水処理施設の設計・建設や運転・維持管理など、“水”に関わるあらゆるサービスをグローバルに展開する水ing(スイング)は、海外子会社の経営管理に課題を抱えていた。各社が経理業務を対象としたローカルシステムをクライアントサーバー型で運用しており、また業務系はシステム化されていなかったため、現地での業務処理が非効率的だった事に加え、本社としても経理計数、案件別の予算・採算、品目別調達価格等、重要な経営管理計数のタイムリーで正確な把握が困難だった。

そこで同社は、クラウド型 ERP「NetSuite」の導入により、水ingグループとして必要な情報をタイムリーに把握する事を通じて連結経営の深化を図る事とした。NetSuiteは、水ingの抱える課題をどのように解決したのだろうか。

“水”に関わるあらゆるサービスをグローバルに展開

水ingは1931年に水道用急速ろ過装置の国産第一号を納入以来、国内外において、暮らしや産業に欠かせない水を支えるさまざまな事業領域で、最適なソリューションを提供する総合水事業会社である。

水ing 特任参与 三ッ木宏氏

水ingの前身は、荏原エンジニアリングサービスだが、2009年に荏原グループの水関連事業を同社に統合、翌年には三菱商事と日揮が資本参加し、また2011年に「水ing株式会社」に社名変更した。その社名には、3社の「グローバル力」、「エンジニアリング力」、「マネジメント力」を結集し、“水”を通じていつまでも社会に貢献し“続ける(ing)”という企業理念が込められている。

「当社は、2,600人を超える運転技術者と、500人以上の設計・建設工事技術者を擁しています。多種多様な施設の納入と運転・維持管理を長年にわたって経験し、高度な技術とノウハウを習得した人材を保有していることが水ingの強みです。国内において、水に関連するすべてのサービスを包括的かつ高品質に提供できる事業者は私たちのほかにありません」と、水ingで特任参与を務める三ッ木宏氏は強調する。

海外子会社の経営管理にERPを導入したい

水ing 財務・経理統括 財務・経理部 連結・子会社管理課 主任 伊東岬氏

2009年の事業統合により、水ingでは多種多様な事業が展開される事となったが、それぞれの事業部で異なる基幹システムが稼動しており、水関連のサービスを包括的に提供する総合力の発揮の妨げとなっていた。そこで、全事業領域をカバーし、業務の効率化・見える化・高度化を図るべく、オンプレミス型ERPの導入を決定し、2014年10月より本稼動を開始した。

しかし、海外拠点における経営管理の問題は解決されずにいた。上海、インドネシア、ベトナムなどに子会社を持ち、各社がそれぞれの旧来型経理システムを利用していたため、海外拠点の経理経営状況を把握するのに手間がかかっていたのだ。

同社 財務・経理統括 財務・経理部 連結・子会社管理課 主任の伊東岬氏は、「海外各社の経理システムはリモートアクセスなどに対応していませんから、私たちは直接システムから数字を抽出する事が出来ず、必要な計数は個別にExcelで連絡を受けるという状況でした。人材も限られ、数字をまとめるので精一杯だったわけですが、各社の予算管理方法や経理処理方法もマチマチであり、数字に違和感があっても算出根拠を確認することが難しく、先方の会計監査で修正を受けるというトラブルも発生していました」と述べる。

水ing ITアドバイザー 坂口直樹氏

そこで同社では、基幹業務の可視化、管理情報の一元化、集計作業やレポーティングの簡略化を図るべく、各社にERPを導入する計画を進めた。しかし、各国の法制度やセキュリティポリシーの問題から、本社のERPに統合することはできない。とはいえ、子会社にオンプレミス型のERPを導入するのは、各社にかかる負荷が大きすぎる。そこでクラウド型 ERPの導入が検討されたのだという。

「クラウドサービスであれば、本社から現地法人の状況を把握することが容易です。また、サーバーや特別なミドルウェア開発を必要としないため初期投資が小さく済み、IT担当者のいない組織でも煩雑なシステム管理が不要で、インフラのメンテナンスもサービスプロバイダーに任せることができます」と、同社 海外現法汎用システム・プロジェクトマネジャーの坂口直樹氏は述べる。

カスタマイズ性に優れ、自社で運用できる「NetSuite」

さまざまな製品・サービスを検討する中で、候補として浮上してきたのがネットスイートのクラウド型ERP「NetSuite」だった。NetSuiteは、ERP/財務会計および顧客管理(CRM)、調達管理(SCM)、Eコマースなどを含む主要な業務アプリケーション機能を、単一のシステムで提供するビジネス管理ソフトウェアで、世界中の40,000を超える企業や組織で利用されている。水ingは、NetSuiteのクラウドサービスでありながらカスタマイズ性・保守性に優れている特長に注目したのだという。

水ing 情報システム統括 情報システム部 情報アプリケーション課 主任 村田昌之氏

「水ingでは、『Fコード』と呼ぶグループ共通の「プロジェクト予算コード」を用いてプロジェクトの管理、調達管理を行っています。海外拠点のシステムを本社システムに統合・連携することは困難ですが、このFコードを共通化することで、グループの一元的な経営・プロジェクト管理を実現できます。NetSuiteは、細かなカスタマイズも“器用”にこなし、Fコードのような私たち独自の要望に応えてくれるサービスだったのです」と、同社 情報システム統括 情報システム部 情報アプリケーション課 主任の村田昌之氏は述べる。

NetSuiteでは、できるかぎりユーザー自身が運用できるように、導入の早い段階からトレーニングなどによるスキルトランスファーを実践している。村田氏らも、当初こそ戸惑いはあったが、NetSuiteのトレーニング研修や手厚いサポートによって徐々に受け入れることができたという。簡単な帳票であればITベンダーに頼む必要もなく、導入期間半年で約55種もの帳票や保存検索を作成した。さらに、業務ワークフローを回すリマインダー機能や自動メール送信機能も自作するなど、カスタマイズ性を最大限に活用している。

財務・経理統括 財務・経理部 連結・子会社管理課 課長 小島武史氏

財務・経理統括 財務・経理部 連結・子会社管理課 課長の小島武史氏は、NetSuiteの“どのような業態にも適合する”という謳い文句に最初は懐疑的だったそうだ。システム選定で接したベンダーはどこも相当規模のカスタマイズを要すると判断していたからだ。しかし、導入直後の管理者向けトレーニングでNetSuiteを実際に操作し、簡単な設定でどのような業態にも適合する可能性を体感したことで疑念が払拭され、さらに、実際の導入では最小限のカスタマイズで済んだという事実に大変感心しているという。

「NetSuiteは操作性がよく、情報が見やすいので気に入っています。レポート作成程度のカスタマイズは私でも簡単にできてしまいます。今では、プロジェクトごとに数値を見える化でき、疑問点を解消しやすい環境が整っています。当社は英語ベースで展開していますが、多言語に対応していて簡単な操作で現地語に切り替えられるため、英語のできない現地担当者でも使いやすいと思います。ただ一点だけ、上海現法導入において、NetSuite単体では税務当局に会計ソフトと認められていないため、中国ERP「用友」との連携が必要でした。NetSuiteから連携システムの紹介を受け用友との連携を実現しましたが、NetSuiteと用友の両方に精通したSEの確保は大変難しかったです」(小島氏)

海外子会社のトレーニングは、プロフェッショナルトレーナーの講義やWebを活用して行った。NetSuiteの使い方だけでなく、水ingの業務内容まで含めたトレーニングであったため、スタッフの理解度が非常に高いと好評だった。

現在のところ、上海・インドネシア・ベトナムの3拠点にNetSuiteを利用したERP(愛称“WINE”)を導入しており、将来的には他の子会社や関連会社での採用も検討しているという。

「今やクラウドサービスは、運用負荷の軽減やコストの最適化などのメリットが多く、使わない理由はありません。クラウド型 ERPの“活用”という面では、スタート地点に立ったばかりで、今後、情報の一元化・情報蓄積の効果を最大限発揮できる様運用を図っていきたいと思っています。NetSuiteは今後も進化していくサービスだと感じています。現地での活用を推進して業務の効率化・高度化を進めるとともに、他のシステムや制度との連携を図り、真の連結経営を目指したいと考えています」(三ッ木氏)

[PR]提供:ネットスイート