日本アイ・ビー・エム株式会社 ソフトウェア事業・ラショナル事業部 テクニカル・セールス&サービス 越水喜之氏

多くの企業では、ビジネスの要求に応じて高品質かつタイムリーにシステムをリリースすることが求められている。そうしたなか、企業のビジネス成果がソフトウェアの正常動作に左右される場合には、ソフトウェアの品質管理が不可欠となるのである。

6月26日に都内で開催された「ソフトウェア品質サミット」の最後のセッションでは、「ソフトウェア品質がビジネスの成否を左右する ~受け入れテストの効率化と品質管理の実現~」と題して、日本アイ・ビー・エム ソフトウェア事業・ラショナル事業部 テクニカル・セールス&サービスの越水喜之氏が講演を行った。このセッションでは、受け入れテストの効率化と品質管理、それを支援する同社のソリューションについて、最新の事例を交えて紹介された。


テストの自動化と品質管理を強力に支援するソリューション

クライアントデバイスやソフトウェア提供形態の多様化、クラウド化の促進などにより、ソフトウェアの利用範囲はここ数年で大きく変化した。今後はさらに変化のスピードが加速すると予想される。そのような状況下、企業がビジネスを成功に導くためには、先述のようにシステムを高品質かつタイムリーにリリースすることが重要になるのだ。

「しかしながら、テストについて言えば、多様な環境、複雑なシステムへの対応でテスト工数は増加傾向にある。だからこそ、高品質かつ効率的な受け入れテストの実現に向けて、多くの企業には、テストの自動化と品質管理に注力することが求められている」と越水氏は問題提起する。

テストを自動化することで、テストの実行工数を削減することが可能だ。また品質管理については、テスト品質、実行状況の分析によりシステムの正確な品質を測定できるようになる。加えて要求とテストのトレーサビリティーを確保することで、要求変更時に必要なテストを分析し、必要最小限のテストで品質を確保できるのである。

越水氏は、「テスト工数の50%以上は、頭を使わない単純な打鍵作業に費やされており、その自動化によって工数削減に大きな効果が期待できる」と指摘する。

しかしテスト自動化には抑えるべき重要なポイントが存在する。それは、テストの正確な設計や手順の明確化を前提としたテスト品質の確認と、自動化すべきテストの選定だ。

こうしたポイントを踏まえた上で、ソフトウェア開発における様々なテストの自動化を実現するのが、昨年6月に国内リリースされたIBMのテスト自動化・仮想化ソリューション「IBM Rational Test Workbench(以下、Test Workbench)」である。Test Workbenchは、Rationalが持つ実績のあるテストツールをソリューションとして提供している。それらツール群は以下の4つから構成されている。

  • 「Rational Functional Tester」──機能テストの自動化
  • 「Rational Performance Tester」──負荷テストを実現
  • 「Rational Test Workbench Mobile Test Automation」──モバイルアプリケーションの機能テストの自動化
  • 「Rational Integration Tester」─システム間テストの自動化

このうちMobile Test Automationは、今年6月にリリースされたばかりのツールである。Test Workbenchは、これら4つのツールをユーザーのニーズに応じて自由に選択できることが大きな特徴となっている。

Functional TesterとPerformance Testerともに、コーディング不要で、GUIから簡単に機能テスト、負荷テストの管理が可能となっている。また、Mobile Test Automationは、モバイルデバイスもしくはエミュレーター上でテストを自動実行することができる。

「多様なデバイスが次々とリリースされるなか、モバイルテスト自動化のニーズは非常に高まってきている」と越水氏はコメントする。

「Rational Test Workbench Mobile Test Automation」によるモバイルテスト自動化

Integration Testerは、通常ではテストが困難な複数のシステムに接続されたシステムのテストを自動化できる。外部システムが存在しなくても、仮想化してテストを実行することも可能だ。これにより、テスト環境の構築コスト、運用コストの削減も図ることができるのである。

越水氏は、三菱東京UFJ銀行の事例を披露した。同社はFunctional Testerを活用したテスト打鍵の自動化推進により、プロジェクト工数を最大7割以上も削減したのである。

「受け入れテストを成功させるためには、テストを自動化しながらテスト品質を向上していくことが鍵となる。そのためには、テストを繰り返す中で自動化するテストを選定していくことが大事だ」と越水氏は主張する。

テスト自動化ツールと連携した品質管理を実現

ユーザーにとって高品質なシステムとは、ユーザーがシステムに求める要求が正確に動作することである。受け入れテストの目的は、そうしたユーザーの要求に沿ってシステムが動作するかを確認することにあるのだ。そしてソフトウェアの品質管理とは、ユーザーの要求に沿ったテストの作成と、テストの実行結果がユーザーの要求を満たしているかの確認、そしてテストが計画通りに進んでいるかの管理といった、要求駆動型のテスト管理を指すのである。

「品質管理を成功させるには、テストの品質が重要。とりわけ最近では、プロジェクトの規模が小さくなっているのに対し、ソフトウェアライフサイクルは短くなっているので、要求変更に強い受け入れテストの実現が強く求められている」と越水氏は強調する。

そんな厳しい要件を満たす品質管理を実現すべくIBMが提供しているのが品質管理ソリューション「Rational QualityManager」である。Quality Managerは、プロジェクトにおける情報連携とトレーサビリティーを確保するIBMのソリューション「Rational Collaborative Lifecycle Management Solution」の1コンポーネントとなっており、Test Workbenchと組み合わせることで、テスト管理プロセスとテストツールの連携を実現するものだ。

「Rational Quality Manager」で要求とテスト成果物のトレーサビリティーを実現

Quality Managerを使えば、要求変更時に関連するテスト計画やテストケースを自動的に特定することが可能となる。そして変更担当者に要求変更の連絡を行い、テスト計画とテストケースの見直しを実施するのだ。また、品質ダッシュボードを導入しており、リアルタイムでの品質の把握を実現する。Rationalテストツールとの連携により、テスト管理、テスト実行、テスト結果管理までをリモートで行うことができるようになるのである。

「Rational Quality Manager」とテスト自動化ツールとの連携

このような品質管理の導入によって、システムの正確な品質の把握や要求変更に強い受け入れテストの実現、そしてテスト自動化を強力にバックアップすることが可能となるのである。

越水氏は、「高品質かつ効率的な受け入れテストの実現に向けて、テスト自動化と品質管理それぞれのソリューションをうまく活用していただきたい」と会場に向けて訴え、セッションの幕を閉じた。

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