メイド・イン・ジャパン・ソフトウェア・コンソーシアム(MIJS)は、2006年8月、サイボウズやソフトブレーンなど、国産ソフトウエアベンダー11社によって設立されたコンソーシアムで、来年には10周年を迎える。そこで、同コンソーシアムのこれまでの活動と今後の方針について、マーケティング委員会の稲葉委員長と鈴木副委員長に、前月末、幕張メッセで開催された「Japan IT Week 秋」の会場で聞いた。
MIJS マーケティング委員会 委員長 稲葉雄一氏(ナレッジスイート 代表取締役社長 兼 CEO)(左)と、MIJS マーケティング委員会 副委員長 鈴木敏秀氏(システム インテグレータ 取締役 ObjectBrowser本部長)(右) |
MIJSが目指しているのは、「日本で創られるソフトウェアを世界に提供して行こう」、「世界で通用する力を個々の開発企業がつけていこう」というものだ。
コンソーシアムには、意思決定機関である理事会のメンバーである正会員と、理事会の決定にしたがって行動をともにする準会員がおり、現在は、正会員17社と準会員54社の計70社ほどが参加している。コンソーシアムには、日立製作所、NTTコミュニケーションズなどの大手企業や、セールスフォース・ドットコムといった外資系企業も参加している。
同コンソーシアムでは設立からこれまでの9年間で、成都市ソフトウェア協会とのアライアンスのほか、中華民国情報サービス産業協会(CISA)、China IT Services Innovation Allianceなどと覚書を交わし、さまざまなイベントを共同で開催している。また、海外で販売する際のローカライズに関しても、これらの組織と協力しながら行うなど、成果を挙げている。
コンソーシアムで活動することのメリットを、MIJS マーケティング委員会 副委員長 鈴木敏秀氏(システム インテグレータ 取締役 ObjectBrowser本部長)は、「一社ではこういった組織と連携することは難しいですが、コンソーソアムとして動くことで、連携も可能になります。海外でのイベントなども、コンソーシアムだから費用も折半しながらできたと思います」と語る。
コンソーシアムはこれまで、上海、シンガポール、米国に拠点を持ち、そこで現地での売上データ等、実際の数字をもとに実践的な戦略会議を定期的に実施する「グローバル委員会」、エンタープライズ系エンジニアの技術力向上を目的とし、技術者の情報交換やクラウドなどに関する最先端技術の勉強会などを開催する「製品技術強化委員会」、ビジネスを取り巻く環境が大きく変化するなか、この時代を生き抜き、グローバル化を目指す企業が直面する個々の切実な課題に取り組み、その経営力を企業の内部から強化する「経営力向上委員会」を中心に活動してきた。そして、同コンソーシアムが最近力を注ぎつつあるのが、昨年から活動を開始した「マーケティング委員会」だ。
マーケティング委員会の活動を、MIJS マーケティング委員会 委員長 稲葉雄一氏(ナレッジスイート 代表取締役社長 兼 CEO)は、「MIJSはこれまで、海外をキーワードに製品技術やパッケージビジネスを考え、世界に通じる製品を開発するための取り組みをしてきました。さらに、昨年からはマーケティング委員会が新たに設立され、日本との商流やビジネスモデルの違いを研究しながらチャレンジを行っています。例えば、海外で展示会を開催したり、海外の団体と一緒に協力しながらセミナーを開催したりして、海外のマーケットを知るための動きを行っています」と説明する。
同氏はマーケティング委員会を設立した背景を次のように語った。
「米国ではどの企業にもマーケティング部門が必ずありますが、国内のBtoB企業にはないところが多い。米国ではマーケティングによって製品が売れますが、日本はまだまだマーケティングでは製品が売れる環境になっていないと思います。ですから、MIJSによって、痒いところに手が届くという日本のソフトウェアの良さを世界に訴えていきたいと思います」(稲葉氏)
さらに副委員長である鈴木氏も、「米国にはSIerさんはいませんので、顧客はパッケージソフトの仕様に業務を合わせようという意識があります。日本はSIerも多く、顧客からの要望も多いので、それに応えようとしてきました。また、ユーザービリティ、操作性は、日本のほうが細かい作業が得意で、品質も優れていると思います。ただ、マーケティングは下手だと思います。それを、MIJSと一緒にやっていくことで補おうとしています。マーケイング委員会は新しい組織ですが、多くのメンバーが参加しており、MIJSでマーケティングを学びたいという意欲を持っています」と語る。
稲葉氏はマーケティング委員会を、実験場だと説明する。
「MIJSのメンバーが、自分の会社でマーケティング予算を使って失敗すれば、自分の責任になりますが、MIJSの予算を使ってやれば、成功体験も失敗体験も自社に持ち帰ることができます。MIJSは、体験を自分たちのノウハウに置き換える実験の場として活用してもらえればと思います」(稲葉氏)
たとえば、オンラインセミナーの開催では、視聴した人にフォローアップメールを投げ、どれくらいの人が資料をダウンロードし、結果、どれくらいが成約に結びついたのかをメンバー間で情報共有しているほか、セミナーの開催時間も、早朝、昼間、夜間などと変えて反応を見ているという
「過去には、事例しか話さないセミナーもやりましたが、好評でした」(鈴木氏)
さらに、「Japan IT Week 秋」にコンソーシアムとして出展についても、成約情報をメンバーで共有しているという。
「今回のイベントでも、各社がそれぞれのブースの位置で、資料を何枚配布して、商談は何件で、最終的な成約が何件なのかをすべて共有しています。それによってうまくいったやり方を共有しています。それがコンソーシアムの強みだと思います」(稲葉氏)
また、マーケティング委員会は、海外だけでなく、日本での情報発信にも注力している。
「MIJSに入会するには理事会の承認が必要など、だれでも加入できるわけではありません。これによって、国内においても、MIJSに加盟している企業が提供してソフトであれば安心して使えることを、国内においても発信していきたいと思います。マーケティング委員会は、MIJSの看板となり、参加している企業の魅力を伝えていきたいと思っています」(稲葉氏)
ただ、世の中はクラウドへのシフトが進み、10年目を迎えるにあたり、MIJSの活動も変わりつつある。
「ソフトウェアもパッケージモデルからクラウドサービスモデルも含めたものになりつつあり、MIJSも考え方を変えていかなければなりません。そこで、10周年を迎えることをきっかけに、改革に動き出そうとしています。世の中がパッケージからクラウドのサービス型に変化するなかで、売り方や代理店とのつきあい方も変わってきます、今後は、このあたりを勉強し、新しいスキームを生み出すためのワークショップを行おうと思っています」(稲葉氏)
さらに鈴木氏も、「9年前は競合は受託開発であったり海外メーカーであったりしましたが、最近ではクラウドが台頭し、海外のベンダーであるセールスフォースと提携したりと、環境が変わってきました。それによって、宣伝やマーケティングのやり方も変わってきます。そういったものをMIJSで一緒に学んでいけるのが、コンソーシアムのメリットだと思います。今後は、パッケージソフトの品質で日本は負けていないという以外のメッセージも出していこうと思います」と同コンソーシアムの変革の必要性を語った。
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