いま、3次元モデル(立体物)を造形する3Dプリンタが急速に普及しつつある。その活躍の場は、製造業を中心に、医療、建築、教育などさまざまな分野に広がり始めている。3Dプリンタ市場において世界トップシェアを誇るStratasysの日本法人、ストラタシス・ジャパンの吉澤文氏に、同社製3Dプリンタの特徴および導入メリットについて話を聞いた。
ニーズを補完する技術を持つ企業が統合
2012年12月にイスラエル・Objet社と米国Stratasys社の合併によって誕生した新生ストラタシスは、世界の3Dプリンタ市場においてトップシェアを誇る有力メーカーだ。3次元モデルを造形する3Dプリンタは、各メーカーが技術力を駆使して特徴のある製品を提供しているが、ストラタシスには合併前の2社がそれぞれ独自に開発した「PolyJet(ポリジェット)」と「FDM(Fused Deposition Modeling)」という2つの優れた技術がある。
PolyJetは旧オブジェットが開発したもので、インクジェットプリンタに似た構造になっている。インクジェットプリンタはヘッドの高精細ノズルからインクを噴射して印刷するが、PolyJetではインクの代わりに樹脂を塗布しUVライトで硬化、立体物を造形していく。複数のヘッドから色や材質が異なる樹脂を出し、色や物性が異なる3次元モデルを生成できるのが大きな特徴だ。
「PolyJetは、デザインや機能の確認などモノづくりの上流から中流の工程に必要なプロトタイプ作成に適した造形方式です。色や硬度が異なる樹脂を組み合わせ、配合率を変えて混ぜ合わせながら造形することで、カラーバリエーションや物性バリエーションを変えた新しい樹脂を生み出すことができます。これができるのは、数ある3Dプリンタの中でも当社の製品だけです」(株式会社ストラタシス・ジャパン マーケティングマネージャ 吉澤文氏)
もう一方のFDMは、旧ストラタシスによって開発された造形方式で、3次元モデルの素材となる樹脂を高温で溶かし、それを積層させることで立体物を生成していく。その歴史は古く、1990年代にはすでに製品化されていたという。
「FDMは、モノづくりの工程において負荷の高い機能試験から最終製品のパーツ製造にまで使える造形方式です。私たちの身の回りには数多くのプラスチック製品が存在しますが、その素材として一般的なABS樹脂をそのまま3次元モデルの材料に使用することができます」(吉澤氏)
ポリジェットとFDMの技術を持つことにより、モノづくりの現場で必要とされる、あらゆるニーズに対応できるところが、ストラタシス製品の強みだと吉澤氏は話す。
「2つの技術は、もちろんオーバーラップする部分もありますが、大半は全く違う用途で使えます。しかも、違う用途でも同じユーザーで必要になる用途なので、それをストラタシス1社がソリューションとして提供できることは、非常に大きな意味があると考えています」(吉澤氏)
新生ストラタシスは、さまざまなニーズを補完する両方の技術を持つメリットを最大化しようという背景から誕生したのだ。
開発工程に有用な3Dプリンタ
↓ |
↓ |
では、企業にとって、3Dプリンタはどのような導入効果があるのだろうか。吉澤氏によれば、開発精度の向上と製造期間の短縮が最も大きなメリットだという。
「私たちの身の回りにあるモノは、おそらくすべて、デザイナーが形のないところから設計する工程で始まります。つまり、デザインのプロセスが必ず存在します。モノをデザインするとき、2Dの図面から3D CGを作成して確認する場合もありますが、例えば手に持って使うモノであれば、触ったときに自分の手にフィットするかは3D CGでは分かりません。そうしたときにプロトタイプのモックアップを外注で作成しようとすると、一般的に少なくとも10日から2週間はかかりますし、社外に情報を出せば情報漏えいのリスクもあります。それに対し、3Dプリンタならばモックアップを社内で短時間のうちに作成することが可能です。これにより、現場のコミュニケーションが円滑になって開発精度は向上します。設計変更もスムーズに行えますから、ひいてはより良い製品が出来上がるという効果が得られます」(吉澤氏)
実際の製品と同じ外観の3次元モデルが得られるということは、製品パッケージや梱包材の作成にも役立つ。
「ストラタシスの3Dプリンタでは、実際の製品とほぼ同じ外観のものが作成できます。そこで、製品が生産ラインから上がってくる前に作成した3Dモデルに最終製品と同様の塗装を施し、それを写真撮影してパッケージのデザインやプロモーション用のWebサイトに使用するという使い方をしている企業もあります。また、製品を箱に収めるときに使用する梱包材を作成したり、効率的に運搬するための荷姿を事前に検証したりするのにも有効です。開発現場だけでなく、営業や物流の現場も含めて活用すれば、製品が完成するのと同時に、市場に流通させるための準備を完了させることが可能になります」(吉澤氏)
実際の製品の製造に利用される例も
少ロットの製品では、実際に使われるパーツの一部を3Dプリンタで製造している例も少なくない。「耐薬品・防炎などの効果がある強度に優れた樹脂を利用し、航空機の設備の一部や自動車用パーツなどの実製品の製造に3Dプリンタを利用している例があります。こうした少ロットのカスタムパーツを製造する場合、金型を起こして生産すると1個あたりのコストが非常に高額になりますが、3Dプリンタならばコストを抑えて短時間で作成できます。また、余分な在庫を抱える必要もないなど、3Dプリンタによって大量生産の製品とは異なる価値が得られるわけです」(吉澤氏)
ストラタシスでは、このような実際の製品に利用できる樹脂も含め、現在130種類以上の素材を提供している。これらの素材は、ユーザーサーベイや市場調査によってニーズが高いものを抽出し、開発しているという。3Dプリンタの活用は、製造業だけでなく、医療や教育の現場にも広がっている。
「例えば、いまポピュラーになっているデンタルインプラントで3Dプリンタが利用されています。人の歯や顎は大きさも角度も違いますから、事前に口腔スキャンをとって骨格の3次元モデルを3Dプリンタで作成し、そのモデルに対してインプラントの深さや角度など適正な形で治療ができるようにガイドを作っています。これにより、間違いがなく、しかも短時間のオペレーションができるようになっています」(吉澤氏)
このほかにも矯正器具の作成など、医療現場では3Dプリンタがよく利用されているとのことだ。さらに、教育現場でも3Dプリンタの利用をカリキュラムの一環として取り入れるところが増えている。
「企業において3Dプリンタは、これからますますスタンダードになっていくと予想されます。例えば、高等専門学校では3次元CADが必修になっていますが、CADだけ使えても社会に出たときに困るかもしれないということで、3Dプリンタで成果物を作成するところまで教える学校も出てきています。企業も、CADに加えて3Dプリンタも扱える学生を、即戦力の人材として高く評価しているようです」(吉澤氏)
このように、さまざまな業種・業界に普及し始めた3Dプリンタだが、今後は一般個人への広がりも想定されている。すでに3Dプリンタを店頭に並べる量販店も現れているが、ストラタシスでも個人向けの製品ラインアップも用意している。
「ストラタシスは2013年6月にパーソナル向け3Dプリンタメーカーのメーカーボット社を買収しました。3Dプリンタはパーソナル市場への普及が急速に広がっており、マーケット全体がどんどん大きくなっています。実はこれが契機となって、ビジネスで利用する企業ユーザーも増えています。これまでは、3Dプリンタを採用するメリットに社内の一部の人間は気づいても、実際に導入するまでの全社的な理解がなかなか得られないという課題がありました。それが、パーソナル市場で3Dプリンタが注目され、認知度が上がるにつれ、企業が3Dプリンタを受け入れる風潮になってきました」(吉澤氏)
3Dプリンタがあらゆるビジネスシーンに活用される日は、そう遠い先の話ではなさそうだ。
3Dプリンタに関するアンケート調査協力のお願い
マイナビニュースでは、「3Dプリンタ」についてのアンケート調査を実施しております。 ご協力頂ける方は、下記概要をお読みになり、設問にお答えください。
□アンケート調査概要
アンケートにご回答いただいた方の中から、
先着5名様にAmazonギフト券1000円分を、抽選で5名様に1500円分を差し上げます。募集期間:2013年11月15日(金)~2014年1月15日(火)
応募方法:アンケートページより、必要な情報をご記入いただき応募。
当選発表:2014年1月22日(火)までに、当選者様にはメールにてご連絡。
□個人情報の取り扱いについて
本調査でお預かりする個人情報は、株式会社マイナビ、及び株式会社ストラタシス・ジャパンが保有いたします。 株式会社マイナビ、及び株式会社ストラタシス・ジャパンでは、ご応募いただいた個人情報をセミナーキャンペーンのご案内、 サービス向上及びマーケティング活動の目的で使用いたします。
[PR]提供: