立命館大学は、学祖・西園寺公望氏が創始した私塾「立命館」の意志を引き継いで、中川小十郎氏が1900年に創設した「私立京都法政学校」を前身とする私立大学である。西園寺氏の「自由主義と国際主義」に則った「自由と清新」という建学の精神、そして「平和と民主主義」という教学理念は、現在にも受け継がれている。

京都市内の衣笠キャンパスや朱雀キャンパスのほか、びわこ・くさつキャンパス、大阪いばらきキャンパスなど広範にわたり、東京・大阪にもサテライトキャンパスが設置されている。大分にある立命館アジア太平洋大学や、京都・滋賀・北海道にある小・中・高の附属学校を含め、2大学、4附属高校、4附属中学校、1附属小学校で"立命館学園"が構成されている。

京都市北区にある立命館大学の衣笠キャンパス

そんな同学の情報システム部門は、立命館大学、立命館アジア太平洋大学、学校法人で利用されるICT環境の企画・整備・運用等を統括している。その最大の特徴は、各施設を広域ネットワークで接続し、国内大手企業と同規模の7万人のユーザーが利用するICT関連サービスを1つの部門で統合管理している点だ。加えて、学校・施設ごとに細かな教育施策やニーズは異なるため、トップダウン式でガバナンスを強制するわけにはいかないという点も挙げられる。こういった課題を同学では、どのように解決しているのだろうか?

情報システム部 情報基盤課の谷村昇氏は、「統合と独自運用のバランスを重視して、利便性の高いインフラを提供しつつ、できるかぎり自治に任せるというICTサービスを心がけています」と述べる。

複雑化するシステム
肥大化するバックアップ運用

立命館大学 情報システム部 情報基盤課 谷村 昇氏

学内ICT運用の中で、最も気を付けなければならないのは情報資産(とりわけデータ)の保護である。立命館大学の中には、研究や教育などに用いる学術情報、教職員が業務に利用する教務情報、そして卒業生の成績情報などを含む30万人分の個人情報が保管されている。

「これらの情報は"安全性"もさることながら、卒業生の要望に応じて在学中の情報を提供できるというような"永続性"も求められます。私たちは、漏えいや改ざんに対するセキュリティ対策と消失に対するデータ保護という2つの大きなテーマを掲げて、対策や運用改善に取り組んでいます」(谷村氏)

文教の分野でも、以前からBCP/DRへの取り組みが課題となっており、大学間のコミュニティでも頻繁に話題となっていたという。しかし、データ保護自体は収益につながるものではないため、高度化・悪質化が進むサイバー犯罪対策への投資を重視し、データ保護には大きな予算が割り当てられない状況が続いていた。

同学教育研究システムの構築・運用等の実務を支援する、ワールドビジネスセンター上級主幹技師の西川純一氏によれば、2009年ごろに災害対策を含めたリスクマネジメントの改革が検討されたという。

「2010年には、キャンパス内にあったサーバー室の設備を専門のデータセンター施設に移管するなど、ファシリティの改革が行われました。また、バックアップについても、びわこ・くさつキャンパスとデータセンターとを連携し、データをミラーリングする仕組みが設けられました」(西川氏)

ところが、学内の各部門の要望によって増え続け、複雑化を増すシステムに対して、一般的なバックアップ運用を適用するのが困難になりつつあった。物理環境や仮想化環境が混在し、それぞれ対応できるバックアップツールを導入し、ライセンスを管理していかなければならない。

最大の問題は、保管ルールが実質的に存在せず、"とりあえず永久保存"という状況が続いていたことだった。広範な地域に複数のキャンパスが存在しており、それぞれの状況を把握するだけでも困難だった。「運用工数が肥大化しており、もはや限界に達していました」と西川氏は述べる。

エージェントレスで容量課金
シンプルかつ高機能なNetBackup

ワールドビジネスセンター 西日本事業本部 関西第1事業部 文教システム部 文教システム1課 上級主幹技師 西川 純一氏

立命館大学では2015年、サーバーやストレージ、バックアップ、監視・管理を含めたITインフラの統合を目指し、大々的な整備を推進することを決定した。特にバックアップは、大学間協同インフラやクラウドストレージ活用などの新しい手法が流行し始めていることもあり、同学でも抜本的な革新が必要だと判断された。

そこで谷村氏が考えたのが、大分の立命館アジア太平洋大学と協同でバックアップインフラを構築するという方法だ。立命館大学の持つシステムのバックアップを立命館アジア太平洋大学で、立命館アジア太平洋大学のバックアップを立命館大学でそれぞれ保管する"たすき掛け"の仕組みである。

「本学では複数のバックアップツールを駆使していましたが、いずれもエージェントが必要なシステムで、各システムの管理や構築に手間がかかっていました。現状でも年間で20プロジェクト程度が稼働しており、将来的にもシステムの増減が頻繁に発生することが予想されるため、サーバーごとのライセンス管理も省きたいと考えていました」(谷村氏)

そこで出会ったのが、ベリタステクノロジーズが提供する「NetBackup」である。NetBackupには、仮想化環境も物理環境も統合的にバックアップでき、容量課金型のライセンス体系も用意されていた。仮想化環境向けのVADP連携バックアップは、エージェントレスで仮想マシンごと世代管理することが可能で、細々とした運用の負荷を軽減できる期待もあった。

最終的に同学では、デバイスの調達や運用の負荷軽減もねらいアプライアンス型の製品を選び、立命館大学と立命館アジア太平洋大学にそれぞれ1基ずつ設置した。そして、各大学の教育系システムと事務系システムのバックアップデータを互いに持つという理想の環境を作り上げた。

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「統合基盤を構築するにあたって、あいまいだった運用設計の改善を含めて、ベリタステクノロジーズにはさまざまな知見と技術的サポートを提供していただきました。現在では、"拠点ストレージにデータを格納すれば遠隔地にバックアップできる"というシンプルな環境が実現でき、運用の負荷も大幅に軽減されました」と谷村氏は振り返る。

谷村氏によれば、テープ運用の廃止や容量課金を含めて、当初の課題がほぼ100%解消できたとのことだ。他のソリューションでは我慢せざるを得ない部分も多く、NetBackupアプライアンスは性能・機能面で他を圧倒していると高く評価する。日々の運用に悩まされていた西川氏も、「日常的な業務が大幅に軽減され、より重要な企画や運用にかける時間を取れるようになりました」と述べている。

さらに高い効果が得られたのは、システム構築の分野だ。新しいシステムへの移行に際して、数十のプロジェクトで開発が発生していたが、バックアップシステムの検討やテストが不要になった。そのため、開発工数とコストを大幅に低減できたとのことである。

立命館大学では、立命館アジア太平洋大学とのバックアップ連携のみを実施しているが、将来的には各拠点のバックアップインフラも集約したいと考えている。特に小さな拠点向けに、ローエンドタイプの安価なNetBackupアプライアンスに興味を持っているという。

「いずれオンプレミスシステムのバックアップだけでは不十分になっていくでしょう。オンプレミスのバックアップをクラウドサービスにミラーリングする、逆に、クラウドサービスのデータをオンプレミスにバックアップしたいというニーズも生まれてくるに違いありません。ベリタステクノロジーズには、そうした先進的でコストパフォーマンスのよいソリューションの開発・提供を期待しています」と谷村氏は話を締めくくった。

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