もはや開発現場に誤解はなくなった
3Dプリンタは、工業用として1990年代前半に実用化された。ここ数年の急激な市場拡大は、大幅に価格を下げた一般消費者向けの製品が相次いで市場投入されていることによるが、その品質や性能の向上はやはり工業用がリードしている。 工業用の3D プリンタは、プロトタイピング(試作品)を作る金型コストの削減などを目的に導入されてきた。しかし当初は、1台が1億円を超えるという価格の課題があったほか、経営層における導入効果に対する認識の乏しさなどから、大企業での活用がほとんどだった。
しかし、ここ数年で事態は一変した。工業用とはいえ性能向上と価格の低下、加えて事実上のコスト削減などの導入によって得られるメリットについての理解の向上により、「導入コストがかかる」という認識は過去のものになったのだ。「機能性に加えて価格が手頃になり、材料の強度も増していることから、比較的大きな試作品でも作れるようになった」「活用するための日常の費用は材料費だけ」「形状を細かく変えて試作品を作ることで、製品開発のスピードを格段に上げられる」といった声が増え、3Dプリンタに対する評価に疑問を持つ技術者はいなくなった。
そして、3Dプリンタの利用によるさまざまな成果が、より具体的に明らかになってきた。3Dプリンタの世界大手である米ストラタシス社の日本法人であるストラタシス・ジャパンのマーケティングマネージャ 吉澤文氏は、「大きく分ければ、3Dプリンタはものづくりの現場に6つのメリットを提供している」と語る。
それは、(1)製品の市場投入までの時間の短縮、(2)高頻度プロトタイピングによる競合優位性の向上、(3)製造誤差の削減、(4)プロトタイピングのコスト削減、(5)設計上の機密性確保、(6)改良モデルの精度と品質の向上、だ。これらの点をもう少し詳しく考えてみよう。
ものづくりを変える6つの相乗的メリット
「(1)製品の市場投入までの時間短縮」とは、プロトタイピングを外注した場合の時間ロスを短縮して製品投入を早めようとするものだ。通常、プロトタイピングを外注すると、納品まで1週間ほど要するほか、高額な製作費用がかかる。このため、開発や設計部門では、「ある程度のレベルまで自前で設計を進めてから外注しよう」と考えがちで、これが実際に試作してみて狙い通りのものではなかった場合、さらに開発期間がかさみ、悪循環を生み出すことも珍しくない。 しかし、3Dプリンタを活用すれば数時間から1日程度でプロトタイプを製作できる。製品化までの時間を25%以上短縮できた企業が、29%に達したという調査結果もある(オブジェット社調査)。
「(2)高頻度プロトタイピングによる競合優位性の向上」とは、開発期間を短縮することで、製品開発においてより多くの改善点を加え、より多くのアイデアを盛り込んだ試作を可能にすること。つまり、製品開発のサイクルを縮めながらも高頻度のプロトタイピングが可能になることを意味している。
「(3)製造誤差の削減」では、コストの高い金型やダイカストを作成する前に、3Dプリンタで試作することで設計や形状の微調整を可能にすることを意味する。実際、先のオブジェット社のユーザー調査によれば、反復作業が25%以上削減されたという企業が28%もあったという。
「(4)プロトタイピングのコスト削減」とは、試作用金型の外注費用の削減そのものを示す。そして「(5)設計上の機密性の確保」の価値も大きい。社内で3Dプリンタを利用して試作を重ねれば、試作を都度外注する場合よりもデザインや設計仕様が外部流出するリスクを低減できるのである。さらに、プロトタイピングを重ねることで、より最終製品に近い形での形状や機能、適合性などを確認でき、「(6)精度と品質の向上」を担保できるようになる。
「これらのメリットが相乗的に発揮され、試作に伴うコスト削減と製品開発力、さらに製品そのもの競争力の向上が同時に実現できるのが工業用3Dプリンタです。3Dプリンタを活用したインハウスでのプロトタイピングは、デジタルデータをそのまま生産現場につなごうとするDDMの最もベースにある取り組みだと言えます」(吉澤氏)
造形技術の代名詞とも言えるストラタシスのFDM
3Dプリンタでの造形には、いくつかの技術がある。造形技術のリーディングカンパニーであり、トップクラスの世界シェアを誇るのがストラタシスである。 同社のスコット・クランプ氏によって開発されたのが熱溶解積層法(FDM)。FDMは、造形ヘッド内に入れられた樹脂が、熱で溶解されながら先端部から押し出され、造形テーブルに積層されていく。FDMの最大の特徴は、各種の熱可塑性樹脂を “インク” として使える点にある。ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂等々、従来の射出成型で使われる各種の樹脂も使えることから、より最終製品(部品)に近い造形物が得られる。それは同時に、最終製品に近い耐熱性や粘性、透明性、電気特性などを確認できることを意味している。
ストラタシス社は、2012年に同業であるイスラエル・オブジェット社と合併した。オブジェット社が開発していたのがPolyJet技術だ。これはインクジェット方式で、紫外線ですぐに固まる微細な液体フォトポリマーで造形する。滑らかで詳細な表面仕上げと、造形と同時に新たな物性の樹脂を作り出すこと、また同一の部品に複数の素材を組み合わせられることに特徴がある。
「オブジェット社との合併には、製品ポートフォリオを補完できるという大きなメリットがありました。また、両社の顧客層もさほど重複していませんでした。つまり、ストラタシス社の製品は、最終製品やテスト用製品で使用されている一方で、オブジェット社の製品はデザインプロセスの初期の段階で活用されているのです」(吉澤氏)
アメリカの技術系コンサルティング会社であるT. A. Grimm & Associatesは、数年に一度、各社の3Dプリンタの性能比較試験を行って結果を公表しているが、ストラタシス社の「ObjetAlaris30(現在はObject24/30Pro)」は、対象となった7製品で最高レベルの品質を提供しており、耐久性、表面加工、寸法精度、詳細形状などの項目で総合最高点を獲得している。3Dプリンタ時代を牽引してきたストラタシスの技術の先見性と優位性は、第三者評価においても明らかになっている。
広がる活用領域と総合メーカーへの成長
3Dプリンタを活用する分野は、製造業の開発部門に限られることなく、大きな広がりを見せている。 例えば、デンタルインプラント分野での活用がある。人の歯や顎は、大きさも角度もそれぞれ異なっている。そこで事前に口腔スキャンを使って骨格の3次元モデルを作成し、インプラントの深さや角度などを適正に治療できるようなガイドが3Dプリンタで作られている。同様に矯正器具の作成にも使われており、その他の医療現場でも3Dプリンタの活用は広がっている。
3Dプリンタは企業に、「何が作れるか」ではなく「何を作りたいか」を問うているように見える。実は、ストラタシス社自身が、3Dプリンタによる「何を作りたいか」という問いに対する答えをワクワクして待っているのではないだろうか。それは世界の人たちの期待と重なっている。
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