日本の有力ソフトウェアベンダーが集結する業界団体「MIJS(Made In Japan Software & Service Made In Japan Software)コンソーシアム」(以下、MIJS)。2006年の設立から10年、MIJSでは会員企業同士でビジネス相互連携を行いながら、海外展開および国内ビジネス基盤の強化を図ってきた。今回、この4月にMIJS理事長に就任した内山雄輝氏(WEIC 代表取締役社長)を迎え、MIJS創設期からの会員であるスーパーストリームの取締役 企画開発本部長、山田誠氏との対談が実現。日本のソフトウェア業界の未来について熱い意見が交わされた。
MIJS創立11年目、テックイノベーションの実現を目指す
山田氏:まずは、MIJSの理事長へのご就任、おめでとうございます。
内山氏:ありがとうございます。
山田氏:歴代の理事長のなかでは最年少になりますね。ここにきて会員もますます増えています。
内山氏:そうですね、2006年の創設から今年で10年経ちますが、会員企業は80社を数えるほど大きな団体になりました。スーパーストリームさんも創設時のメンバーでMIJSの中心的な存在ですから、これまでにも増して貢献していただきたいと大いに期待しています。
山田氏:少しプレッシャーですが(笑)、そう言っていただけるととても嬉しいですね。もちろん私たちにできる限りのことはやらせていただきます。
内山氏:最古参会員として、過去のMIJSと比べて変わったと思う点はありますか。
山田氏:やはり、業態を含め顔ぶれが多様化していますよね。当初は自社でパッケージソフトウェアを開発している私たちのようなISVばかりでしたが、いまやクラウド時代を象徴して、プロダクトだけでなくサービスを提供する企業も増えています。さらには、投資企業も加わるようになりましたから、まさに世界的な企業ITの動向を受け入れて変化してきているのではないでしょうか。
また当社自身、プロダクトからサービスへと大きく舵を切っています。“テックイノベーション”という言葉に象徴されるように、これまではテクノロジーとサービスはそれぞれ別の存在だったのが、本当に融合してきています。そうなると、我々ソフトウェア業界もまったく考え方を変えていかなければならないでしょうね。
内山氏:まったくその通りで、テックイノベーションの実現は、MIJSが今後の大きな目標として掲げているものです。MIJSの組織体制もまた、テックイノベーションの時代にふさわしいものへと変革します。
日本版シリコンバレーの設立に向け、イノベーションが連鎖するエコシステムの創出を
山田氏:これまでMIJSは、海外に通用するソフトウェアを日本で創りだそうというのが共通目標としてありました。しかし、近年はこの目標を踏襲しながらも、新たなチャレンジへと踏み出していくのだなという印象を受けています。
内山氏:その通りです。10年前にソフトウェア業界にイノベーションを起こそうという心意気のあるベンダーが集まってできたMIJSですが、会の活動はこれまでを通じてかなりまとまり安定したのではと考えています。そして創立からこれまでの間に、ネットワークの急速な進化など、ITを取り巻く環境が大きく変化しました。そうした背景をうけ、まず皆で何を目指すのかを明確化しようじゃないかと、“日本を変革するテックイノベーションを実現する”というビジョンを掲げたわけです。
これまでの日本企業の多くは1社だけでなんでもやろうとする「自己完結型」でしたが、それぞれの企業が有する強みを連携して新しいものを生み出す「開放・連携型技術革新システム」への移行を実現し、日本型エコシステムを構築するというのが、新しいビジョンの趣旨になります。より具体的に言うと、日本型シリコンバレー「Japan Tech Valley」の設立を目指します。
山田氏:日本型シリコンバレーですか! ぜひ実現しましょう。スタートアップがどんどん伸びて、エコシステムに含まれる企業のビジネスが連携してともに成長していく── そんなライフサイクルや仕組みをMIJSに持ち込もうというわけですね。
内山氏:まさにそうなります。ソフトウェア業界にとどまらず、日本の企業全般が抱える問題がいくつかあると私はみています。
- 高リスクベンチャーに資金提供する金融システムがほとんど存在しないこと
- 多様で質が高く、流動性の高い人材を供給する労働市場がないこと
- 革新的なアイデアや製品、ビジネスを絶え間なく創出する産学官の共同体制が弱いこと
- 既存の大企業と小規模スタートアップがともに成長する産業構造が確立されていないこと等
それならば、MIJSの機動性や特徴を生かして、私たちが主導してこうした問題を解決する場、すなわち日本版シリコンバレーをつくってしまおうというわけです。
人・テクノロジー・金の連携を促していく
山田氏:なんだかとてもワクワクしてきました。日本型シリコンバレー実現に向けての第1歩はどのようなものになりますか。
内山氏:まずは「MIJS Japan Tech Valley」として試験的に実現していきます。具体的には、人・テクノロジー・金(営業・経営)の連携を促進する委員会活動を進めます。そこで得られた内容を提言や実行状況としてまとめて、政府や社会に還元していく── そんな活動をイメージしています。
山田氏:従来の委員会活動が、より広がりとつながりをもって生まれ変わった感じですね。
内山氏:そうです。今回の委員会活動のキーワードは“連携”です。これまでは、委員会に入れば自然と連携が促進するだろうという程度でしたが、今後は明確に連携を目的化します。
例えば、最近ではアイデアはあるけれど、ビジネスをどう軌道に乗せればいいのか悩んでいるクラウド系のスタートアップが増えています。そんな彼らに「ビジネスを成長させたいのならば、MIJSに入ればいいよ」と自信を持って言えるようにしたいのです。彼らのようなベンチャーが困っているのは大きく2つで、“資金繰り”と“売り方”です。その次に、どう経営するのか、人材をどう確保すればいいのか、どうやって技術を強化するのか…… と続いていくのですが、まずはお金と営業です。
それらの課題解決が、MIJSでなら実現可能だろうとみています。日本では何の実績もないところからお金を集めるのは難しいし、実績がないと優れたプロダクトやサービスでもなかなか買ってもらえない。そうであれば、MIJSのエコシステムの中で、資金を集めて商品を売りながら、実績をつくってしまうのです。
山田氏:これまでは新しい企業がなかなか市場に参入しにくく、日本のソフトウェア業界が硬直化する傾向にありましたが、そこを打破できそうですね。
内山氏:ぜひそうしたいです。ベンチャー企業が、自分たちのプロダクトやサービスが、市場から見て技術的にどうか、売れそうかなど、事前に会員企業から評価してもらうような体制づくりも委員会が担っていきます。そして「これは面白いね」となったら、会員同士がお互いに、人材育成や営業での必勝プレゼン方法、働き方の変革など、課題に応じてお互いのリソースを出しあうような研修を実施していくのです。
山田氏:会員同士で切磋琢磨していくなんてエキサイティングです。僭越ながら当社もビジネスネットワーク委員会に名を連ねさせていただき、私が委員長を務めさせていただくので、日本型シリコンバレーの実現に貢献できるよう努力は惜しまないつもりです。
国や業種業態の垣根を越え、日本のものづくりとの連携も視野に
内山氏:過去にも、MIJSでは海外の様々な団体と連携してきましたが、途中で関係が切れてしまったりしているので、グローバルアライアンス支援やグローバル人脈構築などを担うビジネスネットワーク委員会には、ぜひもう一度海外とのつながりを強化してもらえるよう期待しています。特に、一足先に海外展開して成功しているスーパーストリームさんの力は欠かせません。
山田氏:ありがとうございます。海外での販売チャネルをつくりたくても、最初にどこから入ればいいのかわからず、つまずいてしまう企業も多いです。でも反対に、最初の取っ掛かりの場だけを提供してもらえれば、あとは自力でも販路を拡大できるはずです。その海外展開の第1歩の場を設けてあげるのが、グローバルアライアンス支援の主な狙いになるとみています。
それと、例えば最近話題のFinTechやIoTなんかをテーマに、国境や業種業態を越えてスペシャリストに集まってもらい、ディスカッションしながら人脈形成していくのもいいですね。
内山氏:様々な垣根を越えるというのは、まさにこれからのMIJSが目指すところです。私はここを“融合の場”になると考えているのです。たとえばソフトウェアとハードウェアの世界は、これまではお互いに連携することなくビジネスを進めてきました。しかし今は、自動車の世界をみても、テスラなどはほとんどソフトウェア製品といえます。
何が変わったのかというと、おそらく課金スタイルではないでしょうか。これからはモノも、クラウドのようなサブスクリプションモデルになるのではとみています。月額課金の安定した課金スタイルを採用することで、日本の優れたハードウェアが本来の強さを取り戻せるはずです。センサー技術にせよ、ただデバイスとして売るだけではなく、何かしらのソフトウェアと組み合わせてサービス化できれば、より収益性の高いサブスクリプションモデルの採用も可能になるはずです。
山田氏:日本のものづくりの復権に貢献できるというのはますますやりがいがあります。ただそうすると、MIJSにハードウェアメーカーも入っていいということですか。
内山氏:大歓迎です。ただ、MIJSの「S(=Software)」に「H(=Hardware)」が加わって、名前が変わってしまうかもしれませんね(笑)。今はMIJSも大きな転換期なので、数年先には現在のかたちはガラッと変わっているかもしれません。
山田氏:新生MIJSの今後を心より楽しみにしています。日本の優れたソフトウェアを世界へ発信するというミッションに、当社も全力で携わらせていただきます。日本版シリコンバレー、絶対に実現しましょう!
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