2015年3月、中国における技術開発力を強化するため、地域統括会社である豊田紡織(中国)有限公司の移転・拡充を行った、トヨタ紡織株式会社様。同社は、自動車のシートやドアトリム、天井などの内装品を中心に、フィルターやパワートレーン機器部品なども製造するトヨタグループの企業。トヨタ車の内装サプライヤー事業を展開するほか、新幹線や航空機のシートなども手がけています。グローバル展開しつつ成長した同社が、中国拠点でインフラ関連システムの刷新に着手した目的とは何か? KELとの関係も含め紹介します。

離れていた中国の本社拠点を集約

トヨタ紡織株式会社 常務役員、IT担当役員 角田 浩樹氏

中国での生産を開始したのは1995年。その後、上海に統括会社を置き、中国各地の生産工場や日本との連携を密に取りながら、事業を展開してきました。事業の成長に合わせて中国の人員が増加し、当初の拠点のみでは手狭になったことから、道を挟んだ2つの建物を利用していました。これを集約して、豊田紡織(中国)有限公司を移転・拡充する新社屋の建設に着手したのが、2013年5月のことです。

「近年は中国の政策として、生産拠点として使うだけでなく、中国で開発から製造までを一貫して行うようにという方針になっていました。これに対応する必要があったので、自社ビル内で開発から設計、製造、評価に至るまでを、ワンストップで行えるようにしようとしたのです」と語るのは、トヨタ紡織株式会社様(以降、トヨタ紡織様)の常務役員でありIT担当役員でもある角田浩樹氏(以降、角田氏)です。

この新社屋の建設にあたって、ネットワークインフラの構築をKELが担当することになりました。

業務効率を向上させる試み

豊田紡織(中国)有限公司 管理部 副部長 秋山一仁氏

「中国と日本ではいろいろな慣習が違います。信頼できる日本企業であり、中国での実績も十分持っているということでKELに依頼を決めました。現地では計画通りに進みづらいところなども、KELが十分サポートしてくれました」と角田氏は語ります。

日本とは違い、本体工事の業者と内装工事の業者がそれぞれ動く特別なルールの中、タイトな工期での建設となります。「例えば、工事スケジュールやフロア設計が途中で変わり、インフラの仕様も変更しなくてはならないなどということもありました」と語るのは、現地で指揮を取った豊田紡織(中国)有限公司 管理部 副部長の秋山一仁氏(以降、秋山氏)です。こうした事態に対応するため、KELは専任の担当者を配置。フレキシブルに対応したことで、狙い通りに完成することができました。「突然の仕様変更でも的確に指示していただけたので本当に助かりました」と秋山氏はいいます。

こうして豊田紡織(中国)の本社・R&Dセンターは、従来と比較して開発スペースを約3倍に拡張。評価設備も充実させました。社屋は広いフロアの中に各部署が混在しており、開発や設計といった機密情報を扱う部門と、事務的な作業を行う部門とが同じフロア内に存在する状態になっています。人と人とのコミュニケーションの垣根を外すという意味で壁や柱の少ない構造が採用されたのですが、そのためネットワークインフラの構築には苦労があったといいます。「フロアの風通しは良くなったのですが、そのことがネットワーク環境を構築する作業を難しくしてしまったようです。また、オフィスレイアウトが最終的に決定するまで、変更なども頻繁にあったのですが、これにも迅速に対応してくれました」と角田氏はKELの対応を評価しています。

賃貸オフィスの時には存在した、電気関係やネットワークが不安定になったり、断絶したりするというようなトラブルもなくなり、豊田紡織(中国)の本社・R&DセンターではITのスピードが速くなったと、高い評価も得ることができるようになりました。

より高品質な情報共有基盤を求めて

ネットワークインフラの構築と共にKELが手がけたのが、高品位TV会議システムの構築です。トヨタ紡織様では新設した豊田紡織(中国)の本社・R&Dセンターのほかに、天津や広州など中国に18の拠点を構えています。日本の本社など、連携をとる必要のある拠点数は100を超えており、コミュニケーションには従来からTV会議を活用していたそうです。

「以前のTV会議システムには、トラブルも多くありました。アジアの拠点はネットワーク環境が不安定なこともあり、通話が途切れてしまうこともよくあったのです。15~20拠点が参加する大きな会議では、各拠点からの意見を募っているのに、中国だけ通話が切れてしまって会議が滞るというようなこともありました」と角田氏。「会議中に私のところへ会話品質のクレームが届き、急いで対応しなくてはならない状況もあったぐらいです」と秋山氏も言葉を続けます。新社屋建設に合わせて、この状況を改善するために導入されたのが、高品位TV会議システムです。

KELではCisco Stystems製のTV会議システムに、グースネックマイクを含むAVシステムも導入。音質の良さと通話品質にこだわったTV会議システムを構築しました。システム規模も1.5倍に拡張し、より鮮明に、より聞こえやすい環境の提供に尽力しました。

「以前はハウリングや空調の風切り音がマイクに入るなど、音質の問題もかなりありました。新システムではそうした問題がなく、安定した通話ができています。背景となるカーテンや壁紙の色のせいで、話者の顔が暗くなってしまったり、ほとんど見えなくなってしまったりということもありましたが、そのあたりまで配慮してもらって非常に使いやすいシステムとなりました」と角田氏は語ります。「最初からすべてが良かったわけではありませんでしたが、テスト通話の段階で、機器の調整範囲内で不満な点はすべて解消できました。ある程度、要件に対して余裕のあるシステムなので、安心して使い続けることができそうです」と秋山氏も満足の表情を見せます。

豊田紡織(中国)有限公司のTV会議室

課題を乗り越え、日常として使いやすいシステムへ

トヨタ紡織様では、できるだけ顔を合わせたFace to Faceのコミュニケーションや資料共有を行うようにしているため、TV会議システムの出番は多いといいます。「オフィシャルな役員会議だけで週に数回、日中の本社間の会議は毎日のようにあります。20人対20人の大規模なものから、数人程度が参加する小規模なものまで合わせると相当数の会議に活用しています」と角田氏。300名を超える社員を収容できる大会議室や、重要な決定事項を審議する会議室にはタッチパネル式のリモコンも用意。会議の準備がスムーズに行われる工夫もしています。

「中国では合弁会社も多く、社内の拠点間だけでなく、そういったパートナーとのコミュニケーションも重要になります。そのため従来は日本の本社にしか導入していなかった、マルチアクセスが可能なTV会議システムにしました。地域事業体とのコミュニケーションを活性化したい、という目的も達成することができました」と角田氏はいいます。「日本とは環境が違う現地でシステム導入の担当者になるというのは始めての事態でしたが、KELがたびたび来訪してくれ、知識を共有してくれるなど、万全のサポートをしていただきました。トラブルなく導入作業を終えることができ、システムを使うみなさんに満足してもらえ、うれしく思います」と秋山氏も手ごたえを感じているようです。

日本とは環境が違う国での、インフラ刷新という転換期を無事に終え、今後もグローバルな活躍を続けるトヨタ紡織様。KELも今回培ったノウハウと手厚いサポートを携え、同社を支える存在となり、共に歩んで行きたいと考えています。

トヨタ紡織グループの経営体系

■豊田紡織(中国)有限公司

・所在地 : 上海市浦東新区外高橋意威路169号
・設立 : 2002年3月

豊田紡織(中国)有限公司ホームページ
http://www.toyota-boshoku.com/china/

■トヨタ紡織株式会社

・本社所在地 : 愛知県刈谷市豊田町1丁目1番地
・設立 : 1950年
・従業員数 : 41,509名(連結) 2014年度 就業人数ベース

トヨタ紡織株式会社ホームページ
http://www.toyota-boshoku.com

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