NECグループは、全社の中期的な事業戦略として、2015年度までに海外売上比率25%の早期実現を目指している。そのための施策の一つとして、各事業部で海外研修等を積極的に実施し、社員の意識自体をグローバル化させていく試みを展開している。

(左)日本電気株式会社 SI・サービス企画本部 エキスパート 松本 邦雄 氏 (右)日本電気株式会社SI・サービス企画本部 主任 伊藤 直美 氏

例えば、選抜された一部の新入社員の研修はインドやベトナムで行われ、現地法人のスタッフと一緒にプログラミングやソフトウェアテストなどを実践的に学ばせる。現地では、基本的に日本語は禁止で、英語で話さなければならない。日本企業特有のローカルな習慣に触れさせず、早いうちからグローバルなモノの考え方を身につけさせたいという狙いがある。

また、近年はソリューション事業部門においてもインドでプロジェクトマネージャの研修も行っているという。こちらも、やはり英語コミュニケーション力がなければ研修自体が進まないという、厳しい条件付きのものだ。

2013年2月から3月にかけて行われた同研修においては、日本電気株式会社 SI・サービス企画本部 エキスパートの松本邦雄氏と、同主任の伊藤直美氏が運営を担当した。松本氏らは、研修参加者の英語コミュニケーション能力の測定に、「OPIc(Oral Proficiency Interview-computer)」の導入を検討していたところだった。

OPIcは、ACTFL(American Council on the Teaching of Foreign Languages)が1対1の英語対面インタビュー形式のスピーキングテスト・OPIを基に開発したiBT(Internet Based Test)形式の試験であり、国際的にも評価が高く、人材の育成や最適化、または登用のために採用している海外のグローバル企業も多い。受験者の英語コミュニケーション力を、容易かつ正確に測ることができるテストとして注目されつつある。

OPIcテストの実効性を推し量るため、まずは松本氏と伊藤氏が研修に同行し、参加者の英語コミュニケーション力を確認する。そのうえでOPIcを受験してもらい、正しい結果が現れるのかどうかを確認することにした。

今回は、OPIcを利用した結果と今後の活用について両氏に話を聞いた。

ホンモノのコミュニケーション力を評価する英語スピーキングテスト「OPIc」
コミュニケーション力の新基準 - 「OPIc」を実際に受験してみた
英語コミュニケーション力は国内のビジネスでも不可欠 - 日本オラクル

―グローバル展開のためには何が必要だと考えていますか

(松本氏)NECのグローバル成長戦略では、アジア、特に新興国への注力、現地主導型ビジネスの推進を掲げています。そのためには、単にプロダクトを納品しておしまいではなく、現地SI力を活用したソリューションを展開したいと考えています。その成功のためのキーとなるのは、やはり“人”です。

単なる製品販売であれば、海外のスタッフを活用する形でのビジネス展開も容易でしょうが、ソリューションビジネスではそうはいきません。一方で、海外の顧客と対等に交渉できるほどの英語コミュニケーション力を持ち、かつ営業力があるような“スーパーマン”はなかなかいないものです。

それでは、そうしたスタッフを外部から取り入れればよいのでしょうか。その場合、私たちが長年培ってきたノウハウを継承することが困難になります。とすれば、内部のスタッフに教育を施し、グローバル展開のための人材として育てるべきだというのが、私たちの考え方です。その一つが、英語コミュニケーション力の強化であり、いちばん最初の段階としてなくてはならないものです。

―インドの研修はどのようなものですか

(伊藤氏)インドのソフトウェア開発会社で、プロジェクトマネジメントの国際標準知識体系である「PMBOK」に準拠した研修を行いました。当社のSEと現地スタッフで複数の混成チームを作り、模擬プロジェクトを遂行してもらいます。

1日の流れとしては、午前中に英語の授業を行ったあと、午後にチーム分けをしてプロジェクトを進めます。毎日宿題が出て、次の日には成果を発表してもらいます。もちろん、すべての研修内容は英語で行います。英語でコミュニケーションをはからなければ、模擬プロジェクト、つまり研修自体が進みません。

私たちの部門ではインド研修を開始してまだ日が浅いこともあり、今回はプロジェクトマネジメント経験があるSEを選抜して研修を行いました。参加メンバーは海外事業に対する意欲が高かったため、英語の得手不得手に関わらず、積極的に研修に参加していました。

とはいえ、最初のうちは自ら手を挙げて発言する人は少なかったように思います。模擬プロジェクトを通じて、異なるバックグラウンドを持つメンバー同士が、お互いの価値観や考え方をぶつけ合う中で、一人ひとりが徐々に自信を深め、英語コミュニケーション力の飛躍的な向上に繋げられたことは、今回の研修の大きな成果であったと感じています。

―OPIcの結果と今後の可能性について

(伊藤氏)今回の研修では、参加メンバーの選抜にあたって、TOEICテストの結果も加味しましたが、実際の英語コミュニケーション力とは必ずしも比例しないようでした。得点の高いメンバーでも英語を話すことが苦手だったり、さほど高得点ではなくてもコミュニケーション力は高いメンバーもいたりとまちまちでした。

研修を受けたメンバーには、帰国してからOPIcを受験してもらいました。結果を受けて驚いたのは、とても正確に英語コミュニケーション力を判定していたことです。OPIcはほかの英語テストと異なり、ほとんど対策ができません。そのため、受験者の本当の実力を測ることができるツールだとわかり、松本と2人で「これならば活用できる」と確信しました。

今では、研修の前に受験してもらい、選抜の指標として使えばよかったと思っているほどです。今後はそうした活用方法も検討したいですね。

(松本氏)海外のグローバル企業の中には、人事採用基準をOPIcに切り替えたところもあると聞いています。しかし、ビジネスには英語の読み書きも重要ですから、私たちは現在活用しているTOEICとOPIcを組み合わせて、人材の把握や最適化を図り、教育に役立てていきたいと考えています。

実際には、次の3つのケースでOPIcの活用が期待できるでしょう。

1つは、前述したグローバル企業のように、人事採用の基準として用いることです。もう1つは、既にグローバル事業を推進している要員に対する英語コミュニケーション力の評価指標とすることです。3つ目は、社内に眠っている優秀な人材を見つけ出すためのツールとして用いることです。

当社の社内には、海外事業に参加したいという社員が大勢いますが、自身をアピールする手段がTOEICの点数しかありませんでした。しかし私が最も重要だと思うのは、本人のやる気です。OPIcは、事前対策で点数がよくなるというようなテスト形式ではありませんから、個人で地道に勉強に取り組む努力が必要で、それが是が非でも海外事業に参加したいというやる気の結果として、具体的にOPIcのレベル評価に表れると思うのです。

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