10月4日、OKIデータ・インフォテックの東京ショールームにて、同社新商品の発表会が行われた。発表会で紹介された新商品は、同日発表した大判LED複合機・プリンター「Teriostar(テリオスター)」6機種、及び8月29日に発表した大判インクジェットプリンター「ColorPainter」1機種の計7機種。約1年前にOKIデータ・インフォテックが設立されてから初となる新商品だ。この1年、同社はどのような展望をもって事業を進めてきたのだろうか。同社の代表取締役社長、東 潤一郎氏に直接話を伺った。
会社設立後1年間の取り組みについて
OKIデータ・インフォテックは、昨年10月、セイコーインスツル(SII)が子会社であるセイコーアイ・インフォテック(SIIT)がグローバルに展開していた大判プリンター事業を、OKIデータに譲渡したことにより誕生した新会社だ。東氏は、「OKIデータ・インフォテック設立から1年が経ち、営業面、開発面、生産面の3つにおいてOKIデータとの融合が進み始めています」と語る。
まず、OKIデータ・インフォテックが取り組んできたことの1つが、営業面の強化だ。同社は国内及び海外においてCAD図面印刷用途の大判LED複合機・プリンターや、サイネージ市場向けの大判インクジェットプリンターを販売している。国内については、OKIデータとの営業拠点の統合を進めており、互いに連携して新たな販路の拡大を進めるなど、営業活動での相乗効果が出始めている。
一方、OKIデータ・インフォテックは海外の販売についても強化を図っている。 OKIデータは海外での売上が7割ほどを占め、欧米やアジアに多くの販路を持っている。このOKIデータの販路を利用して販売網とサポートの拡大に取り組んできたのが、ここ1年のOKIデータ・インフォテックの動きだ。販売面の体制は着実に整ってきており、下期以降の販売拡大に期待を寄せる。
開発環境の整備とOKIグループ間での連携
次に、開発面の施策について東社長に聞いた。OKIデータ・インフォテックは千葉県松戸市に開発拠点を持ち、50名ほどの開発者が大判LED複合機・プリンターや大判インクジェットプリンターの設計・開発を行っている。しかし、この人員は開発リソースとして決して多いとはいえない。一方、OKIデータは群馬県高崎市に開発拠点を持ち、数百名規模の環境を整えている。このOKIデータのリソースとノウハウの共有が、OKIデータ・インフォテックの開発面の強化につながっているという。
東氏は、この連携によって「コスト競争が厳しいオフィス用プリンターのノウハウを大判プリンターの開発に活かし、コストダウンや開発納期の短縮を行っていきたい」と述べる。
さらに、生産面でもOKIデータとの融合が進んでいる。同社では、もともと国内・中国(或いは、国内外)のEMSメーカーが製造していた。しかし、この生産体制も大きな変革を迎えているという。インクは5月から福島県の生産拠点「OKIデータMES」で作られており、また大判LED複合機・プリンターや大判インクジェットプリンターは、今後中国の深セン市にある「沖電気実業(深圳)有限公司」で生産する体制へと移行するそうだ。
「OKIデータ商品と同一の工場で生産することにより、コストダウンはもちろんのこと、アグレッシブな納期対応やデリバリーが可能となります。さらに、生産性や物流面での相乗効果も見込めます。」と、東氏は生産拠点移行による生産面の利点について述べる。
同社の強みを活かした大判LED複合機・プリンターと大判インクジェットプリンターの新商品投入
こうした1年間の取り組みののち、OKIデータ・インフォテックが発表したのが冒頭の新商品だ。大判LED複合機・プリンター「Teriostar(テリオスター)」は、A0対応の「LP-2060シリーズ」と「LP-1050シリーズ」、A1対応の「LP-1150シリーズ」の3シリーズ6機種をラインアップ。発表会当日の10月4日から出荷が開始された。
製造業のエンジニアを中心に支持を受ける高速・高品質の図面印刷、ユーザー自身で交換できダウンタイムを短縮できるカートリッジ方式の感光ドラム、各種画像フォーマットの読み込み、図面の確認や印刷がまとめて行えるソフトウェア「TerioStation2(テリオステーション・ツー)」など、従来からの特徴はそのままに、さらに操作性を向上した大判LED複合機・プリンターとなっている。
一方、大判インクジェットプリンターの新商品「ColorPainter E-54s」は、低臭気ソルベントインク「SXインク」を搭載した54インチ大判インクジェットプリンターだ。上位モデルですでに採用され、広色域、高発色、高濃度、高耐候性、低臭気という特長から高い評価を得ているSXインクを採用し、お手ごろな価格を実現したエントリーモデルだ。
エントリーモデルでありながら、上位モデル譲りの高機能を惜しげもなく搭載。カラー光学センサーによって往復と送り調節を自動で行う「自動印刷調整機能」、独自のアルゴリズム・マスクパターンで高画質を実現する「スマート・パス・テクノロジー4 (SP4)」、ノズル番号が自動で設定されるようになったノズル代替機能「スマート・ノズル・マッピング3 (SNM3)」などを備え、高品質印刷を可能としている。
東氏は、「会社設立後1年が経過しましたが、まずは私どものベースとなる大判LED複合機・プリンターと大判インクジェットプリンターのラインアップを、新商品でしっかりと固めたいという思いがありました」と強調する。
大判LED複合機・プリンターの軸足は今後も国内に
OKIデータとの連携により、国内のみならず海外にも広い販路を得たOKIデータ・インフォテック。高い品質を実現しているがゆえに、当然販売エリアの拡大が見込まれるだろう。
「当社の大判LED複合機・プリンターは、もともと国内のお客様にご愛顧いただいている商品です。自動車、製造、建設などに携わる国内メーカーの要望にこたえる形で進化してきました。海外でも当然このような需要はありますが、現在は販売網が弱く、特に大判LED複合機・プリンターについては海外のお客様に直接届くような販売チャネルを構築できていません。大判インクジェットプリンターならば海外でも一定の台数を販売することができますが、大判LED複合機・プリンターは今後も国内での販売がメインになるでしょう。これからも、国内のお客様の要望を聞きつつ、柔軟な対応を進めていきたいと思います」と、東氏は今後の展開について語る。
屋外看板等のサイネージ市場へ注力する理由
エントリークラスの製品でありながら、上位モデル譲りの低臭インクや高画質を備えるColorPainter E-54s。サイン・グラフィックス市場の顧客を開拓する同製品の投入の経緯について東氏はこう説明する。
「正直に言いますと、今までの製品は、エントリークラスにおいて2%ほどのシェアしかなかったのです。競合他社に対して価格・販売力・商品力といった面で劣っていたからだと考えています。今回の製品では上位機種のみに採用していたSXインクを採用しましたし、価格もかなり思い切った設定を行いました」
新商品の戦略的な価格を実現できたのは、部材1つひとつのブラッシュアップだけでなく、OKIデータとの融合による影響が大きいという。同製品では、本体、インク、保守やメンテナンスといったトータルでのビジネスを見据えて価格を設定し、大判インクジェットプリンターの商品戦略の転換につなげたのだ。
さらに東氏は、「屋外の印刷物は、雨風、日光の影響を大きく受けます。弊社の低臭気ソルベントインク「SXインク」は、こういった環境に非常に強く、抜群の耐候性を備えています。大判インクジェットプリンター市場には、多くの競合がいますが、その市場におけるOKIデータ・インフォテックの強みとは、色の鮮やかさや耐候性、速度といった面です。この強みを活かせる新商品が、このたびエントリークラスにもようやく投入できたかなと思っています」と、ColorPainter E-54sの品質への自信を語った。
OKIデータ・インフォテックの今後の事業展望
これまでのインタビュー内容のまとめとして、大判LED複合機・プリンター、大判インクジェットプリンターそれぞれの今後の事業展望について、東氏は次のように語る。
「大判LED複合機・プリンターについては、国内という大きな市場において、さらに満足度を向上させていきたいですね。いままで多くのお客様に使っていただいておりますので、OKIデータ・インフォテックならではの良さをアピールし、国内No.1の商品にしていきたいと思います。また大判インクジェットプリンターでは、エコソルベントが注目されている屋外サイネージの市場で、シェアの拡大を目指したいという思いがあります。今回の新商品で「SXインク」搭載のラインアップを揃えましたし、OKIデータと連携して販売チャネルの構築も行っています。魅力的な商品と販売網がそろった以上、少なくとも中・上位機種で取っているようなシェアをエントリークラスでも獲得し、市場での存在感を高めたいと考えています」
今後はOKIグループの事業方針に従い、成長事業領域であるインダストリープリント市場において、大型プリンターの商品開発をさらに強化していきたいという。OKIデータが得意なオフィスプリント市場とあわせて、OKIグループとして新たな成長戦略を推進していく方針だ。
OKIは非常に歴史のある企業で、信頼にこたえる商品・サービスをずっと提供してきた会社だ。OKIデータ・インフォテックもその一員として早1年が経ち、顧客満足度が高く、ビジネス効率を上げる商品・サービスの提供をこれからも加速していく。
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