IBMが開発した「コグニティブ・コンピューティング・システム」という、新しい概念のシステム「IBM Watson」。海外での事例は、インターネットで公表されているものも多く、7月30日と31日に開催される「SoftBank World 2015」でも先進的な事例、特にヘルスケアやCRMといった場での採用事例や、日本におけるパートナー制度の詳細とそれによるビジネス構想などが展開される予定だ。本稿では、日本での先進的な事例と、ソフトバンクが考える今後のビジネス構想から、IBM Watsonが持つ可能性について探っていきたい。
7月30日と31日に開催される「SoftBank World 2015」 詳細はこちら
・ソフトバンクが語る、日本における「IBM Watson」のビジネス構想 特集
前編:http://news.mynavi.jp/kikaku/2015/07/24/002/
後編:本記事
人事総務分野におけるWatsonの活用も目指す
「Watsonエコパートナー」として活動するソフトバンクは、自身が「IBM Watson」の導入企業でもある。まず第1の用途は、カスタマーサポートだ。これはコールセンター業務での利用であり、「IBM Watson」の活用例としては比較的わかりやすい部分でもある。
「実は、人事総務部門での活用も検討しています。2015年に日本でローンチするのはQ&Aの機能ですから、これをどう活用するかということになるわけですが、実際にどう使うかについては現在検討の真っ最中です。業務プロセスの問題にどう使うか、と考えると十分使えるのですが、いきなり全体には使えませんからターゲットを絞らなくてはなりません。ソフトバンクが人事総務部門でIBM Watsonをどう使うのか、具体的な話はSoftBank World 2015でご紹介できる予定です」と、ソフトバンク ICT イノベーション本部 Watson事業推進室 ビジネス推進部の部長である、立田雅人氏は語った。
自社活用や先進事例を知見とし、強固なパートナー制度を構築
立田氏によると「IBM Watson」のパートナー制度はすでに固まっているようだ。今回の取材に対し「エクスターナルユースとしては、パートナー制度を構築します。主に、我々がプラットフォームを構築し、その上でサービスを動かすビジネスパートナーを募る形になる予定です。細かなパートナー制度については、これもSoftBank World 2015で発表する予定です」と説明した。ソフトバンクの持つインフラ資産と技術力、そして知見を発揮したパートナー制度だといえよう。知見として気になるのが先進事例だが、具体的に国内ではどのような事例があるのだろうか。
すでに「SoftBank World 2015」での講演も決まっている、日本の先駆的ユーザーとしてFiNC、カラフル・ボード、ビッグデータロボの名前を立田氏は挙げた。
「FiNCはヘルスケア分野での採用です。海外でも事例のある分野ですが、日本ではどのように展開するのかが楽しみですね。カラフル・ボードは現在センシーというユーザーのファッション嗜好を分析して提案するアプリサービスを提供していますが、 ユーザーのファッション嗜好を選ぶ部分での採用になります」と立田氏は概要を語る。ビッグデータロボに関しては「データサイエンティスト向けの採用で、ちょっとほかとは毛色が違うのですが、アカデミックな用途での使い方を知っていただける好例だと思います」とした。
7月30日、31日にて開催される「SoftBank World 2015」では、日本の先駆的ユーザーによるIBM Watsonの事例と、パートナー戦略の詳細について講演されるという |
曖昧検索&一致率の低い回答も示すことも大きな価値
立田氏は自社での活用やさまざまなシーンでの採用について語る中で、「IBM Watson」が曖昧な言葉で検索できることと、一致率が低い回答を示せることを大きな特徴として挙げた。
自然語検索ではどうしてもあいまいな言葉が多くなる。たとえば、ある物語の中で特定のシーンを示してほしいと依頼し、示された回答が期待していた部分ではなかったとしよう。旧来的な検索ならば「1ページ前」や「1000文字前」といった形で具体的に表示しなおす位置を示す必要がある。しかし「IBM Watson」の場合は「もっと前」というような曖昧な言葉が使える。
さらに、回答は一致率が高いものから順に表示される。完全に一致する情報がなくとも回答が表示されるという意味でもあるが、一見正解から遠いようなものでも少しでも可能性があれば示してくれるという意味でもある。
「信頼度順に表示してくれてエビデンスもつけてくれるわけですから、なぜAよりもBがよいのか、というような提案を行う上で裏付けのようにも使えます」と立田氏。
また、一致率が低くとも回答を示す、曖昧な言葉でも返答を行うという中で、ユーザーからの反応が得られる。意外なものがピックアップされたり、示した回答が「それは違う」と撥ねのけられたりすることが蓄積され、学習結果となっていくわけだ。
「たとえばカラフル・ボードではセンシーでいろいろなファッションを示して、ユーザーが好きと答えたか嫌いと答えたかを蓄積し、だったらこれはどうか、と提携ECサイトからファッション提案を行うのです。その時、提案されたものに対してユーザーがちょっと違うな、という反応をしたなら、それも認識されます。完璧な一致でないと検索結果が出てこないというのではなく、似たものなら提示してくれるというのも含めて、ECサイトでの利用に向いていると思います。そのほか、多様で大規模なデータの流入の分析によって意思決定の包括的な改善などを重視している、教育、銀行、保険、小売や医療などの業界での利用が考えられています」と立田氏は紹介した。 一致率の低い回答が示されると言うことは、ユーザーが考えてもいなかったアイデアの発見にもつながる。イノベイティブなビジネスでの活用にもIBM Watsonは有効だといえるだろう。
急成長を続ける「IBM Watson」の「今」と「今後」がわかる「SoftBank World 2015」
「IBM Watson」の日本語版開発状況について、現在ソフトバンクは非常によく知ることができる立場にある。
「SoftBank World 2015では、今後のIBMの展開や、パートナー制度、海外の事例、日本での採用予定などをご紹介します」と立田氏。「IBM Watson」について興味があるならば「SoftBank World 2015」は、理解を深めるよい場になるはずだ。
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