2015年6月、Adobeは主力製品として展開しているサービス「Creative Cloud」のメジャーアップデートを行った。Creative Cloud(以下、CC)にて提供されている全15アプリケーションすべてがバージョンアップするという大きな変更だ。2015年のハードウェア仕様に合わせたアプリの高速化や、時代のニーズに合わせたモバイルアプリ向けクリエイティブツールの追加など、見どころの多いリリースとなっている。
とはいえ、買い切りのパッケージ版が用意されていた最後の製品群「Creative Suite 6」もかなりの高機能を誇っていたため、CCへの移行に踏ん切りがつかないユーザーも多いことだろう。そこで本稿ではこれから5回にわたり、CC 2015の魅力をベンチマークテストにてお伝えしていきたいと思う。なお、比較対象としてCreative Suite 6(以下、CS6)や競合他社の結果も同時に計測している。CC 2015が最新の技術によってどのように変化したかを確認してほしい。
Windows 7およびYosemiteの新旧マシンを検証環境として用意
まずはベンチマークテスト用の検証環境をお伝えしておこう。今回用意したマシンは、Windows 7搭載機としてHPのデスクトップワークステーション「HP Z420 Workstation」(2012年発売)および「HP Z440 Workstation」(2014年発売)を、MAC OS X搭載機としてAppleの「Mac Pro (Mid 2010)」および「Mac Pro (Late 2013)」を用意した。これら新旧モデルを用いてベンチマークテストを行うことで、CPUやグラフィックスカードの進化によるアプリケーションの速度の違い、OSやGPUベンダーによる挙動の特徴などを知ることができるはずだ。なおMac Pro (Mid 2010)に関しては、CC 2015を動作させるため、そしてMac Pro (Late 2013)と同一条件で比較するために、OS X 10.10.4 YosemiteへとOSをアップグレードさせている。
■HP Z420 Workstation |
■HP Z440 Workstation |
■Mac Pro (Mid 2010) |
■Mac Pro (Late 2013) |
ベンチマークテストで見る「Photoshop CC 2015」
それでは、ここからは実際にベンチマークを行った結果を紹介していくことにしよう。第一回として紹介するのは、2Dグラフィックスの代表的なソフトであり、写真をはじめとした画像の加工やイラスト制作に活躍する「Photoshop CC 2015」だ。各ベンチマークテストはそれぞれ20回ほど同じテストを繰り返し、数値の優れている5回のデータを抽出、その平均値を算出している。
大幅に高速化したスポット修復ブラシ
PhotoshopはCS3からグラフィックスカードへの最適化が進められているが、これまでの最適化範囲は全体の描画パフォーマンス向上を主眼としたものだった。しかし細かいツールへの最適化もバージョンアップが行われるごとに強化されている。CC 2015で新たに最適化されたのは、スポット修復ブラシだ。その速度の違いを比べてみよう。
このベンチマークの手順は以下の通り。まずデジタルカメラによって撮影したDNG形式のRAW画像ファイルを開いた状態にして待機。修復したい範囲を選択→スポット修復ブラシで範囲をなぞって不要物を削除→色調補正(レベル補正/トーンカーブ)→フィルターアンシャープマスク)→CMYK変換→別名保存という作業を行った。作業手順は可能な限りアクションとして登録し、保存が完了した時点での時間を測っている。
CC 2015とCS6の速度の違いは、スポット修復ブラシ処理時間の違いがほぼすべてを占めている。CS6では、スポット修復ブラシで選択範囲をなぞった後に処理が始まり、カーソルが作業中を表すマークとなったまましばらく待たされてしまう。しかしCC 2015ではほぼシームレスに次の作業に移ることができるため、まったくストレスを感じない。全体の速度でみるとHP Z420、HP Z440ともに約7.1倍の高速化に成功しており、作業効率が格段にアップすることは間違いなさそうだ。
MAC OS Xでも同様にスポット修復ブラシでの処理速度に大きな違いを感じることができる。CS6ではWindows 7同様、選択範囲をスポット修復ブラシでなぞった後にカーソルが作業中を表すマークとなり、処理完了まで操作を受け付けなくなる。しかしCC 2015では自然に次の作業に移行することが可能だ。全体の速度向上比率こそWindows 7の結果ほどではないものの、体感速度においての向上度合は同様に大きい。
進化するぼかしエフェクトの適用速度
Photoshopのぼかしギャラリーにはバージョンが進むごとに新しい機能が追加されており、実際のカメラでは撮影できない多彩なぼかし効果を写真に付与することができる。CC 2014で「スピンぼかし」や「パスぼかし」などが追加され、CC 2015ではぼかしギャラリー効果にモノクロノイズやカラーノイズを追加することが可能となった。同時に処理の高速化も行われている。まずはこのぼかし効果を比べてみよう。
こちらのベンチマークでは、先のテスト同様のDNG形式ファイルに対して、ぼかしギャラリーの「虹彩絞りぼかし」をCC 2015およびCS6にて初期数値のまま適用。その効果が画像に反映されるまでの速度を測定した。「虹彩絞りぼかし」を選択した理由は、CS6の時点で存在し、CC 2015でも引き続き使用できるためだ。
Windows 7での比較においては、旧機種・新機種それぞれのスペックに応じた順当な結果を見ることができる。HP Z420、HP Z440いずれにおいてもぼかしが適用されるまでの速度は約1.8倍高速化しており、よりスピーディにぼかし作業を行えることがわかる。
MAC OS Xでは、もともとCS6の時点でかなりの適用速度が実現できており、Windows 7に比べると処理速度の伸びはそれほど大きくはなく、それぞれ10%以下だ。とはいえ、両モデルとも着実に速度が向上していることが見て取れる。
細かいツールへの最適化が進められた「Photoshop CC 2015」
Adobe Creative Cloud 2015 ベンチマークレポート Part.1では、機能の追加とともに細かいツールへの最適化が進められたPhotoshop CC 2015についてお伝えした。バージョンアップごとに着実な進化を遂げるAdobe Creative Cloud。賛否両論あれ、サブスクリプションというサービスの形は、バージョンアップの恩恵を最大限に受けられる提供方法であることは間違いない。お手持ちのアプリケーションの速度と比べ、検討材料としてほしい。
Creative Cloudがどれだけ凄いかCS6と比較! 新旧のWindows/Macでチェックしてみた■Part.1:Photoshop編 ~機能の追加とともに細かいツールへの最適化を実現~ ■Part.2:Illustrator編 ~GPUパフォーマンス機能強化、オペレーションの簡略化~ ■Part.3:Lightroom編 ~大量のRAWデータもストレスなく高速に現像可能~ ■Part.4:Premiere編 ~高解像度映像をストレスなく編集し書き出せる~ ■Part.5:InDesign&Dreamweaver編 ~64bitアーキテクチャによりパフォーマンス向上~ |
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