを本格導入した。これにより新規ストレージの構築が不要になり、また既存ストレージの集約が図れ、管理工数の削減にも成功した。パフォーマンスやデータ保持の効率化などにも効果があったという。Scality RING特有の課題もあるもののメリットは大きく、同社ではScality RINGの拡張も検討している。

米Rackspace テクニカルディレクター Dan Shain 氏

DMM.comラボ インフラ部 配信基盤グループ チーフ 佐藤 雄一郎氏

Amazon S3、Azure Blobの垣根を取り払うScality Connect

スキャリティ 事業開発部長 高松 靖樹氏

また9月に米フロリダで行われたイベント「Microsoft Ignite」にあわせて発表されたばかりの新製品 Scality Connect for Microsoft Azure Blob Storage(以下、Scality Connect)が紹介された。まずスキャリティの事業開発部長である高松 靖樹氏がステージに立ち、同製品について簡潔に説明した。

「Scality Connectは、Amazon S3用に開発したアプリケーションを、Microsoft Azure Blob Storageでも活用できるようにした製品です。今後はマイクロソフト様と連携しながら、日本市場での活動を拡げていきたいと考えています」

具体的な活用事例については、マイクロソフトコーポレーション クラウド&ソリューション事業本部 Azureテクノロジースペシャリスト 川崎 庸一氏、同ハイブリッドストレージプリンシパルテクニカルスペシャリスト工藤 政彦氏が解説した。

マイクロソフトコーポレーション クラウド&ソリューション事業本部 Azureテクノロジースペシャリスト 川崎 庸一氏

「Microsoft Azure(以下、Azure)のサービスは多岐にわたっています。その中のひとつであるAzure Blob Storageは、オブジェクトストレージサービスにあたります。Scality Connectは、Amazon S3 APIからのコールを受けてAzure Blob Storage(以下、Azure Blob)にデータを書き込むトランスレーションレイヤーという位置づけです。書き込みはAzureネイティブのフォーマットで行われるので、Azureのプログラムやサービスをそのまま使うことができます」(川崎氏)

ではScality ConnectでAzure Blobを利用できるようになることで、データ活用の幅がどれほど広がるのだろうか。例えばBlobに実装された簡易ウェブサーバー機能により、保存した画像やメディアデータなどの静的データを自動的にWebに公開することが可能となる。Azure CDN(Content Delivery Network)と組み合わせれば、数クリックの操作で大規模・高速配信が実現する。

またAzure Blobへの保存・ファイル作成をトリガーとする処理を設定しておくこともできる。画像を保存したら自動でリサイズさせたり、メディアデータを自動でエンコーディングし、ストリーミング用動画に仕上げたりするなど、利用方法は様々だろう。OfficeファイルやPDF、HTMLなどの非構造化データをテキスト化し、インデックスを作成してくれるAzure Search Bob Indexerを併せて利用すれば、保存データを自動で全文検索に対応できるようにすることができる。他にも機械学習(Azure Machine Learning)、Hadoopによる分散処理(HDInsight)など、Azureの充実したサービスを利用することで、アプリ開発のコストを削減しつつ、データ活用の幅をいっそう広げることができると、川崎氏は語る。

S3 APIからAzure Blobを基盤とした様々サービスを利用できるようになる ※クリックで拡大

新機能が続々。ますます進化するAzure Blob

マイクロソフトコーポレーション クラウド&ソリューション事業本部 ハイブリッドストレージプリンシパルテクニカルスペシャリスト 工藤 政彦氏

川崎氏につづき、工藤氏からは「Microsoft Ignite」で発表されたAzure Blobの新機能が説明された。それによればAzure Blobには今後、データの改ざんを防ぐイミュータブルストレージ(WORM)、アーカイブストレージの新設、そしてホット層・クール層・アーカイブ層でのデータ移動を容易にするブロブレベルの階層化、ストレージアカウントの制限拡大(500TBから5PBへ)、削除してしまったデータの復元を可能にする「Soft Delete」、セキュリティ向上のための認証機能(AAD・OAuth・RBAC)などの実装が予定されているとのことだ。

「Amazon S3 APIで資産をお持ちのお客様の中には、Azure Blobを使ってみたいが、APIを書き換える煩わしさを考えて躊躇されている方もいらっしゃるかと思います。しかしScality Connectを使えばそういう資産を活用でき、かつAzure Blobの機能を十二分に味わえます」(工藤氏)

―― 途中、会場を3つに分けて行われた全16のセッションでは、ここまで紹介した以外にも、日本ヒューレット・パッカードやブロードバンドタワー、メラノックステクノロジーズジャパン、華為技術日本といったパートナー企業が講演。またサーバーソリューション、バックアップソリューションをテーマとしたパネルディスカッションも展開されるなど、多彩な形式での情報発信が行われた。同イベントは、16時30分をもって盛況のうちに幕を閉じたが、その後開催されたカクテルパーティーも多くの参加者でにぎわいを見せていた。

「来年にはScality RING 8のリリースも予定しており、日本でも市場の拡大に努めていきます。次のイベントはもっと大きなものにできるでしょう。私も楽しみです」(Menard氏)

セッション後のカクテルパーティーでは、多くの参加者が親交を深めた ※クリックで拡大

講演資料の提供

「Scality SDS Day 2017 TOKYO」で行われた各講演の資料は、以下のリンクからダウンロードいただけます。

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