学期末の発表会。そこで発表されていたのは……

2016年1月下旬。千歳科学技術大学(北海道千歳市) 理工学部グローバルシステムデザイン学科に在籍する2、3年生のうち17名が、「情報デザイン学」講座の成果発表会に臨んでいた。これは、前年9月から同講座を履修している学生たちが、15回の授業を終了したのち、それを成果物として、自ら開発したアプリを一人ひとり発表していくといったものだ。

学生たちは、授業で学んだ情報デザインの知識を応用して、「自分達の生活に密着した問題の解決」をテーマに、スマートデバイスで動作するアプリを「FileMakerプラットフォーム」で開発した。

発表の風景。一人ひとり真剣に耳を傾ける様子がうかがえる

現実の問題を把握し解決するための情報デザイン

千歳科学技術大学 理工学部 グローバルシステムデザイン学科 教授 曽我聡起氏

「情報デザイン学」講座は、身近にあるさまざまな情報をもとに、メディアデザインやユーザーインターフェイス、情報の効果的な活用法を学ぶ選択科目である。千歳科学技術大 学理工学部 グローバルシステムデザイン学科 教授の曽我聡起氏は「この講座の目的はプログラミングの習得ではありません。現実の問題を適切に把握し、解決策を考えることが目的です」と説明する。

その解決策の実装手段として採用されたのが、ファイルメーカー社が提供する、FileMakerだ。ファイルメーカー社では、FileMakerソフトウェアを学べる授業を開講する教育機関向けに「FileMakerキャンパスプログラム」を通して、ソフトウェアライセンスの無償貸与を行っている。同大学は全国で最も早く2013年からこのプログラムに参加してFileMakerを教材として採用してきた。

FileMakerプラットフォームは、独自のニーズに合わせたアプリケーションをカスタム開発できるため、市場では主に法人ユーザーがビジネス目的に利用している。FileMakerプラットフォームで作成したアプリケーションは、「カスタム App」と呼ばれ、マルチプラットフォームに対応しており、iPad、iPhone、Windows、Mac、そしてWebでシームレスに動作する。同大学の学生たちが開発したスマートデバイス向けのアプリは、FileMakerプラットフォームのiPhoneやWebに簡単にカスタムAppを展開できる機能を利用したものだ。

DBPowers 代表取締役 有賀啓之氏

本講座の開講当時から講師を担当するDBPowers代表取締役の有賀啓之氏はこう語る。

「2年生の後期はまだアプリ開発に取り組んでいない段階なので、FileMakerを使ったことのある学生はほとんどいませんし、データベースやそれを利用した開発にもそれほど、なじみはありません。しかしFileMakerなら、すぐに画面の作成を始めて、そこから徐々に学んでいくことができます。やりたいことがすぐにできて、しかも使い慣れた自分のスマホを使って目に見える形で即座に動作を確かめられるのが魅力です」

さらに曽我氏も、「まずやってみるという導入部分が、学生たちにとって重要です。特別なプログラミングスキルがなくとも始められるというFileMakerの“間口の広さ”が、それを助けていますね。さらに、教員側にとっては“なに”が“どの程度”できるかの予測が立ちやすく、授業設計がしやすいですね」と言う。

ユーザーの立場、日常の不便さ、目的などを考えて作られたアプリの数々

学生たちがスマートデバイス向けのアプリ開発を始めるにあたっては、講師の有賀氏が提示した3つのテーマから選択するか、身の回りから自由にテーマを選択するかのいずれかになっていた。提示されたテーマの中で最も多くの学生が選んだのが、「学食アプリ」だ。しかし同じテーマとはいえ、アプローチも仕上がりも各人各様だ。

「メニューを選ぶときにカロリーがわからないのが不便」と自分の毎日の体験を向上させようとする学生もいた一方で、自分が学食のスタッフという想定で「学生の栄養管理に役立てたい」「日替わり定食を目立たせたい」などの目的を設定して作った学生もいた。いずれにしても、使う人の立場や、何を便利にしたいかという、情報デザインを考える上できわめて重要な課題に取り組んでいた。

また、オリジナルのテーマを選んだうちのひとりが、電車の時刻を参照するアプリを作成した伊藤巧也さんだ。

「今日は1校時から授業があるからバスはこの時間、逆算すると電車はこの時間……と毎回計算しなくてはなりません。しかも僕は電車を乗り換えて通っているので、2本の電車の乗り継ぎも調べています。それが非常に不便なので、解決したいと思ってアプリを作りました」(伊藤さん)

1校時または2校時と、授業の開始予定をポップアップメニューから選択すると、それに間に合う電車の時刻が表示されるといった具合だ。

続いて森田晴香さんは、大学に欠席届を提出するアプリを作成した。病気や忌引などの場合に欠席届の用紙を提出しているが、これをアプリ化したいと思ったそうだ。「家からでも届けを出せるようにしたいし、用紙を先生に渡すのを忘れてしまうこともあるので」とその背景を語る。

伊藤巧也さん

森田晴香さん

伊藤さんが作成した電車時刻アプリの画面

森田さんが作成した欠席届アプリの画面

アプリを形にできるから今後の課題へとつながっていく

大学のゆるキャラやポップな書体を使い、かわいらしいインターフェイスの学食アプリを仕上げたのが、「女子目線のものを作りたかった」と語る水野愛祐未さんだ。今後は小、中学生向けのe-ラーニングアプリの作成を目指しているとのことで、「対象者に応じたインターフェイスを考えていきたい」と意欲を見せていた。

さらに、欠席届のアプリを作った森田さんも「私が今回作ったアプリのようなカラフルな外観や入力項目の多いインターフェイスでは、病気のときにはつらいかもしれない」と、利用シーンにさらに一歩踏み込んで考察していた。

また、学食アプリを作った佐々木海斗さんは、「ユーザーがログインする機能を実装したが、自分が作成したアプリでは個人情報を扱わないのでパスワードは必要ないかもしれない。さらに、同じ品目を何回も選択できてしまうなどの問題点も残っている。でもFileMakerは蓄積されたデータを簡単に見ることができるので、アプリを作りやすいと感じた」とその課題や過程を語る。

このように、各自が機能、外観、意味合いなどを一つひとつ検討し、実際にアプリを作ることで、知識や考えを深めていったようだ。

水野愛祐未さん

佐々木海斗さん

水野さんが作成した学食アプリの画面

佐々木さんが作成した学食アプリの画面

学内や地域への波及効果も

思い描いたアプリがFileMakerで実現できることに興味をもった学生の一部は、その後も学習と体験を深めていく。

曽我氏は「2年次に情報デザイン学を履修した後、3年次にはひとつのプロジェクトとして、そして4年次には私の研究室で、FileMakerプラットフォームでの開発を続ける学生もいます。半年の講座で終わってしまうのではなく、継続して取り組む流れができてきました」と、手応えを語る。

2016年3月の卒業生の中には、卒業研究として「サケのふるさと千歳水族館」(北海道千歳市)の館内案内アプリを作り、館内にiBeaconを設置して試用するフィールドワークにまでつなげた学生もいる。この研究は、コンピュータ利用教育学会北海道支部が主催する「PCカンファレンス北海道2015」で賞を受けるなど、学外からの評価も高い。

「水族館からもさらに開発を進めたいというお話をいただいているので、音声ガイドの実装などに継続して取り組む予定です」(曽我氏)

これまでの成果が知られるようになり、学内の他の研究室でもFileMakerを活用したいという声が上がってきたそうだ。FileMakerをプラットフォームとした学習や研究の広がり、学生たちの成長とスマートデバイスを使いこなしている彼らならではの新鮮なアイデアや若い感性で、魅力あるアプリの誕生が今後さらに期待される。

(マイナビニュース広告企画:提供 ファイルメーカー)

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