流通・小売業が今後も持続的に成長していくための施策は、「新規顧客を増やす」「LTV(顧客生涯価値)を上げる」「離反率を下げる」の3つに収束される。しかし、少子高齢化が進行し、成熟化が進んでいく日本の市場において、それをいかに実現することができるのだろうか――。成功への鍵となるのは、自社にとって優良顧客とは誰であり何を求めているのか、あるいは将来の優良顧客となる“予備軍”はどこにいるのかを把握し、一歩先のアクションを起こしていく「予測的な顧客分析」である。
誰が優良顧客なのか?
なぜ自社の店舗で買い物をするのか?
日本経済が高度成長を謳歌していた時代、流通・小売業は「より良い商品を取り揃え、売り場をさらに広げていく」という施策を徹底することで、多くの顧客を惹きつけ、売上を伸ばすことができた。
しかし周知のとおり、現在のわが国は少子高齢化が急速なペースで進行する成熟社会である。かつてのような“規模の経済”を追求するのみでは、結局のところ価格競争に陥ってしまい、ビジネスはむしろ縮小していくばかりだ。そうした状況下、「改めてお客様のことを理解することが重要です」と強く訴えるのが、日本IBM アナリティクス事業部SPSS ITスペシャリストの西牧洋一郎氏である。
流通・小売業のどんな企業も、例えば会員カードによる購入履歴などから、誰が優良顧客であるのかといったレベルの把握はできていると思う。だが、その優良顧客がなぜ自社の店舗を訪れているのか、どんな点に魅力を感じて買い物をしているのかといったところまで踏み込んで理解できているだろうか。「現在の優良顧客も高齢化していきます。そうした長期的な時間軸の中で起こるライフステージやライフスタイルの変化に合わせ、お客様に喜んでいただける価値を提案・提供し続けないと、優良顧客もやがては自社の店舗から遠のいてしまいます。
また、どんなお客様が将来の優良顧客となる“予備軍”なのかをしっかり把握し、的確なアクションによって育成を図っていく必要があります。そこでの根幹となるのがデータを通してお客様を理解すること、すなわち予測的な顧客分析なのです」
成功を勝ち取る顧客分析は
「さしすせそ」で成り立つ
実際、ここ数年で多くの流通・小売業が顧客分析の重要性に気づき、自社が保有するビッグデータの活用に向けて取り組みを始めている。 ただ、「そうした取り組みの中には、かなりの勇み足も見られます」と西牧氏は指摘し、データマイニングの伝説的な成果として語り継がれている“紙おむつとビール”の事例を引き合いに出す。米国の大手スーパーマーケット・チェーンで販売データを分析したところ、金曜日の夕刻以降に来店する男性客がビールと一緒に紙おむつを買っていくという相関関係が高いことがわかった。そこで、この2つの商品を並べて陳列したところ、売り上げが劇的に伸びたというものだ。
いまだに多くの流通・小売業が、この事例による“幻想”から抜けきることができずにいる。「自社内にもPOSや会員カード、Webサイトなどから収集した大量データの蓄積がある。ならば、これらのデータをITシステムに投入すれば、いままで気づいていなかった画期的な事実が明らかになるに違いない」と前のめりになっているというのである。そんな都合の良い話がめったにあるわけではなく、「せっかくのデータ分析が失敗に終わる原因となります」と西牧氏は警鐘を鳴らす。 では逆に、成功を勝ち取る顧客分析とはいかなるアプローチによって成し得ることができるのだろうか。ポイントは「どうすればお客様に喜んでいただき、売上につなげることができるのか」という具体的なアクションを念頭に置いたストーリーにあり、西牧氏はその取り組みを「さしすせそ」のキーワードで説明する。さは「Cyclic(循環)」、しは「試行錯誤」、すは「スモールスタート」、せは「説明責任」、そは「想像力(≒妄想力)」である。
例えば「1階の化粧品売り場で買い物をしたお客様の多くが、かなりの頻度で2階の靴売り場で新作をチェックしているようだ」といった、現場の誰もが何となく感じている傾向を分析してみるところから始めればよい。「確かにそうだった」というデータの裏付けが取れれば、経営者や上司の納得を得られ、化粧品売り場のレジで新作の靴のフライヤーや靴のクーポンを渡してみるといったアクションを起こすことができる。
もちろん、期待どおりの反応が得られないことも多々あるが、そうした結果も顧客行動を深く理解するための今後に向けた貴重なデータとなっていく。「要するに顧客分析は一過性のものであってはならず、分析の試行錯誤、仮説-検証のサイクルの繰り返しによって予測精度を高め、自社店舗のファン層の拡大、優良顧客への育成といった課題解決につなげていくことができます」と西牧氏は語る。「上記の「確かにそうだった」のような事例をスモールスタートとして重ねることで、予測分析に関する周囲の信頼や期待が増し、ビジネスの重要なドライバーとなっていくでしょう。これに伴い、データによる裏づけのない意思決定を削減し、目的を効果的に実現するにはどうすればよいかという考え方へとシフトすることが重要です。説明責任を持てないものは業務では使わないということです。スモールスタートを重ねたら、次に取り組むべきは、お客様の傾向や行動に仮説を持ち、その検証を通じて競合にはない新しい施策によって競争優位を築いていくことです。これが想像力(≒妄想力)です。」
IBM Predictive Customer Intelligence
より深い顧客行動の洞察と予測を実現
予測的な顧客分析で成功する「さしすせそ」の取り組みをITでサポートするツールとしてIBMが提供しているのが、「IBM Predictive Customer Intelligence」(以下、PCI)だ。 これまでの多くの流通・小売業で行われてきた顧客分析は、図1に示す顧客データのうち会員カードの申請時に記入してもらった「誰が?(説明データ)」、POSシステムから得られる「何を?(行動に関するデータ)」の2種類のデータに限定されていた。PCIではこれらのデータに加え、過去のキャンペーンへの反応(喜んでくれたか否か)を検証した「どのようにして?(対話データ)」、どんな背景や意図からその商品を購入したのかをヒアリングした「なぜ?(態度に関するデータ)」といったデータもシステムに取り込んだ全方位の分析を可能にしている。これにより、顧客自身さえも認識していないような行動に関する深い洞察と予測の抽出を実現することができるという。
「個々のお客様の“価値”を測定することはできたとしても、もっと“質”に目をつけた顧客データの収集と分析に踏み込んでいかないと、適切なアクションに結びつけることはできません。PCIでは、流通・小売業に向けた業界テンプレートを標準提供するとともに、豊富な経験を有するIBMのコンサルタントが一緒になって戦略とプランを考え、顧客データ収集のスタート時点からサポートします」と西牧氏は強調する。 この取り組みの先で実現するのが、予測的な顧客分析に基づいたアクションの最適化や自動化であり、図2に示すようなロイヤリティと利益率向上、離反ダウン・顧客生涯価値アップ、新規顧客獲得、オファーの最適化といった成果をもたらしていくのである。
尚、下記に、データマイニングツールの選び方について資料をまとめた。マーケティングご担当者やご興味のある方は是非一読いただければと思う。
期待外れにならない「データマイニングツールの選び方」<ビッグデータ分析における3つの困った> |
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