国内最大手の移動体通信キャリアとして知られる株式会社NTTドコモ。同社のビジネスにおいて、顧客データや料金データなど社内の貴重な情報資産の一元的な管理は、欠かせない要素となります。膨大なデータを管理する顧客情報管理システム「ALADIN (All Around DOCOMO INformation systems)」と同社の経営戦略策定をバックエンドで支えるデータ ウェアハウス「DWH」があります。
株式会社NTTドコモは 2016 年 3 月、DWH のデータベース基盤を、Microsoft SQL Server 2014 へ刷新。大幅な性能向上によりコスト削減と作業効率化を実現しています。同社は今後、DWH を活用した迅速かつ高度なデータの抽出と分析をもって、市場における競争力を高めていきます。
プロファイル
携帯電話や光ブロードバンド、衛星電話のサービス提供、端末機器販売などを行う通信事業と動画や音楽、電子書籍、金融、決済、ショッピングなど生活関連サービスを軸にさまざまなビジネスを展開する株式会社NTTドコモ。「新しいコミュニケーション文化の世界の創造」を企業理念に掲げ、顧客満足度の高いよりパーソナルなコミュニケーションの確立をめざしています。
導入の背景とねらい
ユーザーの利便性と作業工数、開発コスト、それぞれの課題を解決すべく、「DWH」のマイグレーションを決断
国内最大手の移動体通信キャリアとして知られる、株式会社NTTドコモ (以下、NTTドコモ)。携帯電話をはじめとした高品質なモバイル通信サービスを提供する同社は、「新しいコミュニケーション文化の世界の創造」という企業理念のもと、これまでさまざまなサービスを生み出してきました。
NTTドコモがこうした顧客ニーズに沿ったサービスを提供するうえで、根幹となるシステムが、全国のドコモショップとインフォメーションセンタから寄せられる顧客データを統合管理する顧客情報管理システム「ALADIN (All Around DOCOMO INformation systems)」と、同社の経営戦略策定をバック エンドで支えるデータ ウェアハウス システム「DWH」です。
DWH は、ALADIN からの顧客データや同社の料金システム MoBills (Mobile Billing system) からの料金データなどを分析し、端末の販売数やサービスごとの契約数といった数値を抽出し、社内の経営戦略に必要な指標を導きだすためのシステムです。株式会社NTTドコモ 情報システム部 顧客システム担当 担当部長 式見 政則 氏は、同社における DWH の重要性について、次のように説明します。
「モバイル通信業界は、凄まじい速度でトレンドやニーズが変化します。その速度のめまぐるしさに加え、各社からは随時、新たなサービスが提供されます。そのような中、お客さまに当社をお選びいただくためには、ALADIN に収集されるあらゆる顧客データを抽出し、高度な分析のもと導き出した結果を、迅速にサービスへ還元していく必要があります。DWH を有効に活用し、いかにしてスピード感を持った経営判断を行うかが、当社のサービス価値を高めていくうえで非常に重要だといえます」(式見 氏)。
DWH は、全国のドコモショップから随時送られてくる「明細データ」の蓄積と、それを一定期間ごとに集計した「サマリー データ」の作成という 2 つの役割を担います。これらのデータは、マーケティングや経営企画など、NTTドコモの本社および支社の従業員が閲覧し、活用しています。
DWH の驚くべき点は、その圧倒的な規模にあります。当時、NTTドコモで同システムのインフラを担当していた、ドコモ・システムズ株式会社 ドコモITシステム事業部 顧客システム部長 雑賀 義則 氏は、DWH に蓄積されている膨大な量のデータについて、次のように説明します。
「DWH で取り扱うデータは、NTTドコモの回線契約者数約 7,000 万人分のデータとなります。各レコードは、氏名や電話番号などに加え、契約時期や各サービスの契約有無など、1,000 以上もの項目を有しており、レコード数だけでなくその項目量も多い点が特徴です。これらの顧客データは、13 か月間 DWH 上で保持された後、バックアップへと移されます。DWH 上では、実質的に数億単位のオーダーが、常時、集計と分析の対象となっているのです」(雑賀 氏)。
このように膨大な量のデータを取り扱う DWH ですが、その利用と運用においては、これまでいくつかの課題があったといいます。中でも顕著だったのが、ユーザーの利便性と作業工数、開発コストの 3 点です。
DWH の開発を担当する、株式会社NTTドコモ 情報システム部 顧客システム担当 担当課長 和田 勝 氏は、利便性と運用工数の側面に存在していた課題について、次のように振り返ります。
「検索と抽出対象となるデータ量が膨大なため、ユーザーが利用する中で、相当な処理待ち時間が発生していました。これは決して快適とはいえない状況であり、当社のデータ活用をさらに発展させていくには、性能向上が必須だと感じていました。また、定期開発においても、この性能不足は開発コスト増加の要因となっていました。たとえばバッチ処理については、一括処理ができず、テーブルをある程度まで小分けにして処理する必要がありました。この処理は、性能向上のためだけに作りこんでいる処理であり、そこに要する開発コストも問題化していたのです」(和田 氏)。
同じく DWH の開発を担当する株式会社NTTドコモ 情報システム部 顧客システム担当 主査 井手口 和朗 氏は続けます。
「先のとおり、従来環境の DWH ではテーブルを小分けにグループ化してシステムを構築していました。そうすると必然的に、定期開発で手を入れなければならない箇所が増え、結果、そこで発生する開発コストも跳ね上がってしまいます。会社としては、所要コストを最適化したうえで課題を解決することが理想です。保守費の圧縮も含め、なんとかコストの見直しが図れないかと考えました」(井手口 氏)。
システム概要と導入の経緯、構築
Microsoft SQL Server 2014 の POC により、大幅な性能向上が実証され、採用を決定
こうした背景から、NTTドコモは 2013 年 12 月より、DWH のマイグレーションに向けた本格的な検討と検証を開始しました。
同社がこれまで抱えていた課題を解決するためには、まず、大幅な性能向上が求められました。最新のテクノロジを持った複数のデータベースを比較検討した結果、同社は、マイクロソフトの提供する Microsoft SQL Server 2014 に最も手ごたえを感じたといいます。
インフラ構築を担当する、株式会社NTTドコモ 情報システム部 顧客システム担当 担当課長 吉田 孔昭 氏は、Microsoft SQL Server 2014 に感じた手ごたえについて、次のように説明します。
「性能やコストも重要ですが、当時、テクニカル プレビューとして公開されていた Microsoft SQL Server 2014 は、その特徴である『列指向テクノロジ』が、DWH の業務に最適であると考えられました。同技術は、かねてから存在していた利便性やコストといった課題を解消すると同時に、机上でのアーキテクチャ レビューおよび POC (Proof of concept) を行った結果、他社最新技術と比較してもこれならチャレンジできると判断しました」(吉田 氏)。
実際、2014 年の初頭より進められた POC では、想像以上に大きな効果がみられたと、株式会社NTTドコモ 情報システム部 顧客システム担当 鈴木 健一 氏は続けます。 「POC における Microsoft SQL Server 2014 の性能は目を見張るものがありました。まず、データの検索や抽出に要する時間は 1/10 以下に短縮でき、バッチ処理にかかる時間も半分以下に削減できる試算となりました。さらに、定期開発に要するコストも、5 年間で 25% もの削減が見込めました。DWH の課題であった利便性と運用工数、コストのすべて解決できると期待できたのです」(鈴木 氏)。
POC で大きな効果が検証できたことを受け、NTTドコモは 2014 年 4 月、DWH への Microsoft SQL Server 2014 の採用を正式決定。翌年の 2015 年 3 月までかけて、サイジングや従来環境からのアプリケーション移行作業を行い、同年 4 月よりマイグレーション作業を開始しました。
マイグレーション作業を進行するうえで、NTTドコモでは、「従来環境とのデータの一致」と「POC どおりの性能」、以上 2 点を重視したといいます。しかし、これらを実現するうえでは、多大な労力を要したと、井手口 氏と鈴木 氏は当時を振り返ります。
「同じ SQL でも非互換の部分が出てきてしまうのは避けられませんでした。たとえば、アプリケーション上で非互換が漏れていた、事前に非互換と聞いていたが実は暗黙の型変換があった、といったことも少なくありません。データの一致は、あくまでも 100% の完全一致を目指していましたので、こういった問題を解消すべく、何度も移行と検証を繰り返しました」(井手口 氏)。
「当プロジェクトでは、性能のチューニングも重大な要素でした。POC と比べ、本番環境は規模が 10 倍以上もあります。CPU のコア数やメモリも倍以上のものになるため、本番環境で動かした際、なかなか POC ほどの性能が出なかったのです。POC で示した性能を実現すべく、とにかく SQL Server にとって最適な条件となるようなチューニングと、その維持に向けて全力を尽くしました」(鈴木 氏)。
同社が目指した「従来環境とのデータの一致」と「POC どおりの性能」を実現するうえでは、Microsoft SQL Server 2014 の導入と並行して採用した「Premier サポート」が、大きく貢献したといいます。Premier サポートは、専任のテクニカル アカウント マネージャ (TAM) によるエンド ツー エンドの IT 運用支援サービスを提供するものです。これにより、先の非互換の問題なども解決することができ、そのときどきで発生している課題の管理と解決が迅速に行えたのです。
雑賀 氏は Premier サポートについて、次のように評価します。
「性能が思うように出ない場合でも、日本マイクロソフト側でもかなりのソース解析が行えるため、問題解決を迅速に行うことができ、たいへん助かりました。それだけでなく、当プロジェクトで発生した問題を解決すべく、米国本社の (Microsoft SQL Server 2014 の) 開発担当者を日本に召集のもとディスカッションの機会を設定いただくなど、あらゆる手段を講じてもらえたのも心強かったですね。これだけ大きな規模のマイグレーションを 2015 年度内で完了できたのは、マイクロソフトの支援があったからだと考えています」(雑賀 氏)。
データの一致と POC と同等の性能が確認できた 2016 年 2 月より、NTTドコモは従来環境からの切り替え作業を進め、同年 3 月より、Microsoft SQL Server 2014 を基盤とした DWH の稼動を開始しました。
導入ソフトウェアとサービス
Microsoft SQL Server 2014
Premier サポート
導入メリット
Microsoft SQL Server 2014 の列指向テクノロジにより、データ検索と抽出作業の所要時間が平均 1/10 以下に短縮でき、内容によっては 1/100 以下に。毎回 5 時間を要していた作業をわずか 2 分で終えることができた
データ抽出を担当する部署の稼働時間を 1/6 ほどに削減することに成功
日次のバッチ処理時間を従来の 1/2 以下に圧縮、データの圧縮率も 10 倍以上にすることができた。結果、ストレージのディスク容量を 1/10 まで圧縮できた
導入の効果
データ検索と抽出に要する時間は 1/10 以下にまで短縮。作業工数と開発コストの削減も実現
Microsoft SQL Server 2014 によって刷新された DWH は、NTTドコモに大きなメリットをもたらしています。
データ検索と抽出作業については、所要時間が平均で 1/10 以下にまで短縮され、内容によっては 1/100 以下にまで短縮されたものもあるといいます。これまで 5 時間を要していた作業がわずか 2 分で完了するのですから、劇的な変化といえます。
こうした利便性の向上は、全社的なデータ活用の発展につながると、和田 氏はうれしそうに語ります。
「ユーザーにヒアリングをしたところ、『驚くほど早くなった』という声が多数寄せられました。これまで数時間を要していた作業が数分で完了するわけですから、『この検索結果は本当に正しいのか』と疑問をもつユーザーが出てくるほど、ユーザーにとってはインパクトがあったようです。こうした作業時間の短縮化は、データ抽出を担当する部署の稼働削減に直結します。具体的には 1/6 ほど、稼働削減に成功しています。その稼働削減を、より多くのリクエストへの対応や、柔軟なデータ抽出にシフトできます。結果として、全社的なデータ活用の発展へつなげられると期待しています」(和田 氏)。
Microsoft SQL Server 2014 による恩恵は、ユーザーの利便性向上だけではありません。バッチ処理の最適化など、運用面でも大きなメリットをもたらしていると、鈴木 氏は続けます。
「日次のバッチ処理にかかる時間を、従来環境の 1/2 以下にまで圧縮することができました。また、データの圧縮率も 10 倍以上に高めることができ、それにともなってストレージのディスク容量を 1/10 にまで圧縮できました。これは、ハードウェアのコスト削減の面でも、大きなメリットを生み出しています」(鈴木 氏)。
今後の展望
よりミッションクリティカルな領域への適用にも期待
NTTドコモはこれまでのモバイル通信企業から「付加価値協創企業」への転換を図っています。自治体や企業、研究機関などさまざまな分野のパートナーとのコラボレーションにより、生活をより便利にするとともに、地方創生や社会的課題の解決に取り組んでいます。こうした活動を行ううえでも、データ活用は重要な役割を占めます。 このように DWH の重要度が高まる中では、システムに求められる信頼性のレベルも同様に高まります。吉田 氏は Microsoft SQL Server について、ミッション クリティカルな要件へも対応できるようイノベーションを進めてほしいと、マイクロソフトへの期待を語ります。
「マイクロソフトには、これまで以上に、品質や性能、セキュリティを向上していってほしいですね。特に、データ保護機能の強化やさらなるスケーラビリティの向上を期待しています。将来的には、バック ヤードだけでなく、よりミッション クリティカルな領域への適用も検討できるでしょう」(吉田 氏)。
式見 氏は今後、同社における DWH の持つ役割が、より大きくなっていくと語ります。
「企業命題は、いかにして品質の高いサービス提供を持続するか。それを、コストや業務リソースを最適化したうえで、どのように実現するか、という点にあります。Microsoft SQL Server 2014 を採用したことで、そこへ向けたデータ分析基盤は整備できました。今後は、あらゆる角度からデータを抽出し、それらを高度に分析し、迅速にアウトプットしていくことで、企業経営に貢献していきたいですね」(式見 氏)。
ユーザー コメント
「企業命題は、いかにして品質の高いサービス提供を持続するか。それを、コストや業務リソースを最適化したうえで、どのように実現するか、という点にあります。Microsoft SQL Server 2014 を採用したことで、そこへ向けたデータ分析基盤は整備できました。今後は、あらゆる角度からデータを抽出し、それらを高度に分析し、迅速にアウトプットしていくことで、企業経営に貢献していきたいですね」
株式会社NTTドコモ
情報システム部
顧客システム担当
担当部長
式見 政則 氏
パートナー企業
- ドコモ・システムズ株式会社
(マイナビニュース広告企画:提供 日本マイクロソフト)
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