駅や自治体の庁舎などで、以下の写真のような案内地図を目にしたことがある方は多いだろう。周辺の地図と、地図のまわりには地元企業などの広告が掲示されている。総合広告代理店である「表示灯」では、このような地図広告をナビタと呼び、日本全国に設置している。
このナビタの広告契約から制作、進行管理、請求までの工程管理には、FileMakerプラットフォームとiPadが利用されている。FileMakerは、アプリの開発経験やITスキルがなくてもビジネスに最適なカスタム App(カスタムアプリケーション)を作成できる開発ツールで、実行環境も備わっているソフトウェアだ。
受注から納品までを一貫して管理
全国に約100人いる営業担当者は、iPadを持って営業先を回り、広告枠の営業をしている。まず、営業担当者が受注するとiPad上のカスタム Appに情報を入力し、紙の契約書をiPadのカメラで撮影、カスタム Appに保存する。そして本社にあるオペレーションセンターのスタッフが、契約書の写真を見ながら受注内容を基幹システムに入力。そのデータは基幹システムとのODBC接続でFileMakerに自動インポートされるといった流れだ。
制作依頼時は広告主からの細かいレイアウト指示を手書きで書き込み、指示を出すことが多い。そのため、営業担当者は受注内容をプリントアウトして手書きで指示を書き込み、広告の制作を担当しているグループ企業のトー・ナビタにFAXで依頼する。これを受け、トー・ナビタは広告を制作し、制作物のPDFなどをカスタム Appに保存する。そうすると、営業担当者に作成完了と実際の広告原稿がメールで通知される仕組みになっている。
校正時には、原稿データを使って営業担当者と顧客が内容を確認し、修正の必要があればカスタム App上やFAXでトー・ナビタとやりとりして完成となる。完成した広告データもカスタムApp上で保存されるので、制作実績のライブラリにもなる。また、一連のデータをもとに請求業務や営業実績を集計することも可能だ。
カスタム Appは社内で作成、iPadにより業務全体を大幅に改善
表示灯ではこのほかにも、約20種類のカスタム Appが使われている。たとえば新人の営業担当者が営業活動を記録し、分析や上司からのフィードバックに役立てる営業日報がある。また、同社では駅や空港の案内サインも手がけているが、施設内の全てのサインの場所、内容、現場の写真などをカスタムAppに記録している。一施設の案件につき制作するサインの数は百から数千にのぼることもある。各サインの制作スケジュール管理にもカスタム Appを利用している。これらの膨大な情報を管理する必要があることから、今やカスタムAppは同社のビジネスになくてはならない存在だ。
これらのカスタム Appの作成をほぼ一手に引き受けてきたのが、同社 管理本部 情報システム部 部長の久木浩之氏だ。20年ほど前に地図の画像データ管理にFileMakerを使い始め、制作管理から顧客管理などにも広げていった。営業担当者がカスタムAppをiPadで使うようになって、業務全体が大幅に改善されたという。
「以前は、営業担当者が会社に戻ってから契約内容を基幹システムに入力していました。入力ミスなどがあると見直しや修正にも時間がかかりましたが、今はこれをオペレーションセンターに任せられます。また、営業担当者のITスキルには個人差がありますが、iPadのカスタム Appでは入力操作をできるだけ選択形式にしているので、個々のITスキルが影響することは少ないです。以前に比べてミスによる手戻りが激減しました」(久木氏)
「業務時間の短縮」、「タイムリーな顧客対応」、「情報共有と進行管理」が利点
カスタム Appを毎日使う社員は、どのように感じているのだろうか。
同社 シティビジネス営業部 部長の佐合克典氏は、「営業担当者は、営業活動にできるだけ時間をかけたいと考えています。カスタム Appを使う前はペーパーワークなどの管理業務に時間をとられていましたが、今は移動中などのちょっとした空き時間にもiPadで契約内容を入力できます。制作物ができるとメールで通知され、すぐお客様に校正用として送ることもできます。以前は会社に戻らないとお客様にメールが送れませんでしたし、営業終了後の遅い時間にお客様にフォローの電話をかけるのも難しかったのですが、外出先でこのようなやりとりができるようになり、進行がスピーディーでお客様にも好評です」と語る。
また、カスタム Appに蓄積されたこれまでの制作実績を顧客や見込み顧客にiPadで見せられることが契約獲得を後押ししているほか、名刺管理のカスタム Appは外出先でのお客様情報の把握に役に立っているという。
広告制作を担当しているトー・ナビタの主任 森下知憲氏は、「進行状況をリアルタイムで管理、共有できるので、進行管理が非常にスムーズです。必要な情報がカスタム Appに一元化されていて、これを見ればすべてわかるのも便利です」と利点を強調する。
久木氏は、「段階ごとに進行状況をカスタム App上でチェックします。チェックしないと次の工程へ進めない作りになっています。納期内に制作物を納品するには、何がどこまで進んでいるか、どこで止まっているかがリアルタイムかつ明確に把握できることが重要です」と森下氏を補足する。
位置情報や動画との統合、自社サイトとの連携など、さらに活用の幅を広げたい
今後のカスタム Appの展望を久木氏に聞いたところ、「Google Maps APIを利用して位置情報の活用やこれまで蓄積したデータと位置情報を組み合わせた分析をできるようにしたいですね。また、デジタルサイネージの案件も増えたので、その紹介動画もカスタム Appに取り込みたいと思っています」と話す。
取材をした2017年6月現在、同社ではFileMaker 16への移行が進んでいる最中だった。この最新バージョンへのアップグレードを機に、カスタム AppにブラウザからアクセスできるFileMaker WebDirect機能を活用する予定だ。実装すれば、スタッフがWeb上で校正チェックを行える体制が整う。そのほか、FileMaker 16より新たに追加されたREST APIサポートを活用して自社のWebサイトと連携させ、常に最新の制作実績が自動的にWebに公開される仕組みを構築したいと久木氏は構想を語ってくれた。営業、制作、分析、情報共有と、FileMakerの活用はますます広がっていくだろう。
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FileMakerの総合イベント「FileMakerカンファレンス 2017」が2017年10月23日(月)~25日(水)に開催される。
セッションプログラムが公開され、参加登録受付も始まっている。今年7月にいよいよ日本でも提供開始された「FileMaker Cloud」に関するセッションも多数予定されているとのことだ。
FileMakerプラットフォームをすでに使っている方も導入検討中の方も、情報収集やスキルアップのために参加してみてはいかがだろうか。
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