80年以上の歴史を持つ未来型メーカー
「地方企業の工場」と聞いて浮かべたイメージを、すべてひっくり返してほしい。人の背丈を超える筐体が立ち並ぶそこは、最新のSF映画に登場する研究所のようでもあり、「キュッ」と音をたてる床は、オリンピックに挑む選手のための体育館のようでもある。そこは、タンガロイが2011年に新設したいわき工場(福島県いわき市)で、日本型の最先端工場だった。
いまから80年以上前、1934年に特殊合金株式会社としてスタートしたタンガロイは、日本で初めて「超硬合金」の開発に成功した切削工具メーカーだ。ダイヤモンドの次に硬い超硬合金を使って、金属を切り、削り、穴をあけるための工具をつくっている。金属を自由自在に「料理」するための鋭い「包丁」を鍛え、磨き上げているというわけだ。包丁にいろいろな種類があるように、工具も鉄やアルミなど、素材によって刃(インサート)を替える必要がある。その数はなんと2万種類以上。
タンガロイの切削工具は、自動車や鉄道、電化製品に発電所、日用品の金型にいたるあらゆる製造現場で利用されている。日々の生活の中で、タンガロイの工具で加工された製品に触れたことのない人はいないと言っても過言ではない。
キーワードは「4S」と「オートメーション化」
そんな同社では「見せる工場」を目指しているという。そしてその通り、いわき工場をはじめ愛知(名古屋)・山梨(韮崎)・福岡(久留米)の各工場には、毎月頻繁に見学者が訪れている。そうした工場でつくられる刃の工程を簡略化すると次の通りだ。
1 超硬合金の素材となる粉末を混ぜ合わせ、金型に詰めて圧縮する
2 巨大なオーブンで焼き固めて、機械で磨く
3 コーティングする
インドやタイ、ロシアといった海外の製造業者から地元の高校生までがこうした流れを概観して、全員が驚くポイントは二つ。工場の「綺麗さ」と、行き届いた「オートメーション化」だ。
しかし、当然はじめから工場が整っていたわけではない。床が汚れていれば、機械が汚れ、そして品質も落ちていく。それを教訓として知っているタンガロイでは、安全衛生委員会の重点取り組み事項として「4S(整理・整頓・清潔・清掃)」を掲げ、毎月少しずつ、そして着実に積み上げてきた結果だ。
工場で働く入社4年目の若手社員に、現場作業の手を止めてもらって「会社のすごいと思うところ」を聞いてみた。するとはにかみながら「工場が綺麗なところです」という答えが返ってきたのが印象的だった。
もう一つのポイント、オートメーション化も“品質”へのこだわりが生んだ結果だ。一人が作業していても、体調の変化や疲れによってばらつきが生じてしまう。また、人が変わればなおさらその差は大きくなり、能力やノウハウに依存してしまう。そこでタンガロイでは、加工はもちろんのこと、機械への脱着から運搬までを限りなく自動化しようとしているのだ。
工場の自動化は、2008年にIMCグループに参入したことで飛躍的に進んだ。IMCグループ(International Metalworking Companies B.V.)は、イスラエルのイスカル社を中核とする切削工具メーカーグループだ。超硬切削工具業界では世界第2位の売上高を誇る。その資本力によって、施策の規模感も展開のスピードも段違いになった。
しかし、「全部を自動化すればいいわけではありません」と、タンガロイいわき工場 工場長の増田善昭氏は言う。
「たとえば、刃をつくるための金型の奥までは、機械で磨くことができません。ある柔らかい素材をつかって、手作業で仕上げています。こうした『職人の巧み』と『自動化』をいかに融合させるかが鍵になります。そうしなければ、日本品質と高能率生産の両立はできません。生産系エンジニアにとって一番の勝負所で、苦しいですけど、最も楽しいところです」
世界に供給する日本の工場
それにしても、海外に工場を移転させ、現地化させることが当たり前になった昨今、なぜタンガロイは日本でのものづくりにこだわるのだろうか? 同社 代表取締役社長の木下聡氏は、次のように語る。
「工具は技術革新が早く、製品サイクルの短い業界です。付加価値のある製品を提供し続けるために、先進的な技術を集中投資できる場所として、日本でのものづくりを選びました」
製造のオートメーション化によって省力化した分のリソースは、生産技術部門と開発部門に振り分けた。開発投資は普通の企業の倍だというタンガロイは、毎年数十の新製品、バリエーションを含めると1,000を超えるラインナップを発表している。工具の管理収納システムといった生産技術も、タンガロイの商材だ。
また、IMCグループへの参入により、世界の細やかな情報が入って来るようになったことも大きい。重工業やエネルギー産業向けの製品のように、金属を2,30センチ幅で削っていく大がかりな工具は、日本では売れなくても、ロシアでなら売れる。いまでは海外の売上比率が65%となっている。
タンガロイは日本の工場から全世界に製品を供給している。いわき工場の合い言葉は「世界基準をいわきから。」だ。いわき工場工場長の増田氏は、少し照れながらも宣言した。「カッコつけた言い方ですけど、それが私たちの『誇り』です」
このように、洗練された巧みの技術と行き届いたオートメーション化により、日本のものづくりを世界へ発信し続けるタンガロイから今後も目が離せない。工場という概念を根底から覆すほどのインパクトを今後も発進し続ける。
福島県いわき市に本社を置くタンガロイでは、以下のようなさまざまなPR活動することで、日本全国、そして世界へ積極的に同社のブランディングを展開している。また、人材の採用や育成にも非常に力を入れており、興味のある方は一度同社のHPを訪れてみてはいかがだろうか?
福島県内で展開しているテレビCM Ver1
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株式会社タンガロイ 総務グループ
代表番号:0246-36-8501(受付:平日のみ・8:00~16:45)
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本社HP:https://www.tungaloy.com/ttj/
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