ユーザー自身が用途に合わせて表示をカスタマイズ可能に
クラウドサービス「Zoho CRM」の進化が続いている。2011年末にインタフェースを大幅に刷新したが、その後さまざまな機能強化が行われているので、今回は「Zoho CRM」の変化についてまとめてみよう。
インタフェース変更に続いて、画面において使い勝手が大きく改善された。ユーザー自身で表示をカスタマイズするための機能が追加されたのだ。基本的には、ユーザーにとって不要な機能を非表示にしたり、必要な機能を見やすくしたりするための機能となっている。
カスタマイズしないで使っている場合、「Zoho CRM」の連絡先で1つの顧客を選択すると、上部にデータの概要、下部に詳細情報が表示されている。これは概要を一目で把握したいユーザーには便利だが、詳細情報を見なければならないユーザーにとってはスクロールの手間がかかる構造だ。そうしたユーザーに向けて、概要をまるごと非表示にできるようになった。また、概要内のデータ並び順をカスタマイズすることもできるから、自分にとって必要なものを見やすいように並べるとよいだろう。
同様に、画面右側に表示される「メール送信」や「新しいタスクの追加」などが簡単に行えるクイックアクション欄も非表示にできる。さらに、これまでは横幅固定のデザインだったのに対して、画面サイズに合わせて横幅も変化する作りになったおかげで、「ワイドスクリーン+フルスクリーン表示+クイックアクション欄非表示」と組み合わせると、画面がかなり広くなり作業がラクになる。
逆に、固定表示が可能になったのが「Recent Items」だ。これまではメニューバーへのドロップダウンで表示されていたが、画面内に表示して固定できるようになった。しかも、固定も解除もワンクリックで行える。
さらに配色のカスタマイズにも対応。新インタフェースでは全体的に淡く地味な色が採用されているが、カスタマイズ機能によって色を変更したり、ロゴを変えたりできる。自社のロゴやコーポレートカラーを使うことで、より愛着のある画面になるはずだ。
情報が一覧化できる「パルス」にも新機能
新機能として追加され、便利さが人気の「パルス」も強化されている。まず、「パルス」機能がどんなものだったのかをおさらいすると、取引先や商談を「フォロー」して動向を確認するためのものだ。「Zoho CRM」を使っている他のメンバーが新たな取引先を追加したり、商談が進んでステータスが変化したりすると、その更新情報が配信される。
詳細は取引先情報や商談情報を表示しなければわからないが、どこの情報が変化したのかは素早く確認できるから、自分に関係のある情報変化を着実かつ迅速に確認できるのがポイントだ。いわば、SNSと似たような使い勝手と言え、Twitterでフォローした相手の動向がわかるように、フォローした取引先が今どうなっているのかが、「パルス」という名の自分のタイムラインに表示される。
どの情報が動いたのかということだけならば、「Recent Items」で最近変化があったデータをたどることはできるし、クリックして詳細情報画面を開けば詳細も見られる。しかし、具体的にどこが変わったのかはわかりづらい。
また、「パルス」には基準を定めて自動フォローする機能があるのもよい。これは特に管理職とって必要な機能だろう。「一定金額以上の案件なら自動的にフォローして動向を注視する」「途中で案件の金額が閾値以下になったらフォローを解除して部下に任せる」といった使い方ができる。業務全体で起こっていることをザッと確認したい時に便利な機能というわけだ。
この「パルス」にはどんな機能が追加されたのかというと、以前は表示されなかったデータの削除や削除したデータの復元といった変化も一覧で確認できるようになった。「情報は追加されたり、変更されたりするもの」という考え方から脱却し、削除や復元にも察知できるようになったのだ。
また、連絡先や商談の詳細情報も見やすくなった。「パルス」から直接相手先のメールアドレスや電話番号を確認できるようになったのだ。現在、アプローチしている顧客に連絡を取りたい場合は「パルス」を見れば済んでしまう。情報の中にはフォロー数も含まれている。フォロー数が多いということは社内で重視されているな、という具合に連絡先以外の要素も読み取ることができるようになった。
ユーザーの要望を漏らさず機能に盛り込むZoho
このほか、レポート機能やワークフローの機能も強化されている。そうした機能の多くは、ユーザーからのフィードバックを受けて追加されたものだ。機能強化に加えて、活用方法の紹介など、ブログを用いた情報発信も盛んに行われている。
例えば、ブログでは、「Zoho CRM」のインタフェースが刷新された時に追加された、他のユーザーの予定も含めて空き日程を確認する方法、メールオプションを利用してGoogle Apps連携だけでなくGmailやYahoo!メールといった外部メールサービスと「Zoho CRM」を連携させる方法なども公開されている。
また、1月にデータセンターの停電によりアクセス障害が発生したのだが、その際には原因究明と今後の対策について詳細な発表が迅速に行われた。深夜の障害であり、データの損失もなかったのだが、Zohoがアクセス障害を大きな問題ととらえていることがわかる。これを受けて開始されたのが、「Zoho CRM」のデータを第2データセンターで閲覧可能にするサービスだ。
第2データセンターはあくまでもバックアップ用であるため、フルサービスを提供するだけのパワーはない。ただし、CRMの場合、早く書き込めるよりも入力情報が見られないほうが大きな問題だろう。そう考えると、閲覧だけは障害時で可能であるのは心強い。トラブル対応のために急遽設けられたサービスだけに、かゆいところに手が届くというわけにはいかないが、「Zoho CRM」ユーザーならば、第2データセンター閲覧用のURLはぜひブックマークしておきたい。
こうしたさまざまな対応から見えてくるのは、Zohoとユーザーの距離の近さだ。Zoho側が自社サービスに対し、「より使いやすくしたい」「上手に使いこなしてほしい」と強く考えているのも見えてくる。「もっとこうだったら使いやすいのに」という小さな希望を伝えてみるのもよさそうだ。