前回は、Pythonをインストールする方法を紹介した。今回は、Pythonでプログラムを作るのに便利な、Jupyterノートブックを紹介する。Jupyterを使えば、試行錯誤しながらプログラムを作ることができるので、データ解析や機械学習などの用途でPythonを使うのに便利だ。
Jupyterノートブックとは?
前回、Pythonをインストールした時に、対話型実行環境を使って、簡単な計算をする方法を紹介した。対話側実行環境は、プログラムを書いて、すぐに実行できるので、これから、Pythonに慣れていこうという人には便利だと感じるものだったと思う。
今回紹介する、Jupyterノートブックは、この対話型実行環境を、より便利に拡張したものということができるかもしれない。Pythonの初心者にもオススメなのだが、データ解析や機械学習など、試行錯誤しながら、データを扱う場合にも、大いに役立つものだ。
Jupyterをインストールしてみよう
では、さっそくJupyterをインストールしてみよう。Windowsであれば、スタートメニューから「Anaconda3 > Anaconda Prompt」を実行してみよう。macOSであれば、Spotlightから「ターミナル」と打ち込んでターミナルを起動しよう。
そして、Jupyterノートブックをインストールするために、以下のコマンドを入力して[Enter]キーを押してみよう。すると、Jupyterノートブックがインストールされる。
# Windowsの場合
pip install jupyter
# macOSの場合
conda install jupyter
インストールが終わったら、以下のコマンドを入力してみよう。
jupyter notebook
簡単に言うと、Jupyterノートブックは、WebブラウザからPythonのプログラムを実行することのできるツールだ。上記のコマンドを実行すると、自動的にWebブラウザが立ち上がり、ブラウザ上に以下のような画面が出る。そこで、画面右上にある[New]のボタンから[Python3]を選んでクリックしよう。
すると、新規ノートブックが作成できるので、In [ ]というところに、Pythonのプログラムを記述していく。ここでは、一番簡単な例として「print("Hello, World")」と入力してみよう。
そして、画面上部にある(三角形のアイコンのある)実行ボタンか、Cellメニューから「Cell > Run Cells」をクリックすると、Pythonのプログラムを実行することができる。
Jupyterノートブックを使うメリット
このJupyterノートブックの良いところは、このように、プログラムを書いて実行ボタンを押して、手軽に、プログラムの結果を確認できることだ。
プログラムの開発と言うと、エディタにプログラムを書いて、実行して、結果を確認して、またエディタに戻ってプログラムを書いて、実行して・・・の連続になるが、Jupyterノートブックを使えば、それらを、全てブラウザ上で行うことができる。
ノートブックは複数のセルから成り立っている
Jupyterノートブックでは、一つのノートブックが一つのファイルだ。そして、ノートブックは、複数のセル(Cells)で成り立っている。「In [ (数字) ]」のように出ている部分がセルだ。このセルは、メニューの[Insert]から、次々と追加することができる。つまり、一つのファイルの中に、複数のプログラムを配置することができる。
そして、各セルには、Pythonのプログラムだけでなく、メモを書いておくことができる。この時、メモは、ただのテキストではなく、Markdown形式で記述することができる。Markdown形式では、見出しやリスト、画像などを表示することができる。そのため、プログラムに加えて、プログラムの解説や考察をノートブックに残しておくことができる。
ちなみに、セルをMarkdownのメモに変更するには、画面上部のメニューから[Cell > Cell Type > Markdown]をクリックすれば良い。
グラフや値を直接確認できる
また、冒頭で紹介したように、グラフを描画するプログラムでは、プログラムの描画結果がプログラムの直後に表示される。そして、基本的に、直前のプログラムの実行結果を、次のプログラムでも使うことができる。そのため、プログラムで使った変数の値を出力することもできる。
ところで、グラフを描画するには、描画用のライブラリのインストールが必要となる。コンソール画面(または、ターミナル)で以下のコマンドを実行して、以下のライブラリをインストールしておこう。
conda install numpy
conda install pandas
conda install matplotlib
インストールしたらJupyter上で、以下のようにPythonのプログラムを記述しよう。以下は、Numpyという行列計算ライブラリを利用して、三角関数を計算し、それをMatplotlibというグラフライブラリで描画するプログラムだ。
# 必要なライブラリの利用を宣言
%matplotlib inline
import matplotlib.pyplot as plt
import numpy as np
# グラフを描画
x = np.arange(0, 20, 0.1)
y = np.cos(x)
plt.plot(x,y)
plt.show()
まとめ
以上、今回は、Jupyterノートブックを使って、Pythonのプログラムを実行する方法を紹介した。Jupyterを使えば、試行錯誤をしながら、気軽にPythonのプログラムを実行することができる。Jupyterは視覚的にも面白いので、一度使ってみると、手放せないツールになるかもしれない。
また、Jupyterは、Webブラウザを使うが、インターネット越しにプログラムやデータをやり取りするわけではない。コマンドラインでツールをインストールして使うことからも分かるように、基本的に、自分のPC上で実行される。そのため、ネットにつながっていなくても動かすことができる。また、門外不出の大切なデータを解析したい場合も、インターネット上にデータを送信する必要がないという点も安心だ。
自由型プログラマー。くじらはんどにて、プログラミングの楽しさを伝える活動をしている。代表作に、日本語プログラミング言語「なでしこ」 、テキスト音楽「サクラ」など。2001年オンラインソフト大賞入賞、2004年度未踏ユース スーパークリエータ認定、2010年 OSS貢献者章受賞。技術書も多く執筆している。