本連載も今週で最終回。そこで、今回は「Wordが思い通りにならない理由」とその対処法について総論的に考察していこう。

Wordが思い通りにならない理由

この連載では「Wordを使う上で覚えておくと役に立つだろう」と思われる内容を紹介してきたつもりだ。これらの機能や仕組みを理解することで、少しでもWordを快適に使えるようになっていただければ幸いである。しかし、『それでもWordはやっぱり…』という方もいるだろう。そこで今回は、なぜ「Wordは思い通りにならない」と言われるのか、その理由について考えてみよう。

Wordが思い通りにならない理由は、大きく分けて以下の3つに分類できると考えられる。

(1)文書作成の基本的な知識が不足している
(2)Wordが予想外の挙動を示す
(3)Wordの特長を生かして効率よく文書を作成する方法を知らない

(1)は、インデントやタブ、段落罫線、ヘッダーとフッター、ページ設定など、文書の作成に必要となる操作や機能を十分に理解できていないことが原因だ。中には、「文字の書式」と「段落の書式」の違いすらよく理解しないまま文書を作成している方もいる。つまり、自分の知識不足が原因でスマートに文書を作成できず、その結果「思い通りにならない…」と考えてしまう訳である。

フォントや文字サイズ、文字色などを指定する方法は簡単に習得できるが、そもそも、これだけの知識で「思い通りの文書を作成できる」と考えること自体に無理がある。思い通りのレイアウトに仕上げるには、もう少し知識を蓄える必要があるだろう。これはWordに限った話ではなく、他の文書作成ソフトにも共通する問題である。よって、これらの基本的な知識が不足している方は、どんなソフトを使っても「思い通りにならない…」という結果になると予想される。

(2)は、Wordならではの考え方を理解できていないことが原因だ。確かに、WordにはWord独自の世界観がある。「1字」や「1行」の概念、画像の配置方法、行間の考え方などは、それなりにWordを研究しないと理解しにくい部分もあるだろう。

また、Wordの自動処理が原因で「どうして?」と悩んでしまうケースも多いようだ。たとえば、段落の先頭に「-」(マイナス)の文字を3つ以上続けて入力したあと「Enter」キーを押すと、勝手に「-」の文字が消去され、その代わりに段落罫線が描画される。

この状態で「Enter」キーを押すと

段落罫線に自動変換される

この場合、「Ctrl」+「Z」キーを押しても元の状態には戻らない。この例のほかにも、Wordが自動的に行う処理はたくさんある。たとえば…、

・段落の先頭に全角スペースを挿入すると…、
  → 全角スペースが削除され、勝手に「字下げ」の書式が指定される

・「拝啓」と入力して改行すると…、
  → 自動的に「敬具」の文字が右揃えで表示される

・段落の先頭にアルファベットの小文字を入力すると…、
  → 最初の文字が勝手に大文字に置き換わる

・「2nd」と入力すると…、
  → 「nd」の文字が勝手に上付き文字に変換される

・「http://」で始まる文字を入力すると…、
  → 自動的にリンクの書式が指定される

これらの処理はユーザーの利便性を考えてWordが自動的に行ってくれるものである。しかし、必ずしも良い方向に機能するとは限らない。むしろ、勝手に書式を変更されることに抵抗を感じる方もいるであろう。

このような場合はオートコレクトの設定を変更し、自動処理を無効にしてしまえばよい。まずは「ファイル」タブから「オプション」を選択する。続いて「文章校正」を選択して「オートコレクトのオプション」ボタンをクリックする。すると、オートコレクトの設定を変更できるようになる。Wordの自動処理に納得がいかない場合は、ここで不要な機能のチェックを外してしまえばよい。これで、その自動処理を無効化することができる。

オートコレクトの設定画面の呼び出し

オートコレクトの設定画面(オートコレクト)

オートコレクトの設定画面(入力オートフォーマット)

オートコレクトの設定画面(オートフォーマット)

このようにWordを自分仕様にカスタマイズすることも、Wordを快適にするための重要なポイントとなるだろう。

(3)は、Wordの便利な機能を十分に使いこなせていないことが原因。つまり、必要以上に手間をかけて文書を作成しており、それが原因で『Wordは使いづらい…』と感じている訳だ。この場合は、まずスタイルの活用方法を覚えることが大切。スタイルを上手に使いこなせるようになれば、作業効率を大幅に改善できると思われる。また、アウトラインレベルを適切に指定すれば、ナビゲーションウィンドウなどの機能を効果的に活用できるようになる。

こういった問題点やスキル不足を少しずつ解消していけば、次第に「Wordの便利さ」を実感できるようになると思われる。同時に「Wordは思い通りにならない…」という認識が、自分の思い過ごしであることに気付くケースもあるだろう。確かに、Wordは使いづらい部分もある。しかし、それを差し引いてもWordが便利なソフトであることに変わりはない。このように考えられるようになれば、Wordに対するイライラも自然と解消されていくだろう。

なぜWordを思い通りにしたいのか?

最後に、「なぜWordを思い通りにしたいのか?」について考えてみよう。本連載を読んでくれている方は、文書を作成することが本来の仕事ではなく、仕事をするために文書を作成しなければならい、という方が大半であると思われる。にもかかわらず、Wordに多くの時間を費やすことに嫌気を感じているのであろう。

となれば、Wordに費やす時間を少なくすればよいことになる。この解決法は2つしかない。その1つは「より深くWordについて勉強すること」。Wordの勉強に時間をかける余裕はないかもしれないが、かといって延々と不満を言い続けても何の解決にもならない。多少の時間を要しても、自分が必要とする機能の仕組みをよく理解する。そうすれば以降の文書作成がスムーズになり、効率よく仕事を進められるはずだ。

もう1つの解決法は「細かいことを気にしないこと」。本連載の第7回目で、「…」の文字を使って品名と金額をつなげているメニューを見かけることがある、という話をしたと思う。このようなメニューを見たとき、『タブとリーダーを使えばもっとスマートに作成できるのに』と思う反面、少し微笑ましく感じる場合もある。パソコンに不慣れな店主が苦労しながら作ったメニューと察すれば、多少文字が揃っていなくても何ら不満を感じないはず。料理の名前と金額がわかれば十分なのである。

ところが、いざ自分が文書を作成する立場になると、些細なことが気になって一向に作業が進まない方もいる。先の例からもわかるように、文書を見る(読む)立場からすると、「文字が揃っているか?」「キレイにレイアウトされているか?」なんて二の次で、それよりも文書の内容の方が肝心なのである。要するに、あまり細かいことに気を使っても意味がないのだ。『上手に仕上げたい』という思いは、デザイナーでもない限り単なる自己満足でしかない場合が多い。この自己満足を満たしたいのであれば、やはりWordを熱心に勉強するしかないだろう。そうでないのなら、多少のことは割り切って考えた方がよいだろう。自分が必要とする最低限の機能だけを押さえておけば十分だ。

Wordには非常に数多くの機能が装備されている。しかし、これらのすべてをマスターする必要性は全くない。最終的に、相手に内容が伝われば十分なのである。このように考えれば、Wordに対する接し方もだいぶ楽になるのではないだろうか? とことん突き詰めるのか、適当なところで妥協して本来の仕事に尽力するのか、その選択は各自の自由である。Wordが思い通りにならないことに共感してくれる仲間も多いかもしれないが、不平を言い続けても何も始まらない。ここらで、Wordとの付き合い方を考えていく必要もあるだろう。