2016年11月17日から6日間にわたり東京国際展示場にて開催された「第28回 日本国際工作機械見本市(JIMTOF2016)」。2年に1度開催される同展示会は、規模・来場者数ともに国内最大級の国際見本市である。
本記事では、JIMTOF2016の注目ブースとして、日本初登場となる最新のセミドライ加工プロセス製品の展示を行った出石を紹介する。
「新しい技術を日本に広げるため」の展示を実施
切削加工では、潤滑性と工具寿命の維持、回転などによって生じる熱の冷却を目的としてクーラント(切削油)を使用するのが一般的である。
切削油には、潤滑作用を主目的とした不水溶性クーラントと、冷却作用を主目的とした水で油を希釈する水溶性クーラントの種類がある。しかし、こうした切削油は、大量の油や水を使用するため、コストや、排水対策などの問題がつきまとう。そのため現場には、使用に対する抵抗が少なからずあった。
一方、クーラントを使わないドライ加工では、切削面に生じる抵抗や熱などにより作業効率は落ちてしまう。そして何より工具の寿命が短くなり、逆にコストが増えることも考えられる。
そこで登場したものが、極微量潤滑システムによる切削加工、いわゆるセミドライ加工である。セミドライ加工はMQL(Minimum Quantity Lubrication)加工とも呼ばれており、環境意識の高まりとともに、徐々に現場へと浸透していった。
ただ需要が広がるにつれて、「工具や被削材を選ぶので使いにくい」などの課題や、さらなる環境規制の強化によって「クーラントの利用そのものをなくしたい」という要望なども増えていった。
そもそも、MQL加工は、今から15年前の2000年前後に登場した技術。当然、当時と比べれば社会情勢や加工現場の状況も大きく変化している。新たな課題や要望が生まれるのも、不思議ではない。
出石 東京営業担当の平井氏は、「これまではヨーロッパなどで主流になった新しい技術が、5年くらい経ってようやく日本にやってくるという流れでした。世界と戦うべき日本の製造業が、これでいいはずがありません。変化に対応するためには業界全体として新しい技術を積極的に受け入れていくべきです。そのためにも、私たちは新しい技術を紹介し続けていかなくてはいけません。その意志の表れが、今回のJIMTOFで展示している『全く新しいセミドライ加工法』を採用したATSと呼ばれる技術です」と語る。
「セミ」ではなく「ほぼドライ」加工
平井氏が「まったく新しいセミドライ加工」と語るATS(Aerosol Dry Lubrication)とはどのようなものか。それを解説する前に、まずは以下の動画をご覧いただきたい。なお、この動画はJIMTOFの出石ブースで流されていた映像のダイジェストである。
一見、切削面には何も散布されていない「ドライ加工」のように見える。しかし目には見えないが、しっかりとクーラントは散布されているのだ。
「ATSが散布するクーラントの粒子は0.1~0.5μm。これは一般的なMQLの十分の一以下です。粒子が細かいため、複雑な切削面であっても全体に行き渡り、多種多様な工具や被削材に対応します」(平井氏)
小さな粒子の切削油は加工熱によって蒸発し、ほとんど加工面には残らない。また蒸発することで冷却効果も向上する。動画を見てお分かりのように、加工直後であっても素手で触れられるほどである。また、ほぼドライであるがゆえに、切屑の排出も非常にスムーズ。環境規制の厳しいヨーロッパでも環境負荷低減のために水溶性クーラントからATSに切り替えることが推進されており、生産性の向上やコスト削減にもつながると見込まれているとのことだ。
「ATSはドイツのRother Technologie社が開発した技術です。弊社が契約を締結したのは今年(2016年)の5月ですが、そこからマニュアルやカタログの作成や、現場検証などを行う必要があったので、今回の展示もギリギリなんとか間に合ったという感じです(笑)」(平井氏)
コスト削減ができる環境対策製品
近年、EUでは非常に厳しい環境規制が課せられており、さらに強化される方向へと向かっている。もし国際的市場を相手にビジネスをするのであれば、当然ながら日本の企業もそれらに対応しなくてはならない。
「環境対策にはコストがかかると思われがちです。確かに対策の方法次第では、大きな経費がかかるものもあるでしょう。ですが、少なくとも切削加工の分野については、クーラントの量を減らせば、環境対策とコスト削減が両立できます。ATSは、まさにそれが実現できる技術なのです」(平井氏)
出石が販売するRother Technologie社の ATS「Aerosol Masterシリーズ」は、様々な加工機や工具で使用可能だ。取り付けも1時間ほどで完了する。手軽さもあり、顧客から「実際に工作機械に取り付けて加工をするトライをしたい」といった依頼が増えているという。
「最初はみなさん“ほんとうにできるの”と半信半疑なんですが、トライが終わった後だと“ほんとうだったんですね”という感想をいただくんですよ」(平井氏)
トレーサビリティを実現する自動刻印機の展示
今回、出石のブースでは「Aerosol Masterシリーズ」の他に、フランスのテクノマーク社の電磁式ドットマーキング(自動刻印機)が展示され、マーキングのデモが行われていた。
近年は製造者責任を果たすためとして、細かな部品に対しても仕入れ先や製造元などを記録し、トレーサビリティを実現することが求められている。テクノマーク社の自動刻印機は、 鋼、ステンレス、アルミ、真鍮、銅、プラスチック、木材等、多種多様な素材に鮮明な刻印が可能である。必要とする設備は100Vの電源のみで、卓上におけるコンパクトなサイズ設計が特徴だ。また、耐久性にも優れ、出石にとってのロングセラー製品となっている。ユーザーの中には、24時間フル稼働で10年近く使い続けているところもあるいという。
「私たちは商社として、常にお客様にとってベストな提案をしていきたいと考えています。最先端の技術はもちろんですが、ベストだと思えば古い技術や製品であってもオススメしていくつもりです。商社というのは、ある意味では何でも屋です。どんなお悩みでも、お気軽に相談してください」(平井氏)
1910年の創業以来、「日本のものづくり」を支える現場に、数々の製品を提供してきた出石。現在、その数は8万点以上にものぼる。なお、同社のホームページでは、それら製品についての実演動画が数多くアップされている。
百聞は一見にしかず。興味をお持ちの方、まずはそれらの動画をご覧になると良いだろう。
(マイナビニュース広告企画:提供 出石)
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