ビットアイルが2014年3月に開催したハイブリッドクラウド利用事例紹介セミナー「ユーザー目線で考えればやっぱりハイブリッドクラウド!AWS×オンプレ×プライベートクラウドで見えてきた次世代クラウド活用法」の目玉の1つは、本稿のタイトルにもある通り、大規模広告配信システムのインフラがどのようになっているのか? である。同セミナーのレポート第2弾となる今回は、ビットアイルの「ハイブリッドクラウド」によって構築されたソネット・メディア・ネットワークス(以下、SMN)の広告配信最適化プラットフォーム「Logicad(ロジカド)」と、オンライン広告のトレンドを紹介する。
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AWSとオンプレミスの接続により実現したRTB(リアルタイム入札)
「クラウドとオンプレミスを活用した月間500億件を処理する広告配信システムの裏側とは?」-BI-Direct Access for AWS 事例- と題して実施されたソネット・メディア・ネットワークス 技術・開発部 技術・開発G 課長 安田崇浩氏によるセッションでは、オンライン広告に馴染みのない来場者にも配慮し、現在のオンライン広告のトレンドに関する解説も実施された。
オンライン広告は非常に進化が激しい分野であり、頻繁に新たな配信システムが開発・運用さている。近年では即時性に対応可能なオンライン広告が主流になっており、その中でもRTB(Real Time Bidding)という仕組みが注目されている。
RTBは日本語でリアルタイム入札と呼ばれる。オンライン広告において、インプレッション(広告の表示)が発生するごとに、その広告に対してリアルタイムにオークションが行われる仕組みとなっている。RTBでは、1ページビューごとに、複数の広告主が目当ての広告枠の表示権購入(入札)を行う。オークションの開始から入札・広告が表示されるまでの時間はわずか0.1秒であり、最高入札額の広告主の広告が配信される仕組みだ。
広告主としては、サイトに訪れた特定の人について入札できるため広告効果の向上が期待できる。また広告枠を持つウエブサイトは最高入札による広告枠の収益増加が見込めるといったメリットがある。
SMNが提供する「Logicad(ロジカド)」のシステムは、AWS(Amazon Web Services)とオンプレミスの組み合わせによる運用を行っている。
ちなみに、「月間500億件」の広告配信システム規模は、具体的には「1カ月の処理量: 500億 http request/月、1カ月のUU数: 1億UU、1カ月のログ量(圧縮): 10TB、データベースのユーザー数: 4億」(安田氏)となっている。
オンプレミスとクラウドを併用する理由
なぜ、オンプレミスとクラウドを併用するのか、その理由として安田氏は有名なムーアの法則を挙げて解説した。
ムーアの法則:集積回路上のトランジスタ数は18カ月ごとに倍になる
ここ5年でCPUのトランジスタ数は9倍になっている。つまり、同じ処理性能であれば価格は1/9となる。メモリは1/20、HDDであれば1/5だ。一方、クラウドについては6年で価格は2/3、SMNが利用しているAmazon S3(クラウドストレージサービス)を例にとれば、8年で単価は1/2。
「つまり、ハードウェアのコストダウンと比べると、クラウドのコストダウンペースはかなり遅いのです」(安田氏)
SMNのRTBでは1秒間に4万件以上の処理が発生する。この場合、すべてをクラウドで構築した場合とオンプレミスで行った場合とでコストを比較すると……クラウドの場合はオンプレミスの2.2~4.4倍になるという。
「高度な処理を求められる場合は、オンプレミスの方が有利となります」(安田氏)
その一方で、当然だがクラウドにもメリットはある。
まずリードタイムが短いこと。オンプレミスの場合は見積りから購入、そしてセットアップまで、少なくとも1カ月はかかってしまう。しかし、クラウドであれば、数分程度でサーバーの起動までを実施することが可能だ。また、スケールアップ・スケールダウンが容易であることも、クラウドの大きなメリットと言えるだろう。
「両方の利点を組み合わせれば、システムの構築に際して、より柔軟なシナリオを検討することができます」(安田氏)
例えば、リリース初期の段階では処理の増加に合わせてクラウドでスケールアップするといったことが考えられる。もちろん、クラウドなので、スケールダウンにも柔軟に対応する。そして、ある程度の規模に達した段階でオンプレミスへの移行を検討する、という具合に段階的な対応が可能になるわけだ。
クラウドとオンプレミスサーバーをつなぐ「BI-Direct Access for AWS」
SMNのシステムでは、クラウドとオンプレミスをつなぐサービスとしてビットアイルが提供するBI-Direct Access for AWSを利用している。
BI-Direct Access for AWSの利点、それは遅延の低さと通信コストである。
ビットアイルデータセンターとAWS東京リージョンを直接接続しているため、低遅延かつ安定したパフォーマンスでデータセンター内の物理サーバー間の通信が可能。また、BI-Direct Access for AWSで利用しているAWS Direct Connect経由のデータ転送費用は$0.045/GBで、通常のインターネット接続でのデータ転送費用$0.201/GB(10TBまで)に比べ約1/4の転送費用となっている。
このようにSMNでは、クラウドとオンプレミス、その間をつなぐ「BI-Direct Access for AWS」によって構成されたハイブリッドクラウドにより、月間500億件もの処理を行う広告配信システムを実現しているのだ。
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