ゼロドリフト高精度オペアンプは、差動電圧が低いために高い出力精度が必要なアプリケーション向けに特化して設計されたオペアンプです。入力オフセット電圧が低いだけでなく、CMRR、PSRR、開ループゲインが高く、温度と時間に対するドリフトが低くなっています(表1参照)。これらの特徴から、ゼロドリフト高精度オペアンプは、ローサイド電流検出やセンサインタフェースなど、差動信号が低い場合のアプリケーション向けに最適です。
ゼロドリフトオペアンプのメーカーは、自社製デバイスにはエイリアシングの影響がないと主張することがありますが、実際には、これらのデバイスはサンプリングを利用して入力オフセット電圧を最小限に抑えているため、むしろエイリアシングに対して脆弱な場合があります。そのため、設計者はオペアンプ回路のエイリアシングをテストする必要があります。
エイリアシングの検出にスペクトラムアナライザやネットワークアナライザを使用する従来の方法は、適切でないことがわかっているので、入力を周波数範囲にわたってスイープし、オペアンプの出力をオシロスコープで観察する測定法を使用することをお勧めします。本稿では、このテスト方法を複数の異なるオペアンプに適用し、ゼロドリフトオペアンプの実現方法の違いによって生じるエイリアシングの違いを観察します。テストしたデバイスには、オン・セミコンダクターと他社のオートゼロ方式、チョッパ安定化方式のオペアンプが含まれています。
入力オフセット電圧がオペアンプに与える影響
まず、入力オフセット電圧がオペアンプの性能に与える影響と、ゼロドリフト、チョッパ安定化オペアンプが汎用オペアンプと性能面でどのように異なるかについて説明します。次に、チョッパ安定化オペアンプの動作と、入力信号がオペアンプのオフセット補正の周波数に近づくかそれを超えたときに、これらのアンプで行われるサンプリングが、どのようにエイリアシングを引き起こすのかについて説明します。チョッパ安定化アーキテクチャはゼロドリフトオペアンプを実現する唯一の方法ではないため、チョッパ安定化アーキテクチャをオートゼロと呼ばれる別のゼロドリフトアーキテクチャと比較します。
さらに、さまざまなオペアンプに対するエイリアシングの測定結果を示した後、ナイキストのサンプリング定理によりエイリアシングの無い動作を実現するための許容入力周波数範囲をどう決めるかについて説明し、ついでエイリアシングを防止するための単純なローパスフィルタの適用方法について説明したいと思います。その後、オペアンプの入力オフセット電圧と、過渡応答、起動時間、レールツーレール動作、低周波ノイズ、およびゼロドリフトオペアンプの入力電流など、他のパラメータとの関係について説明し、最後に、SPICEモデルでは、エイリアシングなどのゼロドリフトの影響を説明できないことについて解説します。
(次回は9月20日に掲載します)
著者プロフィール
Farhana SarderON Semiconductor
アプリケーションエンジニア
アナログ回路設計のバックグランドを有し、高精度オペアンプ、電流検出アンプ、コンパレータなどのアンプ製品を専門としています。
電気工学修士号を取得。