IoT(Internet of Things)やビックデータがデータ活用の新時代を象徴するキーワードとして広く認知されるようになった。実際、ソーシャルデータやセンサーデータ、マシンデータを分析し、これまでにない価値を生み出そうとさまざまな企業が取り組みを本格化させている。その一方で、取り組みは進めてみたものの、期待した成果を出せていない企業も少なくない。これからのデータ活用で求められる要件は何なのだろうか。

そうした疑問に対して、データ活用の基盤づくりが重要と指摘するのがアプレッソだ。6月23日に開催されたマイナビ主催セミナー「データ活用でさらなる強み! 製造現場の最先端」にアプレッソの事業推進本部 技術部 部長 友松哲也氏が登壇。「ビッグデータを乗り切る! IoT時代に求められるデータ活用基盤のあり方」と題し、これからのデータ活用のあり方を解説しながら、データ活用に対する企業の取り組み方をアドバイスした。

「つないで」「まとめて」「とりだせる」データ連携HUB

セミナーで登壇したアプレッソ 事業推進本部 技術部 部長 友松哲也氏

アプレッソは、DataSpider Servistaをはじめとするデータ連携ツールで知られる企業だ。データ連携ツールのほかにも、「つなぐ」をコンセプトにしたビジネスプロセス連携ソフト、スケジュール連携ソフト、クラウド-オンプレミスソフトなどを展開。2014年12月現在でDataSpiderシリーズの出荷累計は2300社を超える。製造業や流通業で馴染みのあるファイル転送ソフト「HULFT‎」を開発したセゾン情報システムズが親会社だ。

友松氏はまず、データ活用をめぐっては近年さまざまな用語が使われるようになったが、データ活用を実現させるプロセスそのものは、実はきわめてシンプルだと指摘した。すなわち、データを「あつめる」、データを「ためる」、データを「つかう」という3つのプロセスがあり、それぞれのプロセスにおいて、適切なツールを使って実現していけばいいとする。あつめるというプロセスを実現するのは「データ連携HUB」であり、同様に、ためるプロセスでは「データウェアハウス」を、つかうプロセスでは「BI/分析ツール」を活用することになる。

友松氏によると、この3つのプロセスのうち、特に多くの企業が見過してしまうのが1つめのデータをあつめるプロセスにおけるデータ連携基盤の構築だ。「データ収集に関してはさまざまな課題がある。それらに1つ1つに対応したうえで、統合的な基盤を構築することは、実際には難しい」(友松氏)。そのため、連携が必要になったときに都度対応を繰り返したり、後回しにされたりして、基盤構築がおろそかになるのだ。

データ収集の課題としては、データの正規化とクレンジング、データの有効期限、データの多様性/場所などが挙げられる。これらは、データ分析の世界では、かねてから課題とされてきたものだ。最近ではデータの量が増え、より多様になったことで、これまで以上に扱いが難しくなった。たとえば、データの有効期限は、よりリアルタイムに近い頻度が求められるケースが増えた。また、データの多様性については、非構造化データやオープンデータ、クラウド上のデータにまで広がった。しかし、だからこそ、以前にもまして、「データをつなげていつでも取り出せるようにするデータ統合基盤の重要性が増した」(同氏)というわけだ。

データ連携基盤で成果を挙げる富士ゼロックスマニュファクチャリング

続いて、友松氏は、データ連携基盤の事例として、富士ゼロックスマニュファクチャリングの取り組みを紹介。同社は、富士ゼロックスグループの製造を専門に担う会社として、複数の拠点、企業体を統合して設立されたという経緯がある。そのため、基幹システムや各種業務システムが複数に分散しており、全体を把握することが困難になっていたという。

「各部門で構築したシステムがそれぞれにインタフェースを構築しており、無数のインタフェースがスパゲティ状に社内に存在していました。また、周辺システムの改修範囲が異なっていたため、すべての改修を成立させるには、開発工数が不足するという課題も抱えていました」(友松氏)

同社は、これらの課題を解決するため、DataSpider Servistaを使って、統合データベースを構築した。統合データベースに各システムがつながるスター型として構築することで、インタフェースを単純化し、開発工数も削減。連携基盤の構築は従来の4分の1の工数で済んだという。

「メリットとしては、データが集中化されわかりやすくなったこと、システムの変更・追加が容易になり拡張性が出たことが挙げられます。興味深いのは、統合データベースに対して現場からアクセスできるようにした点です。これにより、現場レベルでの情報活用が進んだとのことです」(同氏)

友松氏は、基盤づくりのポイントとして、データ活用の前にデータ統合を行うこと、データを取り出しやすい仕組みを作ること、現場が使える仕組みを作ることの3点を特に強調した。

IoT時代のデータ活用のポイント

IoT時代に向けて、こうしたデータ活用のための基盤づくりはますます重要になる。特に、IoT時代のデータ活用では、アジャイル開発に見られるような、スピードや俊敏性、拡張性がより求められるようになるという。その例として、友松氏は、同社がAmazon Web Services(アマゾン データ サービス ジャパン)と共同で実施したハッカソン「センサーデータリミックスハッカソン」での事例を紹介した。

「赤ちゃんのグズリ検知というIoTサービスを企画したチームがあります。赤ちゃんの動きをセンサーで取得し、データを機械学習して、グズリかどうかを随時判定、グズっている場合はスマートフォンにプッシュ通知するというサービスです。こうした簡単なアイデアもすぐにかたちにして、サービス化できるのがIoTの世界です」(同氏)

友松氏はこのほかにも、内蔵したセンサーで常に身体の状態を診断できるTシャツや、備え付けセンサーで情報を随時取得するメガネなど、アイデアがどんどんかたちになり、現実の世界に入ってきていることを紹介した。そのうえで、IoT時代のデータ活用について、「アイデア勝負でとにかくやってみること」「プロトタイピングですばやくものを作る仕組み」「スケーラブルで拡張性の高い仕組み」の3つがポイントになると説明した。

アプレッソのDataSpider Servistaは、こうしたデータ活用でも有効だという。コーディング不要でGUI操作で設計・開発ができるため、俊敏性の高いシステムを簡単に構築できる。対応接続数が多く、パフォーマンスが高いため、大量データの処理や大量アクセスにもスケーラブルに対応できる。たとえば、ビッグデータの扱いについて、IBM Puredata(Netezza)、Teradata、Oracle Exadata、SAP Hana、Amazon Redshift、HP Vertica、Hadoopといったソリューションとデータ連携するアダプタを提供している。

友松氏は最後に、IoT時代でデータ活用の効果を高めるためにも、少しずつデータ活用基盤の構築に取り組んでいってほしいとアドバイスし、講演を締めくくった。

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