IBMが開発した「コグニティブ・コンピューティング・システム」という、新しい概念のシステム「IBM Watson」。クイズ番組に登場したことで有名になったが、その後順調に成長し、現在はビジネス活用が始められている。

IBM Watsonは、コグニティブ・コンピューティング能力を初めて商用化したもので、自然言語を理解し、膨大なデータの中から最適な解を提示する。日本アイ・ビー・エムのホームページでは「自然言語を理解し、さまざまなデータから素早く関連性のある情報を見つけて解析し、解を提示する。利用を重ねることによって学習をする」と説明されている。

ソフトバンク ICT イノベーション本部 Watson事業推進室 ビジネス推進部 部長 立田 雅人氏

「IBM Watsonは、意志決定をサポートするツールとして非常に有効だと思いますが、同時にその利用シーンも非常に多岐にわたると考えられます。それ故に、開発を進めているIBMだけでは、Watsonのユースケースを網羅できない可能性があります。数多くのパート-ナーによるユースケースの蓄積があってこそ、Watsonの有効性をより活かせるといえるでしょう。その意味でソフトバンクに白羽の矢が立ったのだと思います」と語るのは、ソフトバンク ICT イノベーション本部 Watson 事業推進室 ビジネス推進部の部長である、立田雅人氏だ。




・ソフトバンクが語る、日本における「IBM Watson」のビジネス構想 特集
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IBMとソフトバンクが共同で、日本におけるIBM Watson提供を推進する

IBMは、2015年2月にソフトバンク(当時、ソフトバンクテレコム)と共同で、日本における開発・提供を行うと発表した。それを受けてソフトバンク社内に立ち上げられたのが、立田氏の所属するWatson事業推進室だ。

ソフトバンク(当時、ソフトバンクテレコム)と日本アイ・ビー・エムは、2015年2月10日に共同でのプレスリリースを配信した

「IBM Watsonは、開発そのものをIBMが、日本市場への提供のための検証とサービス化を我々ソフトバンクが行っています。ソフトバンクはポーティングアプリの開発や評価などを担当しており、さまざまな実験や試用を行って、自社内をはじめとするユースケースづくりを行います」と立田氏は語る。

ソフトバンクに期待される3つのポイント

「1つ目は、ミッションクリティカルなユースケースがほしいのだと思います。それに当てはまるのが、ソフトバンクのコールセンターでWatsonを活用すること。ソフトバンクは『まず自社から』という社風ですし、コールセンターの規模が大きくそこでのお客様の要件も非常にシビアです。こうした厳しい環境、しかも日本語というチャレンジブルなフィールドでWatsonが活用されることは、日本語での活用事例を求めているIBMとって大きく期待できるところでしょう」と立田氏。

2つめのポイントとして挙げられたのは、将来的な展開に関する部分だ。具体的にいえば、サービス開発やリクルーティングという部分が期待されているという。「一時的に盛り上がるだけの祭りではなく、キャズムを超えるためにはいろいろな使い方をする必要があります。しかし大企業が考える使い方というのは限りがあるわけです。パートナーとともにいろいろな使い方をすること、日本でリクルーティングができることは期待されているでしょう」と立田氏は語る。

そして3つめは、ソフトバンクという企業の体質ともいえる部分への期待だ。「新しい技術へのチャレンジ精神というところですね。実はこの分野でマネタイズが成功している例はかなり少ないわけです。そうした中、ともにチャレンジしてくれるところ、として選ばれたと思っています」と語る立田氏は「もしかしたら、とても平易な言葉でWatsonを紹介することも期待されているかもしれませんね。こんな風に動いてくれるのですよ、とわかりやすく語るのも役目だと考えています」と笑った。

自然なやりとりを実現させるIBM Watson

具体的にIBM Watsonがどう動くのか。それをソフトバンク流のわかりやすさで立田氏は語ってくれた。社内的な実験で公開できないエピソードも多かったが、非常にスムーズな質疑応答ができる様子が語られた。

「自然語での検索というのは今までもいろいろな取り組みがありました。しかし“あー、えーっと、○○って何だったっけ?”というような聞き方をすると、言語の解釈でおかしな部分が切り出されて、わけのわからない回答が出てきてしまう状態だったのです。ところがWatsonは”あー、えーっと”というような無意味な部分を上手に切り分けて、きちんと尋ねたことについて調べてくれます」と立田氏。

さらにIBM Watsonの示す回答というのは大規模なデータを分析した結果なわけ だが、検索結果をそのまま読み上げるのではなくユーザーが受け入れやすいものに変化させてくれるという。

「海外の事例でCognitoyというおもちゃがあります。恐竜型のオモチャに子供が話しかけると答えてくれるというものです。親の前で素直に話せない子でもおもちゃになら話せるだろうというような考えから作られたようですが、子供の質問にWikipediaの文章を読み上げても理解してくれません。Cognitoyはきちんと、子供が受け入れられるように必要な数値や単語だけを抜き取って返事をしてくれます。Watsonを使えるプラットフォーム上では、どのようにアプリを動かすかということが本当に大切なのだとわかる事例です」と立田氏は語った。

2015年7月30日、31日に開催される「SoftBank World 2015」では、さまざまな海外事例が紹介される予定だ。具体的にIBM Watsonがどのような動きをしてくれるのか、日本においてソフトバンクはどのようなビジネスの構想を立てているのか、そのためにどのようにパートナーへのサポートを行うのかといったことが明らかになる。IBM Watsonが持つ可能性に興味のある方は、参加してみるとよいだろう。

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