電気計測器 の開発、生産、販売・サービスを行う日置電機株式会社。2015年に創業80周年を迎えた同社は、電圧・電流・抵抗・温湿度 など、多種多様な項目における測定器を市場に提供し続け、日本国内におけるインフラ整備やものづくりの現場において欠かせない存在となっている。
そして2015年6月19日、同社は新たなサービスとして現場支援データマネージャ「Gennect」のリリースを発表した。この「Gennect」は、これまでハードウェアとしての測定器 開発にこだわってきた日置電機が、初めて提供するソフトウェアサービスである。そしてそこには、現在の測定器業界を変革したいという、同社の並々ならぬ想いが込められていた。
本記事では、「Gennect」の企画担当である日置電機株式会社 商品戦略室の宮田雄作氏、そして開発を担当した株式会社アイセルの田形有氏に、開発時の逸話とその想いについて語っていただいた。
日置電機公式サイト。創業80周年を迎える同社は、80周年企画「HIOKI×松本零士氏」特設サイトも設置。日本宇宙少年団(松本零士氏理事長)に協賛する同社は、科学技術発展のため理工学系大学生への奨学金給付や、地域の子供たちとのスポーツを通じた健全育成など、次世代を担う子供たちへの支援を積極的におこなっている。 |
「測定現場のイメージを一新したい!」との想いから生まれたサービス
「Gennect」の構想自体は、2001年の頃からあったとのことだ。
宮田氏「ただ、当時は端末もデスクトップ PCで現在のような無線通信が当たり前の時代ではなかったので、実現は無理だろうと、一度お蔵入りになっていました。ですが、タブレットが普及し、移動体通信や無線LANも日常的に利用されている今なら実現できるのではないか、そう考えて改めて企画してみました。
今回リリースするGennectは、当時想定していたものが100倍になって実現できたと自負しています」
宮田氏は、入社以来、数年ハードウェアの開発業務に就いた後、ずっと商品企画をし続けている。しかし、商品企画についてはこれまでハードウェアに関するものばかりだったという。その宮田氏が、ソフトウェアであるアプリケーションサービス「Gennect」を企画した理由、それは「今の測定現場を変えたい」という強い想いからだった。
宮田氏「例えば、保守点検作業の典型的な例として、測定した数値を一人が読み上げて、もう一人がメモを取る、そんな光景が思い浮かぶことでしょう。そして、メモした数値を事務所に戻ってExcelに手入力する。それが測定現場の現実です。これだけITが普及しているのに、やっていることは完全なアナログ。手間ばかり掛かって残業続き。この状況をなんとかしないと、この業界に未来はないと思っていました」
左から、太陽光発電(PV)専用の絶縁抵抗計「IR4053」、正確さ、高速性を追求した上で何重にもわたる安全保護の仕組みを搭載するデジタルマルチメータ「DT4200シリーズ」、微小な漏れ電流もクランプで測定できるクランプオンリークハイテスタ「3293-50」。いずれも、現場には欠かせない電気の安全を守るためのプロ御用達のツールたち |
一般的に、測定器が活躍する現場は、危険で大変だというイメージがある。そのため、どうしても若い人たちから敬遠されがちな職場になってしまう。だが、測定やメンテナンスは、電気・ガス・水道・交通などのインフラを支えるためになくてはならない存在だ。この分野を担う若い人たちが高いモチベーションを持って出てこなければ、ある意味、日本のインフラは崩れていくのかもしれない。
宮田氏「ですから、この業界のイメージを変えて、若い人や、これまで少なかった女性も参加しやすくなる、そんな現場に変えていきたい。と言いますか変えていかなくてはならない。しかし、ハードウェアである測定器が、現場で関わる部分は10ある工程のうち1や2に過ぎません。業界を変えるためには、全行程を見てサービスを提供しなくてはならない。そのためにはソフトウェアの開発がどうしても必要なのです」
互いに知らないことばかり。”お互いを知るために”連日繰り広げられた擦り合わせ会議
測定の現場を変えるためにソフトウェア開発が必要。しかし、生粋のハードウェア会社である日置電機にはそのノウハウがない。そこで白羽の矢がたったのが、株式会社アイセルである。
田形氏「実は、たまたま弊社主催のiPad活用セミナー に日置電機の方が参加していらっしゃいまして、その縁から宮田さんをご紹介いただきご連絡差し上げることになりました」
宮田氏「いろいろと電話で話しているうちに、いつの間にか意気投合してしまったんですよね。『すぐに会いましょう! 今度、東京行きますから』という感じで(笑)」
新たに開発するソフトウェアは、電気保守業界を変えるためのもの。となると当然、業界のことに対する深い知識が必要となる。だが、アイセルの開発陣にとって電気保守業界からの依頼は初めての経験。当然、知識も経験も足りない。
田形氏「ヒアリングをしていると、全く聞いたことのない専門用語が次々と飛び出してきます。例えば、会話の中にメガー*という単語が出てきて、測定器の世界では普通に使われているものらしいのですが、我々にはわからない。その言葉が何を意味するのか、何度も質問して意味を確認する、その繰り返しでした」
宮田氏「私たちは測定器のプロですが、逆にITに関しては素人です。お互いの分野については、知らないことばかり。でもそれを知らないと、本当の意味で現場に役立つものにはならない。ですから、お互いの知らない部分を埋めるために何度も擦り合わせをしました。説明用のイラストやメモも、たくさん書きましたね」
田形氏「長野にある日置電機さんの研修施設で、打ち合わせ合宿なんてのもやりました。テーブルに模造紙を敷き詰めて、付箋を張りながら意見を出し合って、ほぼ1日ぶっ通しで。大変だったけど、楽しかったです」
宮田氏「21時以降は、飲んでもいいというルールだったんですよ。酔った勢いで議論が白熱して、深夜までやってしまう羽目になりましたけど(笑)」
*メガー:電力回路の絶縁抵抗測定試験に使われる保守点検用電気計測器
「日置電機」にしかできない「新しいサービス」を目指して
日置電機とアイセルが互いに新しいことにチャレンジして生み出された新サービス、それが「Gennect」である。
測定結果をiPadによって現場から直接入力。それをそのままデータベースサーバーに保存するため、事務所に戻ってからの手入力作業が不要になる。その他にも、実際の測定現場で必要となる様々な機能が用意されている。
例えば、過去データを呼び出しての比較。 必要な時に必要な場所で過去のデータとの比較ができることは、測定現場において非常に重要な意味を持つ。また、これまで使用していたExcelのテンプレートがそのまま使えることも大きなポイントである。
宮田氏「日置電機は、他社と同じものは出さない、というのが開発スタイルになっています。それがどんなに市場で売れている製品でも、ちょっと機能を追加しただけとか、簡略化して安くしたという企画は通らないんです。日置電機だからできるもの。そしてお客さんに『これ凄いね』と言ってもらえるもの。そんな製品やサービスを提供していきたい。そしてそのためには、アイセルさんのような新しい分野のパートナーさんが必要不可欠です」
田形氏「今回、世の中に無い新しいサービスを創る!という宮田さんの熱い想いに弊社メンバーも感化され、結果、大きく成長できたと考えています。今回のお話は、現場だけではなく社長や役員も大乗り気で(笑)、全社を挙げて期待感を持ち、進めることができました。おかげで、社内全体の空気が明るくなり、新しいことにチャレンジする風土が生まれてきたような気がしています」
宮田氏「リリース直後に言うのもなんですが、実はすでに新しいバージョンアップの構想があるんですよ」
田形氏「ということは、また合宿ですね(笑)」
Gennectには、ビーコア株式会社開発の自動認識コード「カラービット(colorbit)」※を採用。iPadのカメラで読み込むと、様々な情報が自動で表示される。(※カラービットはビーコア株式会社の登録商標です) |
実際に取材先である同社の電気盤には、カラービットが貼り付けられており、実際の動きを見せていただいた。ご覧のように暗がりでも確実に確認できるので、正確性が求められる電気を取り扱う現場の作業において、大いに活躍できるだろう。 |
測定業界を知り尽くした日置電機と、IT開発の豊富な知識と経験を持つアイセル。両者の知識を出し合い、そして新しいことにチャレンジして生まれた新サービス「Gennect」。 |
取材協力 日置電機株式会社 |
1935年に東京都港区で電気指示計器の製作を開始し、本年創業80周年を迎える。1946年にテスタ1号器となるH甲號回路試験器を発売以来、数多くの計測器を世に送り出し、現在およそ300機種を扱っている。 |
日置電機株式会社のWebサイト |
取材協力 株式会社アイセル |
「ITを通して心豊かな社会を築き、貢献できる企業」を目指す株式会社アイセル。1989年の設立以来、業種業態を問わずあらゆるお客様に業務システムを提供。現在はAppleのパートナーとしてiPadのビジネス活用も推進している。 |
株式会社アイセルのWebサイト |
(マイナビニュース広告企画 提供:株式会社アイセル)
[PR]提供:アイセル