団塊世代の大量退職が話題となった、「2012年問題」の"熟練技術者の技能継承"に限らず、日常業務にも継承や属人化の課題は数多く潜んでいる。例えば、従業員の勤務シフト作成では、各自のスキルや連続勤務時間、休暇申請など、多くの条件を加味しながら、公平で不満の出ないようにシフトを組む必要がある。そのため、シフトづくりにはそれなりの経験とコツが必要となり、こうしたノウハウを有する人物が毎回担当する機会が増え、そのノウハウを共有する機会がないまま、その人物が突然リタイアしてしまうと、現場は混乱を避けられない。生産性も社員の士気も低下しかねないし、無理なシフトを継続していれば現場の負担は大きくなる。
現場で発生する組み合わせ問題とは?
こうしたシフト作成と同様、いかにベターな組み合わせを選び出せるかという問題は、ビジネスの最前線に数多く存在する。物流業で言えば、数ある配送ルートの中からどのルートを選べば配送時間や燃料消費を抑制できるか、製造業なら、決まった形状の素材から複数のパーツを切り出す際、どのパーツとどのパーツを、どの向きで切り出せば無駄がないのかなど、業種を問わずさまざまなシーンで「組み合わせ方」が仕事の効率を左右している。
このような組み合わせ問題に対し、2015年4月、レッドハットはビジネスルール管理システムRed Hat JBoss BRMS 6.1に、新たなエンジンBusiness Resource Planner機能(ビジネスリソースプランナー)を搭載して解決に取り組んでいる。複雑な組み合わせ問題に幅広く対応し、業務の効率化と生産性向上に役立つというこの機能について、提供元であるレッドハットと、導入支援を担当するSCSKに詳細を聞いた。
限られた時間内に、より良い組み合わせを見つけ出す
組み合わせの問題で一番のネックになっているのは、そのパターンの多さだとSCSKの富杉氏はいう。
「例えば20箇所の配送先を回るルートの組み合わせは240京(24×10の25乗)あり、1秒間に1万ルートを計算したとしてもすべてを解くのに760万年もかかってしまう。すべてのルートを計算して比較するのは、現実的には不可能です」
そこでBusiness Resource Planner機能では、スコアリング評価で「よりよい解」を選び出す方法を提供している。配送ルートを選び出す場合を例に、エンジン内で行われていることを簡単に説明しよう。まずBusiness Resource Planner機能に、初期解にあたる1つの配送ルートを入力する。そのルートが配送業務の制約事項にあたらないかをルールで評価する。評価基準として用いるのは、「トラックが積める最大積載量を超えていないか」「荷の到着指定時刻を守れているか」「24時以降の残業はなるべくさける」など、ユーザーがRed Hat JBoss BRMS上で設定したルールだ。それらのルールにマッチするとスコアが減点される。そして総合的に高いスコアを得た組み合わせをベースに、組み合わせ方を組み込まれたアルゴリズムにより再修正し、改めてスコアリングを行う……こうした手順を1秒に数千回繰り返すことで、最適なルートに近づけていくのだ。
計算を繰り返していくと、スコアの伸び率は次第に低くなっていく。つまり「これ以上の高スコアが出るルートはない」という状態に近づいていく。全部のパターンをチェックすることはできないとしても、ユーザーが指定した時間内に計算した組み合わせの中で、最もユーザーの希望に則した(ルールにマッチした)ルートを手に入れることができる。
幅広い業務で、作業の効率化・生産性向上に有用
Business Resource Planner機能は、先に例を挙げた勤務シフトの作成や素材のカッティング・パターン決定の他にも、施設や倉庫などの利用管理、組み立てラインのジョブスケジューリングなど、組み合わせ問題を持つ業務の多くで効果を発揮できると、レッドハットおよびSCSK両社は考えている。実際、リリース以降多くの企業が関心を示し、すでにいくつかの企業では、導入に向けた動きが始まっているという。
「Business Resource Planner機能導入時には、お客様の業務をヒアリングするところからはじめます。これまで人がやっていたことを明文化・システム化するのは難しいことですが、ヒアリングで得た情報を、Red Hat JBoss BRMSにルールとして設定することで、より良い組み合わせを見つけ出すための精度をあげることができます」(富杉氏)
頻繁なルール変更にも対応するBRMS
Business Resource Planner機能のプラットフォームとなるRed Hat JBoss BRMSは、現在国内のBRMS市場でも大きなシェアを誇るミドルウェアだが、そもそもBRMS(Business Rule Management System)とはどういうものなのか。
「従来のシステム開発では、入力されたデータをIF~THEN~ELSEで順番に処理していき、最終的にアクションにつなげるというタイプの手続き型プログラムが書かれていました。しかし条件が複雑化していくと、俗にいうスパゲティコードとなりメンテナンスが困難です。それに対してRed Hat JBoss BRMSは"こういう場合にはこういうアクションをする" (WHEN~THEN)というルールを用いる、宣言型であるのが特長ですね」とレッドハットの駒澤氏はいう。
ルールは従来のプログラムの中からルール部分を外だしにしてディシジョンテーブルなどで管理しているため、変更や追加、削除があった場合は、該当するルールのみに手を加えればいい。従来のプログラムで書かれたシステムのように、一箇所を修正するために全体を見直す必要はない。このメリットの故に、次々と新サービスをつくっている通信会社や、保険会社での医務査定、製造業での生産管理など、変更が多く複雑なロジックがある業務、ニーズや環境の変化にいち早く対応しなければならないビジネスに、BRMSは重宝されている。またそれ以外の企業でも、既存のシステム、特にCOBOL(※)などで構築したレガシーシステムをリプレイスするケースが増えてきているという。
(※)50年以上前に事務処理用に開発されたプログラミング言語
簡単なルール設定と低コストで選ばれるBRMS
BRMS製品はいくつもの企業からリリースされているが、Red Hat JBoss BRMSが高いシェアを獲得できている理由はどこにあるのだろう。
「エクセルで作成したデシジョンテーブル(ルールの設計書)を、プログラムとして変換できるというのが、Red Hat JBoss BRMSの大きな特長です。仕様書から詳細設計書に落とし込み、開発してテストするという部分の時間を一気に圧縮できます」(駒澤氏)
Red Hat JBoss BRMSを採り入れたアジャイル開発だと、およそ3割もの工数削減、保守開発においてはピンポイントで特定のエクセル値(ルール)を変えるだけでシステムの振る舞いを変えることができるため、工数を8割削減できる場合もあるという。
「Red Hat JBoss BRMSはそもそもオープンソースソフトウェア(OSS)なので、他社製品と比べ初期コストが最大1/10になるケースもあり得るのも、シェアを伸ばしている理由といえるでしょう」とSCSKの加藤氏は語る。
余談だが、近年ハードウェアの価格が下がり、逆に性能が伸びていることも導入に拍車をかけているようだ。Business Resource Planner機能は、問題の性質上並列化が難しく、単体のCPU性能が重視される処理となる。このような処理に最適なプラットフォームとして、IBM Power Systems(POWER 8プロセッサー搭載)は、IAサーバと同程度の価格で、膨大な組み合わせ計算を高速に行える高いクロック数、CPUとメモリ間のバンド幅が大きく、堅牢性を持っているので高い信頼性を提供できる。
作業の自動化で、新たなビジネスチャンスを
「扱うデータが多くなってくると、その処理は自動化して人間が介在しなくてもいいようにする必要が出てきます。昔と違いハードウェアやネットワークの性能向上、オープンソースソフトウェアが出てきていることもあり、従来の設計方式ではなく新しい設計方式を取り入れていくことが必要であり、その中でもRed Hat JBoss BRMSのルールエンジン機能やBusiness Resource Planner機能は、既存のシステムの開発・運用面の効率化だけでなく、新規ビジネスのIoTやビックデータなどにも活用できる」と話すのはレッドハットの中澤氏だ。
なお、Red Hat JBoss BRMSのBusiness Resource Planner機能の導入に関しては、有料ではあるがSCSKが導入ワークショップを用意しており、ルールエンジン機能の導入にあたっては、無料で簡易アセスメントを行うサービスも提供している。これはBRMSの導入が貴社の業務に有効か否かを調査するものだ。有効だと確認を取った上で概念実証試験に進めば、無駄な投資になるかもしれないという不安も払拭できる。ビジネスルールの度重なる変更作業に追われる情報システム部門の方、属人化した日常業務を改善したいという方は、一度、このアセスメントを受けてみてはいかがだろうか。
Red Hat JBoss BRMSをもっと知りたい方は
詳細な資料はこちらよりダウンロードできます。
photograph = Yui Kanai
(マイナビニュース広告企画:提供 SCSK、レッドハット)
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