Renesas DevCon 2015のプレビューレポートを含めてこれまで4本ほどレポートをお届けしたが、最後にルネサスエレクトロニクスアメリカの社長であるAli Sebt氏へのインタビューをお届けして同イベントの締めとしたい。Sebt氏は1991年に旧日立セミコンダクタアメリカに入社し、2012年1月よりルネサスエレクトロニクスアメリカの社長を務めているが、さらに2013年10月よりルネサス エレクトロニクス(本社)の執行役員も兼務されている。また同社の「IoT BU(IoT Business Unit)」を率いておられるのも同氏である。

そもそも今回のRenesas DevCon 2015は、単にアメリカ市場を見据えたイベントという位置づけではなく、ルネサスがグローバルマーケットを目指したグローバル企業へと脱皮することを目指したイベントであり、それもあって「Renesas Synergy(TM) Platform」と「ADAS」という2つを大きく取り上げたグローバルなイベントと位置づけされている。このあたりの話を中心にルネサスの未来も含め話をお聞きした。

――最初に「Renesas Synergy Platform」についてお聞かせください。このプラットフォームが現在の構成になった理由をあらためてお話いただければと思います

Chief Executive Officer and President of Renesas Electronics AmericaのAli Sebt氏

Ali Sebt氏(以降、敬称を略しAliと表記):我々は既存のRXやRL78といった顧客を引き続き重要視しているし、RXやRL78は最高のMCUだと私自身も思っている。これは疑う余地も無い。ただし、日本はともかく、それ以外の地域では、RXやRL78をサポートできるパートナー企業が日本に比べて少ないのも事実だ。それに彼らはMCUというハードウェアを選びたいわけではなく、彼らの開発するソフトウェアが快適に動いてくれさえすればよいのだ。その際にかかる時間やコストをできるだけ少なくしたいというのが本当のニーズだ。

では我々は他のMCUベンダとどう差異化していくのか、そのための武器がプラットフォームだった。構成としては、ARMベースのMCUを使用しているが、それは、「Renesas Synergy Platformを選ぶとソフトウェア開発が楽になりますよ」と差異化していこうとした結果であり、そうした環境を追加してソフトウェアオリエンテッド(志向)なプラットフォームにしたのがRenesas Synergy Platformだ。

別の側面もある。知っての通りIoTが市場として急激に伸びつつある。この市場は必ずしも大企業だけでカバーすることは簡単では無い。そのため小さなスタートアップ企業が沢山参入してくることとなる。ところがそうした企業はWebベースの開発には慣れているものの、MCUの事は知らないといったことも珍しくないし、社内に十分な開発リソースがあるとも限らない。こうした小さな企業にとって、ハードからソフトまで包括したプラットフォームが存在していることは、非常に好ましいものとなる。

こうした背景を踏まえて我々はRenesas Synergy Platformをアメリカから本社に提案し、これが認められ、本格的に立ち上げてきた。

――さらにクラウドサービスとして、ZebraとVerizonとの協業も発表されましたよね

Ali:Zebraが「Zatar」と呼ぶIoTクラウドサービスは、特定業種を超えたプラットフォームで、どのようなエンタープライズユーザーにも適用ができる。彼らはロジスティクスとパッケージングのエキスパートであり、それらはどのような業界にも必ず存在しているからだ。我々はZebraと長い間良い関係を築いてきた。そしてこの関係がRenesas SynergyPlatformにも生かされている。ZaterとRenesas Synergy Platformベースの開発キットの組み合わせは、システム開発のリスク低減と開発期間短縮の両面で大きな利点があると我々は考えている。

またVerizonとの協業だが、同社は単に携帯電話網だけではなくイーサネットなどさまざまなネットワークサービスを提供している。さらに携帯電話網も単に繋がるだけではなく、例えばAPIを経由して、ある種のQoS的なサービスを利用する事もできる。IoTには接続性を担保することが必要不可欠だが、Verizonとの協業によりRenesas Synergy Platformは幅広い範囲において、容易にそうした高い信頼を持った接続環境下で活用できるようになる。