IoT時代に向けて重要性を増す「LAN管理」
最近は、スマートデバイスの普及やIoTの流れを受けてLAN環境の複雑化が進み、オフィスや拠点におけるLAN管理の重要性が増している。そのため、こうしたネットワーク専任の管理者を置けないような企業においては、トラブルによって本業に支障がでてしまうケースも少なくない。そんななか、ヤマハが提供を開始したLAN管理のための機能が、ユーザーの支持を集めているという。
「LANマップ」と呼ばれるこの機能は、LANを構成するさまざまな端末が現在どのように配置され、どういった状況にあるのかを「見える化」するものだ。どの端末がどのスイッチのどのポートに接続されているかを構成図としてグラフィカルに表示したり、保存しておいた構成図と比較してどの端末が新たに追加されたかをアラート通知したりできる。
こういったLAN管理の機能は、大規模なネットワーク環境に対し専用の製品を導入して実現する場合が多く、小規模なオフィスや拠点においては、コストや人員確保の難しさから導入が見送られるケースがほとんどだった。それが、ルーターやスイッチに備わる標準機能を使って、ネットワークの専門知識を持たないユーザーでもオフィスや拠点のLAN管理が簡単にできるとあって、既存ユーザーを中心に支持を広げている状況だ。
開発に携わったヤマハ 音響開発統括部 SN開発部 ネットワーク機器グループ 主任の新井田博之氏は、こう話す。
「LANマップは、お客さまからご要望をいただいた課題にこたえていくなかでできあがってきた機能です。企業内でさまざまデバイスが使われるようになり、LANにまつわるトラブルが急増しました。『接続端末をすばやく検索できないか』『ルーターからスイッチを操作してVLANを一括設定できないか』といった声にこたえるために、L2MS(Layer2 Management Service)という独自プロトコルを開発し、その後もお客さまとのコミュニケーションをもとに機能拡充を続け、現在のLANマップにいたりました」
顧客とともに機能をプロトタイピング
1995年にルーター市場に参入し、現在は国内SOHOルーターで11年連続シェア1位(IDC Japan調査)を続けるヤマハだが、スイッチ市場への参入は2009年と比較的新しい。同社 楽器・音響営業本部 音響営業統括部 SN営業部 営業推進課 担当課長の平野尚志氏によると、スイッチ市場への参入背景には、LAN環境におけるさまざまな課題が急増していたことが大きいという。
「2009年当時から課題になっていたのは、配線の複雑化や老朽化、LANケーブルの障害増加、障害検知や障害解析の負担の増加、端末増加に伴う無線や有線の統合やLAN管理の大規模化・煩雑さなど です。WAN環境についてはヤマハルーターとして一定の評価をいただいていましたが、ルーターだけではこうしたLAN側の課題に対応することが難しく、スイッチ製品を新たに開発し、端末とサービスをつなぐ経路を見える化することで、課題の解決を図ることにしたのです」(平野氏)
平野氏によると、ユーザーがネットワークトラブルに対処する際は、まずルーターの管理画面に入って、WAN側かLAN側かを切り分けるケースがほとんどだったという。そこで「ルーターの管理画面からLAN側を見える化できれば、ユーザーにとって大きなメリットになる」と考えた。その際のカギとなる技術として開発したのがL2MSプロトコルだ。
L2MSは、スイッチやアクセスポイントの制御・状態取得のための技術で、L2MSスレーブ(L2MSに対応したヤマハのLAN機器)をL2MSコントローラー(L2MSに対応したコントロール機能を搭載したヤマハのルーターやファイアウォール)から一括管理することができる。管理画面は、Webアプリケーション「スイッチ制御GUI」として提供され、エンドユーザーが簡単にLAN管理を担えるようになった。
このL2MSに基づくスイッチ制御GUIは、2011年に提供したルーターRTX1200とスイッチSWX2200から搭載され、「LANの見える化」機能として、ユーザーの間で、大きな反響を呼ぶことになった。最初に提供された機能は、スイッチの使用ポートをGUI表示するトポロジー表示や端末の検索、VLAN一括設定などだ。
新製品のSWX2200をキャリーバッグにいれて、さまざまな顧客を訪問してデモ(※1)したという新井田氏は、こう話す。
「LAN内にどんな端末があるかは、スキルを持ったエンジニアがコマンドを叩いたりしてようやくわかるものでした。それがGUIから簡単に把握できるようになったので『これはいい』と高く評価いただくことができました。その一方で『だったらこんなことはできないのか』とさまざまなフィードバックをいただくことにも繋がりました」
たとえば、「端末のMACアドレスやIPアドレスだけでなく、ホスト名や機種名を知りたい」「通信状況を見るだけでなく、トラフィック量の制御をしたい」「Web認証に対応してほしい」などだ。SWX2200はファームウェアとは別に、Luaスクリプトを使って機能をプロトタイピングすることが可能だった。そこで新井田氏は、顧客の要望を聞いてスクリプトを書き、その場でテスト。そのうちのいくつかはファームウェアのアップデートに反映し、最終的に、製品の改善につなげていったという。
エンドユーザーにもわかるメリット
そうした顧客とのコミュニケーションにより実現した機能としては、ホスト一覧表示、スナップショット、タグVLAN一覧表示、LANケーブル二重化などがある。これらの機能は、2014年にルーターの新モデルRTX1210が提供される際に、スイッチ制御GUIに変わる新しいWebアプリケーションのLANマップとしてまとめられ、新たに提供されることになった。
ホスト一覧表示は、トポロジー表示のなかで、端末のホスト名や機種名などを一覧表示する機能だ。ホスト名により、実際に目に見える端末がそのままグラフィカルに把握できたり、端末管理情報の編集も可能で、アイコンを選んだり、コメントを記入したりできる。これらにより、ネットワーク知識のないエンドユーザーでもLANを容易に管理できるようになった。構成図をツリー上にして表示、印刷できる一覧マップもよく使われる機能だという。
スナップショットは、ネットワークの構成を保存しておき、現状のネットワーク構成がどう違うのかを図示してくれる機能だ。スナップショットと現状の構成を比較することで、ネットワークに接続されてくる未登録端末を把握したり、変更された構成をもとに戻す際の参考にしたりといった使い方ができる。たとえば、LANケーブルや電源ケーブルが抜けてしまったり、LANケーブルの接続ポートが変更されてしまったときに、その異常を通知することが可能だ。
現在、これらのWeb GUIは、RTX1200/RTX810/NVR500/FWX120向けのスイッチ制御GUI、RTX1210向けのLANマップ、2015年に提供したインテリジェントL2スイッチSWX2300向けの「LANマップ Light」の3つが提供されている。
平野氏はLANマップのメリットとして、エンドユーザーへのわかりやすさを挙げる。
「LAN管理というと、トラブル対応や管理の効率化など、管理者にとってのメリットが強いものでした。一方、LANマップは、専門的な知識がなくてもLANを管理することができるため、エンドユーザーにとってのメリットも大きい。現場の担当者がほしい情報を自分ですぐに得ることができるので、無用なダウンタイムを短くすることにもつながります。スナップショットや通知機能などを使うと、これまで管理者が対応していた障害を、LANマップが自ら見つけてエンドユーザーに知らせてくれます。ユーザーはその分、本来の業務に集中することができるようになるのです」
今後IoT化が進むと、LANにつながる端末はさらに増え、効率的なネットワーク管理と安定したアクセス環境の整備がますます求められるようになる。LANマップは、LANを管理する必要性のある中小企業にとって欠かせない機能になるといっても過言ではない。
新井田氏は、LANマップが提供する機能をうまく使うことで、顧客の直接の価値にもつながるのではないかと指摘する。「お客さまの価値を引き出すうえで重要なのは、コミュニケーションだと思います。ご要望をしっかりと聞き、一緒に考えながら、新しい機能や製品を創りだしていければいいと考えています」と、顧客とのコミュニケーションをこれからも続けていくことを強調した。
※1:試作機能をデモンストレーションしヒアリングする事例
ヤマハのスイッチ「SWX2200」活用術 - マルカン酢の場合
(マイナビニュース広告企画:提供 ヤマハ)
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