ビットアイルが2014年3月に開催したハイブリッドクラウド利用事例紹介セミナー「ユーザー目線で考えればやっぱりハイブリッドクラウド!AWS×オンプレ×プライベートクラウドで見えてきた次世代クラウド活用法」の最後のレポートなる本稿では、国内有数の税理士法人である辻・本郷税理士法人のハイブリッド導入事例をお伝えする。
関連記事
税理士法人ならではのボトルネックは……会計ソフト
「自社システムもサービス基盤もハイブリッドクラウドで」~コロケーション・クラウド、ハイブリッド利用事例~ というテーマで実施された辻・本郷 ITコンサルティング 部長 中原誠也氏によるセッションは、かつてのPC導入を軸とした「IT革命」時代のレガシーなシステムに頭を悩ませる管理者の悩みが浮き彫りとなる内容となった。
辻・本郷税理士法人は、2002年に設立された税理士グループで、グループ社員720人、国内拠点30、海外拠点3、顧客法人数6500社という規模を誇る。
税理士業務には様々な会計ソフトが必要となる。同グループでは、従業員のアカウントデータなど全社共通で使用する情報についてはデータセンターで一元管理し、業務に使用する会計ソフトなどについては拠点に配備されたサーバやクライアントPCにインストールして利用していた。
ただ、事業の成長過程において地方の税理士事務所との合併を繰り返したため、「各拠点にサーバが分散化してしまうと同時に、クライアントPCの仕様もバラバラになってしまいました」(中原氏)
理想を言えば、各拠点にあるサーバもデータセンターに集約して一元管理したい。だが、そこには大きな問題があった。上述の会計ソフトの存在である。
種類とバージョンが混在する会計ソフト
現在の市場には、多種多様な会計ソフトウェアがリリースされている。どれを選択するかは顧客次第。業務の性質上、顧客企業の会計ソフトはひと通り把握しておかねばならず、新たなソフトウェアの登場やバージョンアップのたびに会計ソフトを追加導入していた。
その結果、同グループが保持しているソフトウェアは15社×3種類×5バージョンの225種類にも達することとなった。さらに、これらを全拠点で利用できるようにするには、すべてのクライアントPCにインストールしなければならない。
最新バージョンであれば、包括的な契約によって、すべてのクライアントPCへのインストールが可能になることもある。だが、古いバージョンのソフトウェアに関しては、そのような対応も難しい。すべてのクライアントPCに、すべてのソフトウェアをインストールすることは現実的に不可能である。そこで中原氏の考えた対策が、仮想クライアントの利用である。
多様な会計ソフトウェアを管理するために仮想クライアント化
まず、ライセンス面の問題がないソフトウェアについては全クライアントPCにインストールする。その上で、他のソフトウェアと同時にインストールすると不具合が生じるもの、複数台数へのインストールが許可されていないものについては個別対応を行い、拠点のサーバ上に仮想クライアントを設定してインストールし、リモートで共有することになった。
これによって会計ソフトウェアの問題はひとまず解決した。だが、拠点サーバが分散している状況は変わらない。と同時に、新たな課題も生まれてきた。
「当初は、1つの拠点サーバ上に4~50の仮想クライアント、という状態でした。つまりサーバが落ちてしまうとすべてのクライアントが止まってしまうことになります。そのような事態を避けるためにも、冗長化の検討を進める必要がありました」(中原氏)
拠点サーバの集約と冗長性、この課題を解決する策として中原氏が出した答えが、ビットアイルが提供するハイブリッドクラウドである。
ハイブリッドクラウドを選択した3つの理由
中原氏がサーバの集約と冗長化の課題解決について、ビットアイルのハイブリッドクラウドを選択した理由は次の通りだ。
まず、物理ラックにあるサーバと仮想クライアント用のプラットフォームが有線で接続されているため、移行が容易かつ高速に行われる点である。
現在同グループでは、業務に影響がでないよう利用頻度の低いソフトウェアから徐々に移行を行っている最中である。だが、転送に時間がかかってしまっては、そのソフトウェアを利用する必要が生じた場合、業務に大きな影響を与えてしまう。
「例えば給与計算などを行う場合では、期限まで3時間しかないという状況も発生します。転送時間は、短いに超したことはありません」(中原氏)
次の理由は、データセンターという、安全かつ安定した環境にサーバ設置できるということだ。
「2011年の震災時は事務所もかなり揺れました。幸い、サーバに大きな影響は出ませんでしたが、今後事務所内でどこまでサーバの安全が確保できるかは不安でした」(中原氏)
安全な場所、安定した電源と空調の確保などを事務所内で行うのは難しい。それらが備わったデータセンターであれば、安全かつ安定したサーバの運用がレベルの高い状態で実現できる。
もう1つのポイントが冗長性の確保である。
ビットアイルが提供するV、Wシリーズは、それぞれ高いレベルで冗長性が確保されている。現在は移行途中ではあるが、これが完了すれば「1台のサーバが落ちると、40クライアントすべてが止まる」という心配は不要になる。
「当初は、自分たちでデータサーバを所有して冗長性を確保したシステムを構築しようという考えもありました。ですが総合的に考えると、より高いレベルで安全性を確保しているデータセンターにお任せした方が、結果的に運用レベルの向上とコストの削減が図れるとの結論に達したのです」(中原氏)
ハイブリッドクラウドによる新たな可能性
現在、同グループではビットアイルデータセンターにおいて、物理ラックと、プラットフォームサーバVシリーズ、Wシリーズ、の3つを利用している。そして、ハイブリッドクラウドへの移行が進む中で「想定外のメリットが発生しました」と中原氏は語る。
「仮想クライアントのプラットフォームをWシリーズに移行したことでSPLAライセンス(※注)が利用可能になりコストの削減が実現できました。その削減分で。Windowsサーバのバージョンアップを実行することが可能となったのです」
同グループでは新たに、このハイブリッドクラウドを利用して顧客に対して新たなサービスの提供も検討中とのことである。
「SaaSタイプの会計ソフトや自社開発のWebアプリケーション、安全に利用できるファイル交換サービスの提供など、お客様の利便性向上につながるサービスを提供して行きたいと考えています」(中原氏)
※注: SPLAライセンス(Microsoft Services Provider License Agreement):主にホスティングサービスやクラウドサービスなどを運営する事業者向けにマイクロソフトが提供している企業向けライセンスプログラム。クライアントからの接続にCAL(クライアントアクセスライセンス)が不要となるため、常に最新のソフトが利用可能となり、コスト削減にもつながる。
関連記事 |
ハイブリッドクラウド利用事例紹介セミナー「ユーザー目線で考えればやっぱりハイブリッドクラウド!AWS×オンプレ×プライベートクラウドで見えてきた次世代クラウド活用法」
本セミナーの資料はすべてSlideShare上で公開されています。ぜひ今後のITインフラ構築の参考にしてください。
「クラウドとオンプレミスを活用した月間500億件を処理する広告配信システムの裏側とは?
「自社システムもサービス基盤もハイブリッドクラウドで」辻・本郷 ITコンサルティング株式会社様事例
「ベンダーフリー・キャリアフリーが顧客本位のハイブリッドクラウドを実現する」
「OpenStackプライベートクラウドとマルチクラウド管理」
ハイブリッドクラウドを実現するビットアイルクラウド
[PR]提供:ビットアイル