中小企業庁の報告(2015年版 中小企業白書)によれば、近年「グローバル化の進展等を背景に、大企業と中小企業・小規模事業者との間の相互依存関係は希薄化」しているという。また、同調査では今後、「中小企業・小規模事業者は自ら市場と向き合い、需要を獲得する必要に迫られている」ことを提言している。同規模の企業間での収益差はますます拡大することが推測され、いかに自社独自の強みをもって競争力を高めるかが、中堅・中小企業における重要な経営課題になるといえよう。

そのような中、「高品質」と「短納期」を武器に、大手メーカーを中心とする多くの取引先から今もなお高い評価を得る企業に、平井精密工業株式会社がある。大阪に本社を置くエッチング加工の受託事業を展開する同社。その特徴は、「徹底した採算管理」とそれを支える「アメーバ経営」だ。社内の各組織を小集団(アメーバ)とみなし各アメーバそれぞれが採算を追求していく経営手法をとる同社では、部門ごとで異なる指標・アプローチを取りながらも、見据える先を「時間当り採算」に統一することで、競合他社にはない先の武器を生み出している。

独自の武器を生み出すためこのアメーバ経営を継続する上では、売上や製造工程、仕入れ、経費、労働時間にいたるあらゆるシステムを統合し、それを従業員すべてが常に利用できる環境が不可欠だ。平井精密工業ではこのIT基盤を整備すべく、2011年にDell EMC製品をもった仮想化環境を構築した。さらに2017年には、同じくDell EMC製品を全面採用することで、同基盤を大きく発展。アメーバ経営を今後も継続するための基盤整備に成功している。

ビジネス課題
2010年に仮想化環境の構築によりIT基盤の統合を実施した平井精密工業では、同環境上で稼働するアプリケーションとデータ量の増加に伴い、パフォーマンスの低下が深刻化していた。また、運用工数やその作業の属人化も問題となっており、ハードウェアの保守切れを契機に、性能と運用工数の削減、そして定常運用作業の標準化を目指したIT基盤の見直しを検討した
導入効果
・工程管理など多くのユーザーが利用するシステムについて、性能確保のために同時アクセスできるユーザー数を制限するといった課題が解消され、ユーザーの利便性が向上
・自動階層化を備えるDell EMC Storage SCシリーズ (Compellent)の採用やDell EMC ProSupport Plusにより運用作業がシンプルに。負荷が大きく属人化していた定常運用作業の標準化が行えた
・サーバ更新前のIT基盤構築と比較し、イニシャルコストを3分の2にまで削減。仮想化基盤への集約率向上、アプリケーションのレスポンス向上、消費電力の削減などにより、運用コストの大削削減も見込む
・これらのコストや工数を割り当てることで、新システムの開発や機能実装といった攻めのITが進められるようになった
ハードウェアとソリューション
・インテル(R) Xeon(R) プロセッサー E5-2690 v4搭載 Dell EMC PowerEdge R730
・Dell EMC Storage (Compellent) SC4020アレイ
・Dell EMC Storage (Compellent) SC220
・Dell EMC Networking S4048T-ON
・Dell EMC ProSupport Plus

統合化されたIT基盤が、「アメーバ経営」を支える

エッチング加工や機械加工を中心に、半導体から家電、PC、自動車、医療器具、人工衛星部品など幅広いメーカーの金属加工を支援する、平井精密工業株式会社。従業員約400名の中堅企業でありながら、「高品質」かつ「短納期」「高付加価値」という強みを持つ同社サービスは、京セラやパナソニック、村田製作所、トヨタなど大手メーカーを中心とする国内1200社以上の取引先から高い評価を得ている。

「高品質」かつ「短納期」「高付加価値」なサービスを提供する、平井精密工業株式会社

平井精密工業が高い評価を得る理由は、「徹底した採算管理」にある。そしてこの採算管理を支えているのが、1994年から実践している「アメーバ経営」だ。アメーバ経営とは、同社の取引先でもある京セラが開発した小集団部門別の経営手法。すべての営業と製造部門を小集団(アメーバ)に分けて会社とみなすこの手法では、それぞれのアメーバに経営者(リーダー)を立て、売上、製造工程、仕入れ、経費、労働時間を管理して採算を追求していく。平井精密工業株式会社 総務部 次長の大村元章氏は、同社におけるアメーバ経営の取り組みについて、次のように説明する。

「アメーバ経営の導入から23年が経過しますが、これは既に当社事業の根幹としてなくてはならないものになりました。各アメーバが『収益確保』を目指すわけですが、たとえば営業部門の場合は継続的な受注獲得が求められます。そこでは顧客ニーズに合わせた技術提案及び効率的な営業活動が不可欠で、顧客から高い満足度が得られなければそれは実現できません。一方の製造部門は、一定の労働時間内に対応できる製造量を増やさねばなりませんので、製造プロセスの合理化やシンプル化などが求められます。これらはまさに、顧客が求める『高品質』と『短納期』に直結するのです。当社におけるアメーバ経営は、部門ごとで異なる指標・アプローチながら、その実は『徹底した採算管理』という統一の企業価値を創出すべく、企業全体としてそこへ取り組んでいるといえるでしょう」(大村氏)

平井精密工業株式会社 総務部 次長 大村 元章氏

この「徹底した採算管理」を継続する上で、社内システム、およびそれを管理する部門が大きな役割を担うことは言うまでもない。平井精密工業では基本的に、ITシステムをすべて内製化している。また、本社システムと、熊本・岐阜に構える工場のシステムについては、総務部が一貫して運用を担当する体制を採っている。平井精密工業株式会社 総務部でシステム専任を務める出口雅之氏は、同社におけるITシステムの重要性についてこう説明する。

「各アメーバが業務を遂行するうえでは、情報を効率よく把握し、それを適切な形でアメーバ間とそのメンバーへ伝達していくことが必要です。そこでは、現場に適したアプリケーションの存在が不可欠といえるでしょう。そのため、当社では生産管理システム、工程管理システム、在庫管理システム、販売管理システム、購買システムなど、事業に関わるほとんどのシステムを内製化しています。また、それぞれがサイロ化せずシームレスに連携できるよう、IT基盤の統合も実施しています」(出口氏)

仮想化基盤のデータ量とアプリケーション増加に伴うパフォーマンスの低下が深刻化

平井精密工業株式会社 総務部 システム専任 出口 雅之氏

出口氏が語るとおり、平井精密工業は2010年に、サーバ仮想化によるIT基盤の統合を開始実施している。この取り組みは、異種アプリケーションの統合とシステム管理の工数削減を目的に行われた。

仮想化よりも以前、同社で稼動するシステムはリモートデスクトップサーバ、デスクトップ型アプリケーションが混在しており、そこでは主にユーザービリティの面で課題があった。また、システムの運用管理は、大阪の本社、熊本と岐阜の工場のそれぞれで個別に行われており、拠点間のシステムを連携するにもその工数は膨大だったという。また、運用ポリシーの統制が取りにくい点も大きな課題として存在した。こうした課題を解消すべく、同社ではVMwareを使用したサーバ仮想化環境を工場毎に構築。リモートデスクトップ環境、各アプリケーションとそこで利用するデータベースをこの仮想化環境上へ集約した。さらに2014年には、大阪、熊本や岐阜のシステムをデータセンターへ集約し、全拠点のシステムが統合管理できるようなった。

この取り組みにおいては、サーバにインテル(R) Xeon(R) プロセッサーを搭載した「Dell EMC PowerEdge」、ストレージ基盤に「Dell EMC Storage PSシリーズ(EqualLogic)」と、Dell EMC製品を全面採用しているが、この理由について出口氏は、「先行して構築した熊本工場の仮想化環境には、サーバ、ストレージともに他社製品を利用していました。仮想サーバであれば何か障害などが発生しても物理環境ほどクリティカルな問題にはならないだろうと考え、コスト面も考慮してそこでは有償サポートは利用しなかったのですが、稼動性を維持するためには深夜や土日に作業することが多かったのが実情でした。いかに現場に適したシステムといえど、その稼動が不安定であれば意味を成しません。それを担保するためには、やはり有償であっても24時間365日体制のサポートを採用すべきだと考えたのです。大阪、岐阜の仮想化環境を構築する際にDell EMCより受けた提案は、先に導入していた他社環境よりも低コストで、且つこうしたサポートも付帯したものでした。もともと物理サーバ環境でPowerEdge 2950などを利用してきたこともあり、慣れた環境、密なサポートのもとで運用管理することがシステムの安定提供に有効だと考え、採用を決定しました」と説明する。

2010年からの取り組みにより、生産や在庫、工程管理といったシステムのユーザービリティが向上すると同時に、それらシステムの稼働率も改善した。しかし、仮想化環境の稼働から5年を経て、新たな課題が生じたという。データ量の増加やアプリケーションの集約が進むにつれて、HDDベースのストレージと既存のネットワーク環境をボトルネックに、パフォーマンスが低下しだしたのである。

当時の状況について大村氏は、「IT基盤整備に併せて、業務PCの3分2程をシンクライアント化し、リモートデスクトップ環境を展開しましたが、早朝などディスクアクセスが集中するタイミングではパフォーマンスが低下し、特にファイルサーバについては深刻な状況でした。また、データ量が増えるにつれ、工程管理など多くのユーザーが利用するシステムについても性能が低下してきました。性能確保のためには同時アクセスできるユーザー数を制限せざるをえず、結果、ユーザーが利用したい時にそれができないという状況も引き起こしていたのです」と説明する。また、運用工数やその作業の属人化も問題となっていた。当時のIT基盤には1GbEのネットワークを採用していたが、帯域確保のためにケーブルの量が膨大となり、物理的な配線作業に要する工数も膨れ上がっていた。こうした作業は専門の知識を必要とし、属人的な要素も高い。そのため、IT担当者に万が一の事態が発生した場合、定常運用自体が行えなくなるリスクも内包することとなる。

平井精密工業は、性能と運用工数の削減、そして定常運用作業の標準化を実現すべく、2017年1月に控えた既存基盤の保守切れに向けて2016年5月からシステム基盤の見直しを計画。長期間の利用に耐えうる環境を整備すべく、基盤構成だけでなく、運用保守対応も含む総合的な観点から検討を開始した。

Dell EMCの提案は、性能とコスト、サポートのいずれもが高水準で、総合評価が最も高かった

次代のIT基盤の再構築を目指したこの取り組みは、2011年の基盤整備では果たせなかった「長期間の利用に耐えうる」という点を重視し、提供を開始したWindows Server 2016をOSに採用する事を決定。それ以外は既存環境の構成に関わらず、一から検討しなおすという方針のもと、Dell EMCを含む複数ベンダーへ提案を依頼。「コストパフォーマンス」「管理性とその標準化」「サポート」の3点を主な比較項目とし、各項目内で細かく設定した要件について各社の提案を点数化することで、検討が進められた。その結果、各社から提示された案の中で最も総合得点が高かったのが、Dell EMCの提案だったという。

2010~2011年に構築した環境では合計8台のホスト用サーバが稼動していた。そのような中、Dell EMCでは、ホスト用サーバにインテル(R) Xeon(R) プロセッサー E5-2690 v4を搭載するDell EMC PowerEdge R730を4台採用した構成を提案。ハイブリッドストレージのDell EMC Storage (Compellent)SC4020アレイと自動階層化機能を備えるDell EMC Storage(Compellent)SC220、10GbEスイッチの Dell EMC Networking S4048-ONを組み込むことで、基盤全体の物理台数を減らしながら性能を向上させるというものだった。

Dell EMCが提案したシステム構成。ブロック単位での自動階層化を実現するDell EMC Storage SCシリーズ(Compellent)により、利用頻度に応じ最適な領域へデータが格納される。ネットワークを10GbE化し、ホスト間については40 GbEで接続することで、性能面のボトルネックも解消。

出口氏は同構成について、「Dell EMC Storage SCシリーズ(Compellent)を使用すれば、SSDとHDDの使用領域を自動で最適化できます。40GbE、10GbE通信にも対応することで、パフォーマンスを大きく高めるとともに、運用管理もよりシンプル化できると期待しました。また、こうした大きなメリットを持つ環境が、単一ベンダーの製品のみで構築できる点もポイントでした」と評価する。また、Dell EMCの提案に含まれていたサポートサービス「Dell EMC ProSupport Plus」についても高く評価したと、出口氏はつづける。

「複数ベンダーの機器を導入した場合、万が一の障害時、原因を特定した上でそのベンダーへ問い合わせる必要があり、そこには大きなリードタイムが発生します。Dell EMC ProSupport Plusでは有事の際、障害の特定も含めてDell EMCの専任担当者が即座に対応してくれます。ストレージやホストの監視ツールも利便性が高く、『SupportAssist』によりDell EMC側でもシステム稼動の監視とアラート出しを行ってくれます。これらは、少人数での運用管理に適していただけでなく、今後、可能な限り属人性を排除し、定常運用の標準化を目指していく上で非常に有効だと感じました」(出口氏)

一方の大村氏は、比較項目の1つであるコストメリットについて、「間接部門である当部がアメーバ経営に貢献するには、できるだけコストをかけないこと、そして投資によって確実に直接部門のビジネスへ貢献することが重要となります。Dell EMCの提案は、性能や安定稼動という点ももちろんですが、物理ハードウェアの数が減少することによるコストの削減も期待できました。ビジネス貢献とコスト削減の両面でメリットが得られるのは、大きな魅力だと考えています」と語る。

平井精密工業では2016年12月、次代のシステム基盤についてもDell EMC製品に一本化した構成を採用する事で正式決定。長期間の利用に耐えうるという視点から、7年間もの長期の保守契約をDell EMCと締結し、2017年3月よりあらたなIT基盤を稼動開始している。

同構成の導入効果について、大村氏は「イニシャルコストは更新前の構成と比較すると3分の2程にまで抑えられています。また、仮想化基盤への集約率向上、アプリケーションのレスポンス向上、消費電力の削減などを要因に、運用コストも大きく削減できる見込みです。サーバ台数は8台から4台に減少しましたが、メモリ量は1.5倍に増加しています。1台のホストあたり80台のゲストOSを稼働させる予定ですが、7年後を見据えても十分に余裕をもった運用ができると考えています」と語る。

Dell EMCの製品で構築したIT基盤のもと、アメーバ経営を支援していく

ところで、インテル(R) Xeon(R) プロセッサー搭載のDell EMC Storage SCシリーズ(Compellent)の導入と運用は平井精密工業にとって初の試みだ。この点について出口氏は、「Dell EMC Storage SCシリーズ(Compellent)の初期設定は、Dell EMCより密にサポートいただくことで問題なく進めることができました。また、稼動開始と同時期にIT部門へあらたなスタッフが加入しましたが、基盤刷新の効果もあってこれまでのように定常運用の作業に忙殺されることがなくなったため、今後この人員とともに、システムの改善や新機能の実装といった攻めのITに向けた取り組みも進められるようになりました」と笑顔で語ってくれた。

企業におけるITシステムへの依存度は、年々高まっている。ユーザーにとってITは、「ストレス無く動作してあたり前」という認識になりつつあるといえるだろう。しかし、中堅・中小企業の中には「ひとり情シス」と呼ばれるような限られた人員でITを管理せねばならない企業が少なくない。だからこそ、IT部門においてはシステムの安定稼動をいかに省リソースで担保するかが重要事項となる。その意味で、同社が実施したこの取り組みは、アメーバ経営を今後も継続していくための基盤整備をもたらしたといえる。既存の業務システムで存在していたユーザービリティ、運用上に存在していた工数負荷といった課題は解消された。それを受け、大村氏は今後、各アメーバがいっそう高い収益確保を目指せるよう、新システムの開発や機能拡張を進めていきたいと語る。

「社内向けのシステムについては概ね整備できているため、今後は社外向けシステムの強化にも注力していきたいですね。たとえば近年、電子取引が一般化したことに伴い、帳票の電子化、また顧客の帳票フォーマットへの対応を求められることが増えています。こういった要望への対応は、当社のサービス価値や競争力の向上につながります。積極的に実装していくことで、ITの側面から今後もアメーバ経営を支援していきたいと考えています」(大村氏)

「高品質」と「短納品」を武器に、大手メーカーを中心に採用実績を増やし続ける平井精密工業。同社の事業を支えるアメーバ経営は、Dell EMCの製品で構築したIT基盤の支援により、今後いっそうの発展が期待される。

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