11月12日(木)に、コングレスクエア日本橋で行われた、一般社団法人 日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)主催の「CDOカンファレンス 2015 ~デジタルビジネス時代を切り開く~」。蓄積したデータをいかに事業へと役立てるか、その役割を担うCDO(Chief Data Officer)についてさまざまな角度から解説した日本初のカンファレンスだ。

「近年、デジタルの世界では破壊的なイノベーションが次々と起きており、それらがITの世界のみならず様々な業種のビジネスに影響を与えている」と語るのは、本カンファレンスに登壇した、トレードシフトジャパンのゼネラルマネジャーの菊池孝明氏だ。

こうした状況の中、企業はどのように競争力を高め、時代のトレンドに合わせた方策を取ればよいのか。実際に起きている事例を基に、同社が考えるこれからの収益戦略について、「50万社のビジネスで見えたデジタル・ディスラプション時代の収益戦略」と題した講演を行った。

モノがモノに取って代わった従来のイノベーション

菊池氏の講演に来場者も熱心に耳を傾けていた

菊池氏はまず、デジタル・ディスラプションを語る上で、従来のイノベーションとの違いにカメラを例に挙げて解説。1839年に発明され、150年以上にわたり進化を続けてきたカメラにもデジタル化の波が押し寄せ、1990年には世界で初めて市販用のデジタルカメラが登場。当初は価格や画質などがフィルムカメラに遠く及ばなかったものの、それらの課題を克服するとともに、撮った写真をその場で確認できるといった新しい付加価値を提供できたことによって爆発的に普及し、2002年にはフィルムカメラの販売数を上回った。

「注目すべき点は、デジタルカメラは従来のカメラ市場を置き換えただけでなく、今までカメラを持っていなかったユーザー層を獲得し、市場を3倍に拡大したことだ」と菊池氏。短期間でフィルムカメラの市場を完全に破壊してしまったことを、ハーバード・ビジネススクールのクレイトン・クリステンセン氏の著書『イノベーションのジレンマ』の中で語られている破壊的イノベーションの理論を使って説明した。

その後、デジカメの隆盛も長くは続かず、2014年におけるデジタルカメラ販売数は、フィルムカメラの最盛期に満たないほど落ち込んでいる。その原因はスマートフォンの台頭だ。フィルムカメラを淘汰したデジカメは、全く製品分類の異なるスマートフォンの登場によって、自らが拡大した市場を塗り替えられてしまったのだ。

こうしたハイテク産業における進化のスピードはインテル創業者のゴードン・ムーア氏が50年前に唱えた「ムーアの法則」によって説明されている。近年では毎年のようにムーアの法則の限界が叫ばれているが、今年になってIBMが7ナノメートルのチップの試作に成功し、法則が2018年以降まで続くと予想されている。指数関数的なスピードでイノベーションが起き、過去のものがあっという間に陳腐化していく状況はこれからも続くのだ。そして、その勢いは今やITやハイテク以外の産業にも大きな影響を与えていくことになる。

それを象徴する例として菊池氏が挙げたのは、米国のベンチャーが2014年に発表した世界初の3Dプリンターで作られた自動車だ。3Dプリンターの自由な造形技術により、複雑な形状の部品を1部品として作製することができるため、従来2万点以上と言われる自動車の部品がわずか50程度の部品で作れてしまう。また、このベンチャーは各地に3Dプリンターの工場を配し、地産地消で自社のシェア拡大を狙っている。「グローバルで非常に裾野が広いサプライチェーンを持つ自動車業界に対し、コストや機動性の面で圧倒的な優位がある」と菊池氏。ハイテク技術が電子製品だけでなく、製造プロセスのイノベーションによって、既存産業を脅かすという状況がすでに生まれているのだ。

デジタル・ディスラプションは「プロセス」を変える

トレードシフトジャパン ゼネラルマネジャー 菊池孝明氏

このように従来のイノベーションはフィルムカメラがデジカメ、デジカメからスマートフォンと、モノがモノに取って代わるという物理的な手段で行われてきた。3Dプリンターの例でも、プロセスを置き換えるための道具は物理的だ。そのため、技術開発から製品開発、量産に至るまでには大きな投資が必要で、イノベーションを起こすことが出来るプレイヤーも限られていた。しかし、デジタルの場合はどうか。すでに世の中には無料で様々なことを実現するデジタルプラットフォームが増えている。「モノをデジタルで置き換えることはできないが、モノを作ったりサービスを提供するプロセスはデジタル化できる。そして低コストのプラットフォームを活用し、今までの10倍以上のプレイヤーが、簡単に、そして非常に低いコストでイノベーションを発生させていく」と菊池氏はいう。

こうしたデジタルによる破壊的なプロセスのイノベーションであるデジタル・ディスラプションは、今や世界中で業界地図を書き換えようとしている。例えば、タクシーの配車アプリを提供する「Uber」は、一般ドライバーでも規定の基準をクリアすればUberの運転者として登録され、空いている時間にタクシーの半分程度の運賃で利用者を乗せることができる「uberX」サービスを提供中だ(uberXは日本ではサービス提供する認可が下りていない)。一般ドライバーが旅客を乗せて運賃を取る、いわゆる「白タク」は安全性や金銭トラブルなどの理由から禁止されていた。しかし、アプリからクレジットカードで支払う仕組みを採用することで、車内での金銭の受け渡しをなくし、さらに利用者のドライバー評価システムにより自然と悪質なドライバーが淘汰されていくという仕組みを採用することで課題をクリアした。2009年にサービスを開始し、6年で時価総額が約6兆円を超える企業にまで成長した。

もう1つの事例として紹介したのは、融資型のクラウドファウンディングサービス「Lending Club」だ。金融機関を通さず、個人の借り手と個人の投資家をマッチングさせるというもので、借り手は安い金利で借りられる、オンラインで簡単に申請できる、投資家も銀行に預けているよりも高い年利、毎月利息を受け取れるというメリットがある。株式よりリスクの低い投資対象として広まり、2014年にIPOし、今や時価総額は1兆円を超えている。

「彼らが一体何をディスラプトするのか。Uberの普及により、消費者はタクシーや他の交通機関に乗らなくなり、交通機関近隣の小売店なども利用しなくなり、利便性がさらに高まれば最終的には自動車を買わなくなる」と菊池氏は指摘。ディスラプションの脅威にさらされているのは、決してタクシー会社や交通機関だけではないのだ。

市場へのインパクト

顧客ニーズの正確な把握こそ、収益のチャンスに

では、何故大企業が出遅れているのか。この理由をフォレスター・リサーチの提言を引用しながら、菊池氏は独自の視点で国内企業におけるポイントとして2つ指摘した。1つは、顧客や他社を含めたバリューチェーン全体の情報を正確に把握できていない点だ。それについて菊池氏は「国内企業が取引先やその上流の企業を本当に意識するのは、何か問題やスキャンダルがあった時だけだ」と説明。一方、ディスラプターたちは消費者ニーズや業界の状況を含めたバリューチェーン全体をしっかりと理解し、最新のテクノロジーを活用してバリューチェーンにおけるニーズと現状のギャップを埋めるサービスを提供している。そしてもう1つは、プロセスや体質が硬直化して動けない点だ。菊池氏は、「特にビジネス変革のためのIT投資の重要性について、経営層や管理職以上のマネジャーの知識と認識は、欧米企業のそれと比べかなり遅れている」と電子情報技術産業協会によるアンケート結果と自身の経験を踏まえて語る。

デジタル・ディスラプターの着眼点

こうした現状をふまえ、デジタル改革に乗り出した大企業も登場している。アメリカのNIKE(ナイキ)は2000年代中盤にスポーツシューズにチップを埋め込み、そこからの運動データをiPodに集められるようにすることで、利用者が自分の運動履歴を把握し、そこから運動意欲を高められるようなサービスを開始。ナイキはユーザーが常に持ち歩くiPodという端末をプラットフォームとして利用することで、自社で端末を開発することなく、低い投資でこのサービスを実現した。また近年ではスマートフォンでトレーナーのビデオが見られるアプリなどもリリース。これらの取り組みによってナイキは従来のアパレルメーカーが得ることが難しかった消費者のデータを直接獲得し、そこから得られるデータを製品開発へとつなげているほか、消費者がナイキブランドを選び続けるような仕組みを作り上げている。そして、それらを従来と比べて非常に低い開発コストで実現している。

2015年10月にシカゴで行われた「GeekWire Summit 2015」では、ナイキのCOOがデジタルアパレルを加速していくと宣言。菊池氏は「彼の話で印象深いのは、シューズ自体をナイキが製造しない日がくるかもしれないと考えているという点だ。将来、消費者はシューズを買うのではなく、ナイキのサイトからデジタルファイルとなったシューズの設計書をダウンロードし、家にある3Dプリンターで自由に作るという時代を見据えている」と話す。大企業であってもデジタルの先進企業はデジタル・ディスラプションを自ら起こし、収益を拡大するチャンスと捉えているのだ。

菊池氏はCDOが今後考えるべき収益戦略として、自社内の膨大なデータからの分析や抽出と言ったビッグデータの解析のみならず、ディスラプターたちやナイキがしているように、デジタルの力を使って新しい顧客接点を作りだすべきだと強調。そこから得たデータを活用し、競争優位性を構築すべきではないかと提案している。興味のある企業は、トレードシフトジャパンに相談してみるとよいだろう。

BtoBのソーシャルネットワークを提供するトレードシフト

トレードシフトは創業わずか5年で190カ国50万社が参加するまでに成長した、企業向けのビジネスソーシャルプラットフォームを展開。2015年にはダボスで行われた世界経済フォーラムのイニシアチブにて2015年度のデジタル・ディスラプション賞を受賞。「BtoBのFacebook」とも呼ばれ、企業同士でさまざまな情報を交換し、デジタルの世界で企業を繋げるという思想のもとで運営している。

ビジネスのトランザクションの場を提供し、基本的なサービスは無料で利用可能。何億円もするシステムを購入するという時代は終わり、必要な時に必要なだけの機能をアプリで購入し、利用する。消費者がスマートフォンで当たり前に行っている仕組みが、BtoBにも適用される時代となったのだ。

トレードシフトはデジタル・ディスラプションを起こしたいという企業をサポートするプラットフォームといえよう。我こそはという企業は同社と話してみるとよいだろう。

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