ネットワーク関連機器市場においてトップシェアを誇るシスコシステムズ(以下、シスコ)。同社が2015年9月に発表した「Cisco Start シリーズ」は、これまでの「シスコは大企業向け」というイメージを払拭した“日本の中小企業”に向けたソリューションである。

そして、この「Cisco Start シリーズ」よって、「北陸の中小企業に“正しい”ネットワークソリューションの提供を」と意気込んでいる企業がある。それが福井県に本社を構える福井キヤノン事務機(以下、福井キヤノン)である。

同社は、キヤノン製複合機をはじめとする各種情報機器販売のほか、システムインテグレーションやネットワークセキュリティなど、企業活動を行う上で必要となるITソリューションをトータルで提供している。本稿では、福井キヤノンにおいてネットワークソリューションの提供を担当するNetsolグループ リーダー 梅村紀弘氏に、地方中小企業におけるネットワーク事情と、その課題を打破するために「シスコ」を選択した理由について紹介する。

地方中小企業におけるネットワークの課題【その1】
「その場しのぎで継ぎ足されるタコ足ソリューション」

全国の眼鏡生産量において90%を占める福井県鯖江市。そのうちの大半は家族経営の零細企業が支えている。規模としては零細だが、ビジネスとしてはグローバルレベル。このような企業が福井県内には数多く存在するのだが、それを支えるためのITツールやソリューションが不十分という現実があった。

「福井県は交通の便が悪く、大きな企業も少ないので、大手のメーカーさんがセールスに来ることは少ないです。北陸新幹線が通ってからは、交通の便が少し良くなりましたけど……」(梅村氏)

福井県には小さな企業が多く、そこにIT担当者と呼べる存在はほとんどいない。そのため、何か課題ができた際には、昔から付き合いのある地元の販売会社に相談することが多く、販売会社の提案のまま、課題に応じた製品を導入するのだという。

同社 Netsolグループ リーダー 梅村紀弘氏

「マイナンバー対策として、セキュリティ強化のためにファイヤーウォールを導入する。iPadを使ってリモート接続をしたいから無線ルーターを導入する。こういったように、別の目的で導入した機器やソフトウェアが、タコ足配線のように複雑に絡み合っている―― そんな事例をたくさん目にしてきました」(梅村氏)

梅村氏によると、高価なセキュリティソフトを導入していながらルーターは市販されている一般家庭向けのものだったり、最新の無線ルーターのおおもとに旧式のルーターが繋がっていてボトルネックになっていたりというケースもあったそうだ。

「こんな複雑な形にしなくても、例えばシスコのルーターを1台導入してしまえば、それだけで課題が解決するはずなのです。むしろその方が管理も楽ですし、コストも抑えられます。しかし、“シスコは大企業向け”とか“専門のエンジニアが必要だ”といったようなイメージを販売会社が持ってしまっているため、中小企業に広がりにくいのが現状ではないでしょうか。それなら、そこに我々としてのビジネスチャンスがあるのではと考えました」と梅村氏は話す。

地方中小企業におけるネットワークの課題【その2】
「当たり前が当たり前に提供されないために生じる不具合」

福井キヤノンでは2年前より、シスコのルーターを用いてスマートフォンやタブレットからのセキュアなリモートアクセスを可能にする、独自のソリューション「SMART-ONE/network」リモートアクセスパックを提供していた。

「セキュリティに従業員規模は関係ないとよく言われます。例えば、SMART-ONE/networkを導入しているお客さんの中には、在籍数5名程度の弁護士事務所などがあります。規模は小さくとも、扱っている情報量は大企業に負けません。そういう意味では、たしかにセキュリティに企業の従業員規模は関係ないと言えるでしょう。しかし現実には、規模によって対策に差が生まれてしまう。それは、コストなどが問題ではなく、もたらされる情報に差があるからです」(梅村氏)

iOSには標準で“Cisco VPN Client”が搭載されている。特にiPhoneやiPadであれば、簡単かつ低コストでリモートアクセスが実現できる。セキュリティの面においても、シスコのルーターであれば信頼性が高い。しかし前述したように、販売する側が“シスコは大企業向け”という思い込みのため、中小企業に向けたセールスが行われにくい。その結果、中小企業はシスコの存在を知らないまま、身近にあるものを組み合わせて、なんとか課題を解決しようとするのだ。

梅村氏は「中小企業には、当たり前の情報が当たり前に提供されていません。そのため、本来であればルーターひとつでおさまるものが、苦労を重ねながらいくつもの機器を組み合わせて対処することになります。結果、セキュリティ的に危険な状況にあったり、運用コストが膨れ上がってしまう―― これが現実です。ただこれは、私たち売る側の責任でもあります」と話す。

Cisco Startで中小企業に「当たり前」を提供

2015年9月に発表された、中小企業向けネットワーク製品「Cisco Start」。同製品について梅村氏はこう語る。「機能、価格、サポート体制、あらゆる面から見て、Cisco Startは中小企業に“当たり前のことを当たり前に提供できる”唯一のソリューションだと考えています。いまだに、シスコは製品が高い、構築には高度な技術が必要である、などの先入観を持つ人はいるかもしれません。ですが、中小企業の方々にもきちんと適正価格でインプリしてもらえば、実は普通の製品より費用対効果が上がり、むしろ安くなるくらいです。Cisco Startの登場で、これまで思い描いていた様々なことが可能になると、おおいに期待しています」

Cisco StartはGUIで簡単に設定できるため、通常ネットワーク機器を扱っていない事務機器のサービスマンでも取り扱う準備を進めるなど、様々なアプローチを練っているとのことだ。

なお、福井キヤノンでは、独自のパッケージであるSMART-ONE/networkとCisco Startを、すでに数多くの県内中小企業に導入済みである。以下にその例を紹介するので、ぜひ参考にしていただきたい。なお、その他の導入事例、および詳細については福井キヤノンの導入事例ページに掲載されているので、興味がある方はチェックしてみてはいかがだろうか。

■導入事例1
1.業種:労務士事務所
2.従業員数:7名
3.導入前の課題:市販ルーターによるネットワーク接続
4.導入製品:Cisco 841M/J
5.導入効果:セキュリティ強化、iPad / iPhoneによるリモートアクセスの実現

■導入事例2
1.業種:リサイクル、環境資材
2.従業員数:128名
3.導入前の状況:運用管理および回線コスト増
4.導入製品:Cisco 841M/J
5.導入効果:DMVPNにより小規模拠点は非固定回線を利用。導入コストおよび機器コストが低減

■導入事例3
1.業種:輸入自動車・アパレル販売
2.従業員数:10名
3.導入前の状況:新規導入
4.導入製品:Cisco 841M/J
5.導入効果:関連会社6拠点への接続、およびデータセンター内にあるサーバーネットワーク設備への接続を実現

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