「Zabbix Conference Japan 2015」が11月20日、東京・マイナビルームにて開催された。オープンソースの統合監視ソリューション「Zabbix」に関する情報共有を目的として、日本では年に1回開かれており、今回で通算3回目となる。当日はユーザー企業やパートナー企業、導入検討中の企業など約200名以上の参加者があり、Zabbixの好評ぶりと、今後への期待の大きさを覗わせた。

カンファレンスでは、Zabbixの開発元であるラトビアのZabbix LLCから、創設者でありCEOも務めるAlexei Vladishev氏が来日し、オープニングスピーチを行ったのをはじめ、パートナー企業、導入企業の講演者10名が登壇し、導入の成果や活用事例が語られた。 マイナビニュースでは、その概要を2回に分けてお届けする。

会場は沢山の参加者で埋め尽くされた

全世界で100社を超えるパートナー、アメリカ支社も設立し、サポート体制を強化

Alexei Vladishev氏はオープニングスピーチで、「2015年の出来事」として3つの点を挙げた。

1つ目は、全世界でパートナー企業が100社を超えたこと。Zabbixにとって、顧客のニーズを把握するために、パートナー企業は重要な存在だ。そのニーズを開発のロードマップに反映させることで、Zabbixは成長してきた経緯がある。

2つ目はアメリカ支社の設立。リガ(ラトビア)、東京、NYという3拠点体制になる。グローバル展開している企業にとって、ローカル・サポートが充実することは、運用上の安心にもつながるだろう。

そして3つ目は、Webサイト「share.zabbix.com」の公開だ。Zabbixコミュニティでつくられたテンプレートやモジュール、インテグレートのノウハウなどを共有するためのレポジトリー(情報開示室)の役割を果たす。検索ボックスにキーワードを入れると、関連するテンプレートや情報を見つけられるため、既知の課題への解決策や、ニーズが高い機能のテンプレートなどは、ここで入手できる(ただしアップされているリソースは公式なものではないので、Zabbix社からのサポートは受けられない)。

Zabbix LLC 創設者兼CEO Alexei Vladishev氏

世界に分散した大規模環境でも導入が進むZabbix

続いてVladishev氏は、この数年の間に、Zabbixが大規模環境でも利用されるようになってきた事例を紹介した。まずはアリゾナに本社を持つ、ライムライト・ネットワークス社。コンテンツ配信やクラウドストレージサービスなどの大手で、北米、南米、ヨーロッパ、日本、オーストラリアなど、全世界に80の拠点を展開している。分散された環境だが、サーバー、ネットワーク、ルーター、重要なアプリなど、25,000の監視対象をZabbixが受け持っている。さらに90あるプロキシを通じて監視する項目は600万にもおよぶ。

つづいては、アメリカのNPO団体で、DNSやDNSSEC、レジストラの管理などを世界的な規模で行っているICANN。40のプロキシで監視する対象は6万、監視項目は200万におよび、2000万のトリガーを制御している。監視項目1つにつき、平均して10倍ものトリガーがあることが興味深い。技術的観点、ビジネス的観点など、複数の切り口から慎重な監視を実現することで、Zabbixはサービスレベルの維持に貢献しているということだ。

最後の大規模導入事例は、ロシアで小売店を展開しているマグネット。規模はアメリカのウォルマートに匹敵するという大企業だ。監視対象は20万、監視項目は500万、トリガーは200万。これを全国各店舗に置かれたプロキシ11,000台を通じて監視・制御している。

これらの事例に共通するのは、Zabbixサーバー自体は1台であるということ。拠点数に応じて複数のプロキシを利用することで、これだけの監視を単一サーバーでまかなえることがZabbixのスケーラビリティの証明だと、Vladishev氏は語った。

Zabbix 3.0は、「待つ甲斐があるものになる」

昨年のカンファレンスで今年リリース予定とされていたZabbix 3.0について、Vladishev氏は「開発段階は現在アルファ版(α4)ですが、待っていただく甲斐のあるものになる」と自信を見せ、3.0で実装される3大新機能を発表した。

1 暗号化と認証 サーバー:エージェント、サーバー:プロキシ、プロキシ:エージェントのように、Zabbix独自のコミュニケーションを行っている部分をTLS暗号通信化。これでセキュリティをサードパーティの製品に頼ることなく、Zabbixですべてをまかなえる。

2 Webインターフェースの改善 フロントエンドはデザインだけでなく、コードベースでの変更もあり、将来的にはユーザーが自分でホームページやダッシュボードのウィジェットをつくれるようになる。

3 予測機能 例えば、ディスクの空き容量やCPUへの負荷などが、いつごろ閾値に達するのかを予測できる。逆に、一定期間経過後に、ディスクの空き容量がどのくらいになっているかを予測することもできる。
「この機能は将来、Zabbixに機械学習やAIを入れていく最初のステップとして、重要だと考えています」(Vladishev氏)

改善・改良ポイントは多数

NTTコムソリューションズ マネジメントソリューション事業部 福島 崇氏(Zabbix認定トレーナー)

なお、その他の新機能については、パートナー企業であるNTTコムソリューションズの福島 崇氏から、補足がなされた。いくつかピックアップして列記しておこう。

・例外の更新間隔の指定ができる(定時実行のような使い方ができる)
・SNMPのOID(Object Identifier)ディスカバリで、複数のOIDを指定できる
・ログ監視アイテムのデータ型の数字が使える
・反映されているユーザーマクロを確認できる
・Housekeeper(古くなった情報をシステムから定期的に削除する機能)の強制実行機能
・PDB(プログラムデータベース)を利用したクラッシュログの取得機能
・JMX(Java Management Extensions)インターフェースのIPv6サポート

他にも様々な追加・改善があり、既にZabbixを利用しているユーザーにとっては、「痒いところに手が届いた」思いがするかもしれない。

3.0リリースと同時に、日本でのサポートも開始

Zabbix Japan 代表 寺島 広大氏

Zabbix Japanの代表、寺島 広大氏からは、Zabbix 3.0のリリースと同時にサポートを開始、また同社サイトでのWebセミナーも、新バージョンに合わせたものを公開するとし、アップデートや導入のフォローに注力する姿勢を示した。そして今後は日本支社として、エージェントの配布やプロキシのアップデートを自動化するなど、Zabbixをより快適に利用してもらうための対策を講じたり、標準的なテンプレートやスクリプトをZabbix Japanでまとめたりと、自動化と標準化に向けた取り組みを行っていきたいと語った。また、日本国内のパートナー、ユーザーからの機能追加要望を吸い上げ、Zabbix Japanが本社へ開発依頼をすることを約束し、その言葉通り、カンファレンス後の懇親会会場で参加者から要望を集めていた。

更に、昨年アナウンスのあった「グローバルダッシュボード」(複数台のZabbixアプライアンスのイベントを、一画面で表示できるサービス)について、カンファレンス参加者向けに評価版を公開すると発表した。正式なリリースまでには、もう少し洗練させたいというところのようだ。

ユーザー企業によるセッション内容も充実

ユーザー企業のセッションも充実の内容だった。NTTコミュニケーションズからは、同社が提供するグローバルなクラウドサービスEnterprise Cloudの運用にZabbixを利用しているという事例、アーベルソフトからは、Docker監視にZabbixを役立てる取り組み、AWSでZabbixを運用しているクックパッド、その他にも、宮銀コンピューターサービス、クリエーションラインなどが、それぞれの事例を発表し、参加者を聞き入らせていた。 なお、当日の発表資料はこちらで確認できるので、ご一読頂きたい。

次回の記事では、当日のセッションの中から、SRA OSS,Inc.日本支社の「ZabbixでPostgreSQL監視」、ぷらっとホームの「ZabbixでIoT」、TISの「ジョブ管理と監視の融合による効果」の内容を紹介する予定だ。

(マイナビニュース広告企画:提供 Zabbix Japan)

photograph = Kei Ito

[PR]提供:ザビックス