2016年8月、補聴器メーカーのリオンは、補聴器を使用している小学生と保護者を対象とした「親子でほちょうき工場見学」を実施した。「補聴器を使っている子どもたちに補聴器のことをもっと知ってほしい」「わくわくする気持ちを感じてほしい」―― このような思いから工場見学プログラムの実施に至った。
関東一円から同社の製造拠点である「リオネット補聴器八王子工場」に集まったのは、6歳から10歳までの子どもたち8名と保護者7名。普段は見ることのできない補聴器が完成するまでの工程を、体験型ワークショップをまじえながら学んでいく。
1人1台iPadを持って、補聴器の製造工程を見学!
工場見学プログラムでは、子ども1人につき1台のiPadを持って補聴器の製造工程を見てまわる。このiPad上では「FileMaker」でつくられたカスタム Appが動作し、重要な役割を果たしている。FileMakerは、アプリの開発経験やITスキルがなくてもビジネスに最適なカスタム Appの計画、作成ができるソフトウェアだ。
見学ポイントとなる場所では、ガイド役と手話を担当する社員の説明に加えて、iPadの画面にも解説が表示される。機械の内部などといった実物を見せられないものやわかりづらいものは、iPad上のカスタム Appにあらかじめ入れておいた図解や動画で解説することで、子どもたちの理解を深める。さらに、カスタム Appにはクイズも盛り込まれているので、楽しみながら学ぶことができる。障がいの有無や年齢に関係なく、iPad上に資料が表示されれば、つい見たくなってしまう。それが動画などの魅力的なコンテンツであればなおさらだ。
各見学ポイントで説明を聞いた後は、iPadのカメラで思い思いの写真を撮影、気づいたことや感想をテキストで入力し、カスタム Appに保存する。見学プログラムには、補聴器製作に欠かせない耳型採取用のシリコンに触れてみるワークショップなども含まれており、こうした体験型ワークショップでは写真撮影もひときわ楽しそうだった。
見学終了後は、各見学ポイントの写真と入力したテキストを配置したレポートをプリントアウトし、各自持ち帰ってもらう。そのまま夏休みの自由研究になりそうな仕上がりだ。
iBeaconを使って適切なタイミングでコンテンツを表示
その場で資料を確実に閲覧させるために利用したのが、「iBeacon」だ。iBeaconは、別途設置されたビーコン端末に近づいた際、その信号を検出して、連携するAppに何かしらのデータを受信・送信したり、自動的にプッシュ通知などの機能を動作させたりすることができる、Bluetoothを利用した無線技術である。2016年5月にリリースされた「FileMaker 15」はこのiBeaconをサポートしており、iOS用の「FileMaker Go 15」ではビーコン端末から受信した位置情報をもとに動作を制御することができる。
今回の見学プログラムでは5カ所の見学ポイントがあり、カスタム Appのコンテンツも5つのセクションに分かれている。iPadが子どもたちに配られた時点では、カスタム Appすべてのコンテンツはロックされており、各見学ポイントに設置されたビーコン端末の電波を受信すると、対応するセクションのロックが解除されてコンテンツが見られるようになる。ビーコン端末は、同社の子ども向け補聴器のキャラクターである「ピクシーくん」のぬいぐるみやイラストとともに設置されており、それを目印として至近距離まで誘導できる。
このように子どもたちをビーコン端末の場所に集め、カスタム App内でロックが外れたことを確認してから、その見学ポイントのコンテンツを見せるという流れになっている。子どもたち全員の足並みをそろえるだけでなく、見学ポイントごとにメリハリをつけて学習できる効果もあるようだ。ガイドをする側にとっても、説明内容の整理やペース調整に役立つという。
わかりやすく伝えるためには、iPadとのカスタム Appが不可欠
今回の見学プログラムは、リオンが補聴器を使う子どもたちを支援するために実施している「キッズ応援プロジェクト」の一環である。難聴の子どもたちが参加するプログラムで、その配慮としてiPadが有効活用されている。
難聴といっても聞こえ方は人それぞれだが、基本的には話し言葉を耳で聞くことに加えて、手話や話者の口の動きを読み取る口話が必要となる。そのため子どもたちは、話者や手話通訳を注視しなくてはならない。今回のプログラムでは、iPadのカスタム App上のボタンをタップすると見学内容に対応したコンテンツが表示されるので、話者を見るタイミングと資料を見るタイミングを効果的に切り替えながら、わかりやすく内容を伝えることができる。
また、「これから説明するので聞いてください」といったように、音声で難聴の子どもたちの注意を引くのは難しく、視覚で気づいてもらう必要がある。このような場合にも、iPadの画面を示して「ボタンを押してください」と言えば、今は何をやっているのか、これから何を説明するかが伝わる。1画面あたりの情報量をしぼり、シンプルなインターフェイスにすることで、こうした使い方が可能となっている。
キッズ応援プロジェクトの責任者である、医療機器事業部 事業企画部 企画課 課長の太田昌孝氏が「iPadとカスタム Appがなければ、見学プログラムは成功しなかったでしょう」と語るほど、見学内容とガイドの説明、そしてiPadのカスタム Appが融合して効果を上げていた。
短期間で柔軟に開発できるFileMakerが、子供たちの体験を支援
リオンでは、FileMakerをiPadで活用するのは今回がはじめてだったという。
開発パートナーとしてこのカスタム Appを制作したのは、BANZAI CREATIVEだ。同社は、WEBや広告などの企画・デザインから、データベース開発やUIのデザインまでを手がけるクリエイティブプロダクションである。
工場見学プログラムに求める要件
・難聴の子どもに適した視覚的な資料を用意
・資料を先に読んでしまうことがないようにする
・写真を撮ってレポートを出力できる
・親しみやすく飽きのこないユーザーインターフェイス
・参加型コンテンツでゲーム性も取り入れる
上記の要件から、まずはiPadの使用を決定した。その上で、見学コースやコンテンツとすり合わせながら短期間で開発でき、テストと調整を繰り返してつくり上げていけるプラットフォームはFileMakerしかないとBANZAI CREATIVEが判断し、リオンに提案した。
iBeaconを利用できるFileMaker 15のリリースが5月であったため、見学コースの検討、コンテンツの制作と調整、iBeaconのテストなど、8月の開催に間に合わせるためには短期間で多くの準備をする必要があった。BANZAI CREATIVEの担当者は、「タイトなスケジュールの中、プログラミング言語ではなくGUIで開発し、実装した機能の動作をすぐに確認できるというFileMakerの柔軟な開発環境があって実現できた」と話す。
「社員が何度もテストを重ね、社員の子どもを集めてリハーサルも実施しました。カスタム Appの調整は工場見学プログラムの実施当日まで続きました」とプロジェクトメンバーのひとりである医療機器事業部 開発部 補聴器開発三課 国分寺補聴相談室 担当課長の細野枝美氏は語る。
子どもたちのために調整を重ねたカスタム Appだからこそ、工場見学プログラムの中にiPadが自然と溶け込み、体験を構成する重要な要素のひとつとなった。「今回の工場見学プログラムは成功しましたし、カスタム Appに不満はありません。でも、まだまだやれることがあると期待しています。ここまで力を入れてつくり上げた企画なので、今後も継続していきたいですね」と太田氏は評価し、この体験をさらに多くの子どもたちに届けたいと語っていた。
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