企業情報システムにおける「データベース」の重要性については、今や改めて言及するまでもないだろう。企業システムには、業務を進めていくための基幹系システム、競争力を高めるための分析やレポートを行うための情報系システムなど、さまざまなものが存在するが、データベースはそれらの基盤として利用されている。
アシスト、データ基盤ソフトウェア事業部技術2部の課長の中村真之氏 |
システム基盤としてのデータベース環境を構築するにあたっては、多くの要件を考慮することが求められる。アプリケーションが正しくデータの格納、検索、更新を行えることは当然のこと。高い信頼性、強固なセキュリティ、将来的な拡張性なども、システムを日々運用していく上で重要な要素だ。
さらに近年では、システムのリアルタイム性を高めるための高速な処理とレスポンス、不慮の事故が発生した場合のディザスタリカバリといった要件を、適正なコストで実現することも求められつつある。
これらの要求を満たしつつ、安心して運用できる品質の高いデータベース基盤を構築するには、高度なノウハウが欠かせない。その部分を支える各種サービスを提供しているのがまもなく創業40年を迎えるアシストだ。アシストでは、「DODAI」と呼ばれるソリューションで、ユーザー企業が用途に合った、高品質なデータベース基盤を構築、運用するためのサポートを行っている。
DODAIは、Oracle Database関連のシステム構築に関して多くの実績を持つ同社が、これまでに培ってきたインテグレーションのノウハウを標準化し、必要なハードウェア、ミドルウェア、構築サービス、サポートをワンストップで提供するもの。ハードウェア、ミドルウェアに関しては、事前検証済みのスタックを用途に合わせて組み合わせることで、導入期間やコストの大幅な削減を可能としている。
また、高可用性が必要な基幹システム向け、大規模データを迅速に扱う必要があるデータウェアハウス(DWH)向け、金融や証券向けのシステムで求められる高いセキュリティ、災害対策といった、さまざまなニーズに最適化されたソリューションパッケージを用意し、短納期での対応も可能としている。
「高速I/Oモデル」による性能問題への新たなアプローチ
アシストでは、このDODAIの新たなスタックとして「高速I/Oモデル」を提供すると発表した。このモデルは、DODAIで提供するデータベース基盤のハードウェアとして、ストレージにPCI接続のSSD(半導体ドライブ)を搭載したIBM製サーバを採用するもの。I/O性能の向上を図り、データベースシステムにおけるパフォーマンスのさらなる向上を実現する。
データベースシステムにおいて、ストレージとのデータ入出力が発生することによるパフォーマンスの劣化は、ある意味で宿命的な弱点だ。もちろんこれまでも、この問題を解消するために、ソフトウェアとハードウェアの両面でさまざまなアプローチがとられ、一定の成果を上げてきた。例えば、ソフトウェア面ではデータベース自体のチューニングやディスク管理の最適化といったものがそれにあたる。ハードウェア面では、高速なストレージ装置を高速なデータ転送が可能なインターフェースで接続するといった方法がある。
アシスト、データ基盤ソフトウェア事業部技術2部の課長の中村真之氏は「データベースシステムでのI/Oの発生によるパフォーマンスの劣化は避けられない弱点。独自に検証した結果では、たった1%のキャッシュミスでも、トランザクション性能は約半分に落ち込んでしまうことがわかっている。理想を言えば、すべてのデータをメモリ(DRAM)上にキャッシュしたいところだが、そもそもDRAMは揮発性のデバイスであり、高速に読み書きができるものは、まだまだ容量単価が高くなってしまう」と話す。
これまでもDODAIでは、比較的安価なストレージを並列配置することによるI/Oの高速化や、ストレージキャッシュの活用、SSDドライブを用いた二次データベースキャッシュの利用といった仕組みにより、データベースの性能向上に取り組んできた。中村氏は「これまでは、HDDの単位時間あたりのI/Oを増やしつつ、同時に、いかにHDDへのI/O頻度を減らすかという考えで高速化に取り組んできた。今回提供する高速I/Oモデルは、これらに加えて、PCI接続のSSDという、より高速なI/Oデバイスを活用することでパフォーマンスの向上を実現するものだ」とする。
現在ではデータベースシステムのストレージとしてSSDを活用することも多くなっているが、従来型のSCSIやSAS接続によるSSDと比較して、PCI接続型は、よりCPUに近い場所に位置することで高いスループットと低いレイテンシ(遅延)を実現できる点が特長となる。具体的なハードウェアとしてはIBMが提供するPCI Expressスロット用の「High IOPS PCIe Adapter」を利用する。
中村氏は「HDDと比較して、駆動部品がなくシンプルなSSDは故障率が低くなる。また、耐久性についても、メーカー発表では1TBバイトのデータを毎日書き込んだとして、20 年以上は問題がないとされている。さらに、Oracle ASM(Automatic Storage Manage)を併用してミラーリングを行うことで可用性を高めることができ、SSDを複数枚利用することによるI/O性能の向上も期待できる」と話す。
検証で明らかになったPCI接続SSDの実力
アシストでは、この「高速I/Oモデル」で採用するPCI接続型SSDが、一般的なユースケースでどのようにパフォーマンス向上に寄与するかについて、いくつかの検証を行った。
OLTPやコールセンターでの処理を模したトランザクションを発生させる負荷シミュレーションにおいて、従来の一般的なHDD環境ではデータベースキャッシュのヒット率が95%に低下した段階でスループットが大幅に低下(5%以下にまで低下)してしまったのに対し、PCI型SSD環境ではキャッシュヒット率が85%程度まで下がっても、性能の低下は約40%にとどまったとする。また、CPUの使用率(I/O待ち)についても、キャッシュヒット率95%の段階でHDD環境がほぼ100%占有されたのに対し、PCI接続SSD環境では20%程度の占有率にとどまったという。
さらに、両者の差は応答性能の面で顕著に表れた。HDD環境ではキャッシュのヒット率低下開始ととともにHDD応答時間が大幅に低下するのに対し、PCI接続SSD環境では、ほぼ変わらず短時間(1秒以下)での応答が可能だったとする。
「この検証結果から、PCI接続SSDによって、I/O性能の劇的な向上、そして応答性能劣化の極小化が可能になると言うことができる。ただし、I/O性能が向上することで、システムのボトルネックが、CPUなど他の要素に移る可能性もあるため、全体のバランスをよく考えたシステム構築が必要になる」(中村氏)
同社では、PCI接続SSDの同時利用数を増加させることによるスケーラビリティについても検証。SSDを1基だけ利用した場合と比べ、2基の同時利用では1秒で処理できるトランザクション数が約40%増、さらに3基を利用した場合には75%増になるとの結果を得たという。平均応答時間も、1基の時を100%とした場合、2基では55%、3基では45%と短縮されている。I/Oボトルネックが大幅に解消されることで、キャッシュヒット率が低下した場合でもCPUなどの強化によるさらなるスケールアップが期待できるという。
アシストでは、この高速I/Oモデルの適用シーンについて、不特定多数の人が不特定多数のアイテムを検索するインターネット系のショッピングサイトや、大規模な分析系システム、M2M(機器間通信)を利用したシステムなどを挙げる。同社データ基盤ソフトウェア事業部技術2部部長の岸和田隆氏は、「特にレスポンスタイムの劣化やレイテンシの極小化が求められるシステムにおいて、有効な解となるはず。また、1基のサーバで格段に多くの処理が行えるので、性能を分散させているサーバの集約も行える」と話す。
あくまでも参考だが、この高速I/Oモデルをスタックとして用いたシステムの場合、Oracle Data Guardによる二重構成で、従来のハイエンドストレージを用いた構成の約半分以下の価格が実現できるという。中村氏は「それでいて、処理能力は20倍程度が見込める。さらに、構成はサーバのみとなるため、サーバ保守に加えて高額なストレージ保守が必要となるシステムに比べてランニングコストも大幅に下げられる」と話す。
アシストでは、今後も独自に検証を続け、高速I/OモデルにおけるData Guard構成での効果や、近年ニーズが高まっているDWH系の処理における効果などを測定。結果を公表していく予定だ。特に同社では、Oracle Databaseで実績のあるBI系ソリューションにおけるビルディングブロックとして、この高速I/Oモデルを活用することを積極的に検討していくという。
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